音楽放談 pt.2

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無感情を取り繕う ―Bee Hive

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エモーショナルな音楽をさしてエモという。

今で言うエモだと、いわゆゆボーイバンドばかりで私には興味のない連中ばかりだ。

もっと、当初のエモという言葉がさしていた音楽はすごく良いんだけど。

CursiveとかModest Mouseとかね。

でも、音楽というのは何かしらの感情が含まれている場合が多く、そういう意味ではほとんどの音楽がエモでもある、といえなくはない。

Aphextwinのような音楽にはさすがに感情というものを感じる事は、少なくとも私には難しいけど、少なくとも世間である程度話題にのぼるようなものはやっぱり何かしらの感情がその音の中にあるように思う。

人の心を動かすのは人の心、なんてしばしばいう訳であるが、要するにそういう事なんだろう。

みんな共感を求めているのさ。

冷たいな、と感じる音楽というのはそういうもんが感じられないんだと思う。


人間というのは感情的なもの、それもその時々の自分の感情に近いものほど感動しやすい訳であるが、逆にあまりフィットしないものについては、その感情が却って邪魔になるときもある。

あんまり落ち込んでいるときにアホな歌は聴きたくないし、せっかく楽しい気分の時には暗い音楽は好んで聴かないであろう。

感情的であればあるほど、深く響きやすい反面うざったくもあるものよ。

そういう意味で、無感情な音楽って言うのは時と場合を選ばない。

いつ聴いてもしっくりくる不思議さがある。

聴いていると音楽そのものに自分が寄り添うような感覚になる事もあるしね。

面白いものだよ。


そんな無感情な音楽、という訳ではないが、そういう感情はひとまず脇において、純粋に音楽を奏でている、という類いの音楽は聴いていて心地よい。

我が愛するBroken Social Sceneは、そういう音楽をやっていると思う。

彼らの楽曲は、なぜかいつ聴いてもすばらしく響く。

沈んでいても、楽しくても、寂しくても、朝でも昼でも夜でも、いつ聴いても自分に寄り添ってくれるような手触りの音楽である。

スピンアウト含めてすべてそうである。

本当にすばらしいよ。


で、この間、といってもだいぶ前の間なんだけど、2ndのアウトテイク的なアルバム「Bee Hives」をかった。

アウトテイクって、デモばっかとかであんまり期待してないんだけど、これは最高によかった。

アウトテイクという扱いではもったいない。

これ1枚でも十分アルバムとしての役割を全うできるよ。

音楽的には「Feel Good Lost」と「You Forgot it in People」のちょうど中間的な感じで、アンビエント風もあればよりロックなモノもある。

いわゆるシングル向きな曲はないが、だからといって作品としての完成度が低い訳ではないし、単に聴いた瞬間ブワッとならないだけである。

それは静かに、じわじわとしみ込んで、感覚を溶かしていくような心地よさがある。

ここには何か人に訴えかけるような特別な感情がある訳ではないし、強烈な主張がある訳でもない。

ただ綺麗な音が流れているだけである。

最近こういう音楽って本当に好きなの。


1曲目はノイズのような音の渦なんだけど、2曲目の"Market Fresh"からして、既にため息の出るような安らぎ。

Kevinのヴォーカルもすごくいい。

わりとインストの占める割合が大きいんだけど、曲間の切れ目は特に意識されず、いわゆるエレクトロニカ的な手触りもあり、それがすごく効果的である。

従って曲どうこうというよりは、やはり一つの連なりとして良い作品である。

ただ、注目はオリジナルアルバム収録の2曲の別ヴァージョンである。

いわゆるリミックスとかとは違い、単純にアレンジの違うヴァージョンである。


まず"Time = Cause"は、原曲も一番好きな曲で、ロック的で叙情的で刹那的ですごく良い曲なんだけど、その雰囲気は皆無で、普通に聴いていたらそれと気づかないほどである。

もっと静かで、1st的な手触りの強い仕上がりになっている。

アンビエント的な感じなので、強く心揺り動かされるというよりは、むしろ静かに身を委ねるような感じかな。

もう1曲は、ヴォーカルとアレンジの違う"Lover's Spit"である。

こちらはアルバム収録番と演奏面での違いはそれほどないが、ヴォーカルをFeistが取っている。

これがまたいいんだ。

Kevinの、ともすれば子供のような無邪気さのある高い声も曲の雰囲気とすごく合っているんだけど、Feistの声だと、Kevinよりも低いくらいなんだけど、すごく深みのある曲になっていて、ちょっとアダルトな感じでセクシーである。

でも、ぜんぜん嫌らしさとかではないよ。

これだけでも聴いてほしいくらいである。


彼らの曲は、しばしば大人っぽい印象がある。

以前にも書いているけど、一歩引いたところから自分を見るようなかんじ、というかな。

別に冷めているということではないし、むしろ情熱的である。

でも、ただがむしゃらなだけではないあたりが、彼らの音楽にはあるのである。

先に感情がないような書き方をしているけど、大人の皆さんならわかるフィーリングだと思う。

表に出さないからと言って感情がない訳ではないし、むしろ下手すれば昔以上に自分の感情が強く認識される事さえあるほどである。

それだけ自分と向き合わなきゃいけないしね。

その辺の折り合いと自分の正直な気持ちの葛藤があって、その果てにやっぱり自分はこうしたい、みたいな静かに燃えるかんじ、ていうかな、彼らの音楽にはそういうものを感じる気がするのですね、私は。

ちょとしたニュアンスがすごく重要な、という事かもしれないけど。


ともかくも、それこそ中高生が夢中になる類いの音楽ではなかなかないだろうが、すごく深みもあって、実は感情的で、そういした精神が故にすごく煌めいて響く綺麗な音楽が出来上がっている。

感情による濁りのない音楽は、やっぱり心地よいね。

良いバンドですよ。