80年代末のポストパンクと呼ばれる一連のバンドの中でも後世に与えた影響力の大きさでいうと、Gang Of Fourは随一であろう。
何せR.E.M.にRed Hot Chiri Pepperのフリー、それにPrimal Screemのボビーなんかもライナーを寄せるほどである。
最近でいえば、Franz Ferdinandもかなり影響が指摘される。
日本でもPolysicsがメンバーにプロデュースを依頼?するなど、未だにその手腕やセンスは羨望を受けている。
そんな彼らの作品については、実は1stしか聴いた事がない。
というのも、1st以外をレコード屋で見たことがないのである。
よしんばベスト盤。
3年くらい目に再結成して新譜を作っているというニュースを聞いたが、それきり音沙汰もないし、再びメンバーが抜けたとか言う話もあるし、てっきり1枚しか作ってないと思っていた。
でも、実際にはそれなりに出してはいたらしく、2ndは1st並みとはいわないまでも結構高評価であるらしい。
それ以降は芳しくないようだが。
なので、また探してみようと思うのですね。
で、今回はやっぱり聴いたことの或る1stで。
初めて聴いたとき、こいつはかっこいい、と唸ったよ。
よくギターの切れ味、という表現を見るんだけど、このアルバムを聴いて初めてその意味がよく分かったもの。
編成は基本的なギター、ベース、ドラムだし、曲も複雑に絡み合ったりべらぼうなテクニカルでもない。
しかし、音の隙間やどっしりしたリズムの上でギターが鋭く切り刻む、なんて。
めちゃくちゃ尖っているけどポップだし。
とにかくクールってなこういうのをいうんだよ、といいたくなるものである。
歌詞に目を向けても、かなり尖っている。
さすがパンク以降。
しかし、他のバンドに比べてかなり情報量の多い歌詞である。
曲を聴いても、かなりセンスで作っているのは間違いないんだけど、一方ですごく考えられている音楽でもあると思う。
音の隙間とかってかなり意識的に作り出さないと、自然発生ではそうできないんじゃないかな。
それこそザゼンとかもそうだけど、単にスカスカな訳ではなく、間によって緊張を生み出すっていうのは高度なことだと思うよ。
この人たちってかなり頭いいんじゃないかと思う。
で、特に好きなのは"Not Great Men"の歌詞。
他の曲に比べ短いんだけど、非常に抽象的というか、遠回しな言い方をしているんだけど、そういう表現に仕方がすごく好きだね。
随一のポップさもあるしね。
基本的に攻撃的で不穏さを持った曲が多いんだけど、この曲は割と素直に受け入れやすいんじゃないかなと個人的には思う。
この1stについては、ジャケットアートもきわめて秀逸であると思う。
3枚のイラストとともに、短い物語のようなものが添えられている。
「The Indian smiles, he think that cowboy is his friend. The cowboy smiles, he is glad the Indian is fooled. Now he can exploit him.」
原文ですべて載せてみたが、興味のある人は短い文章なので是非訳してみてください。
非常に味わい深く、また今日様々なところで問題となることの根本が描かれているようにも感じられる。
IndianとCowboy、それぞれが象徴するものとそれぞれの思惑の有り様が、短い中で見事に表されている。
なんてことのない文章なんだけどね。
彼らのメンタリティもよく現れているんじゃないかな。
80年代当時と現代は、音楽的にはよく似た様相を呈している、という指摘がある。
いろんな音楽性をもった奴が続々出てきていて、違った意味でのシーンを形成している、という面で。
音楽、特に自分たちの生活やそこで育まれた価値観を強く反映した音楽というのは、自ずと時代の鏡となる。
そういう視点で見たとき、そこには音楽だけでなく時代的な共通項も或るのかもしれない。
それがどういう部分なのかは、残念ながら私にはわからないが、いずれにしろ今は少しずつ何かが動き始めている時代であるとは思う。
これから先数年で、世界は大きな変革を迎える可能性が、結構高いと思うよ。
何が起きるかは分からないけど、価値観を大きく揺さぶるような何かが起きるんじゃないかと、密かに期待しています。
それはいい変化なのか悪い変化なのか、それは何ともいえないけど、どっちが起きても構いはしないね。
いずれにしても、私にとってはクソみたいなものだから。
早く大人にならないとね。