俺は絶対認めない!!などと一人意気んで見ても、知るかとばかりに世界は流れる。
アルバム派の自分としては、好きなアーティストが「アルバム止めました」宣言する度に悲しくなる。
誰も求めてないから、なんて、どうしてそんなひどい事を言うのであろうか。
ここにいるよ、何よりもアルバムを愛する一人の男が。
大体において、どうしてシングルしか聴かないライトなリスナーの言う事を真に受けて、本当に好きでいるリスナーの楽しみは無視してしまうのであろうか。
これもアーティストとしてのエゴ、というのなら、それには賛同できないな。
だって、当人はアルバムというフォーマットが好きなんでしょうが。
まして才能あるのに、それをあえて封じるだけの根拠は何だろうか。
そんな事を思う今日この頃。
さて、一般に収録時間が長いほど、聴いていてだれてしまうというのは人情というものであろう。
いかな好きといえども、一つ所にとどまり続ける事は存外難しい。
アルバムという尺で聴かせるのは、やはり難しいのは確かであろう。
実際問題そこまでの完成度を誇るアルバムというのは、ロック史長しといえどもそうザラにあるものではない。
それこそ収録時間が1時間以上ともなれば、結構しんどくもなる。
しかし、本当に良いアルバムって奴はそうでない。
本当に引きつけられるようにその世界の中に没入できるものである。
そんなアルバムの一つが、Smashing Pumpkinsの2枚組の大作「Mellon Collie and the Infinite Sadness 」である。
彼らの最高傑作としてしばしば挙げられるのは、これの一つ前の「Siamise Dream」である。
そういうファンの気持ちはよくわかる。
90年代的な空気感を一番まとっているし、ここの楽曲も非常にすばらしく、アルバムも50分くらいと適度にコンパクトで、金字塔と呼べる曲もある。
"Today"のイントロなどまさに黄金律である。
Dragon Ashがサンプリングした事で、聴いた事のある人は結構いるはずである。
更にすごい奴を作ってやる、と意気込んで作られた今作は、そうした空気とは別の次元でなっていると言える。
そういう意味で時代を通した普遍性を獲得したと思うし、一方で特にリアルタイムな世代に取ってはリアルではなかったのかもしれない。
とはいえ、その完成度は疑う余地あるまい。
2枚組、2時間くらいの収録時間、28曲という長尺ながら、いっさいだれる事もなく、前半と後半での流れや、静と動の入り乱れ方もすべてがすばらしすぎる。
見事であるのよ。
非常にドリーミーなポップで幕を開けるこのアルバムは、喜び、希望、怒り、悲しみ、安心、不安、焦燥、独占欲、刹那感、破壊衝動、他あらゆる感情が入り乱れる。
爆音ギターに轟音ドラムも冴え渡る演奏も、神経質で空気をつんざくようなビリーのヴォーカルも、最高にかっこいい。
最後の子守唄のような幕切れまで、完璧と思う。
収録曲ここに見ていっても、粒ぞろいですよ。
イハがヴォーカルを取っている曲もあって、そういしたバランスも絶妙に作用しているしね。
好きな曲と言えば、やはり代表曲は外せないよね。
"Jellybelly"、"zero"、"bullet with butterfly wings"、"galapogos"、"muzzle"、"thirty-three"、"in the arms of sleep"、"1979"、"x.y.u."、"we only come out at night"、"beautiful"、"by starlight"、etc。
特に好きな奴を列挙しただけでもこれだけあるのだから。
中でも"Thirty-Three"は本当に好きだね。
良い曲だよ。
基本的に彼らの楽曲は綺麗なものが多い。
メロディやアレンジや、世界観など。
そういうエッセンスも多分に味わえるアルバムである。
彼ら、というか、ビリーはしばしば怪物と呼ばれるし、昔はかなりの変人と思われていたらしい。
私はリアルタイムで知らないので、その理由がよくわからない。
少なくとも彼らの作品からはそういう変態性というか、頭のおかしい奴とは思えないんだけどね。
ただ、凄まじいまでの才能はあるのは間違いないと思うけど。
彼らは一昨年くらいに再結成を果たした。
といっても、オリジナルメンバーはビリーとドラムのジミーのみであるが。
ちょうどこのアルバムのあとくらいから、バンド内の問題がかなり顕在化したらしく、ツアー中メンバーの一人(演奏のサポートメンバー)が、ドラッグによる死んでしまうという事があった。
その事により、同じくドラッグをやっていたジミーがバンドから外される。
で、3人になって作成いたのが商業的に大コケした「Adore」である。
このアルバムがスマパン初体験だったんだけど、普通に良いアルバムだと思ったし、すごく綺麗な曲だな、と思って、今でも大好きである。
世界中から総スカンくった訳であるが、なぜか日本では非常に評価が高いアルバムである。
で、sの次のアルバムのときには既に解散が決まっていて、ジミーは復帰したが今度はベースのダーシーが脱退している(やっぱりドラッグ問題)。
そうして解散した後、ビリーは色々やってみる訳であるが、「やっぱり俺にはスマパンだな」と思ったらしく、再結成と相成った訳である。
再結成して明らかになったのは、ビリーのエゴと彼に取ってのスマパンの実態であろう。
かっこいいアルバムだったけど、やっぱりこの当時での彼らではないという事も再認識させられた作品であった。
この再結成アルバムに対するリアクションが、まああんまり良くなかったんだよね。
しょうがないとは思うけど。
そのためもあって、怒ったビリーは「もう昔の曲はやんない!アルバムも作らない!」と宣言してしまった。
どうしてそんな大事な事を一人で決めてしまったのか。
私はひどくガッカリしたのですね。
次はすごいアルバム作ってくるんじゃないか、と密かに期待していたので。
さすがに「Mellon Collie」にはかなわずとも。
何はともあれ、再結成は正直うれしかったんだけど、一方ですこし寂しくもあった訳である。
そしてアルバム止めた宣言でもっと寂しくなったのであった。
お願いだから、作ってくんないかな。