明智小五郎や、怪人20面相という名物キャラクタも生み出した、日本を代表するミステリー作家である。
その名を冠した文学賞もあるし、最近ではすっかり子供たちの人気もの、名探偵コナン君の名字も彼らから取られている。
そして毎回コナン君に睡眠薬を食らっては昏睡状態に陥れられる毛利小五郎も、明智小五郎から取られているのだろう。
それにしても、そろそろ睡眠薬のアディクションになってしまわないか、心配である。
高校生の頃、私も一時期熱中して読んでいたことがある。
ただ私が読んでいたのは、世間的に有名な推理小説ではなく、むしろ変態的なものばかりであった。
芋虫とか、鏡地獄とか、孤島の鬼とか、パノラマ島奇譚とか。
人間の歪んだ欲望を描写したような、あの陰鬱でドロドロした世界観が面白くてね。
危ない奴だよ、我ながら。
そんな変態小説の中でもひときわ異彩を放っているものと言えば人間椅子ではなかろうか。
或る女流作家の家に、奇妙な手紙が届く。
その手紙には、奇妙な回顧録が書かれてある。
差出人はどうやら椅子職人の様である。
それを読み進むうち、次第に彼女は戦慄を覚えるのだが．．．。
興味の或る人は是非読んでみるといい。
結構びっくりするから。
でも、ある意味じゃすごくミステリーな小説かもしれない。
それはともかく、日本には一部カルト的な人気を誇るバンドの一つに人間椅子という奴がいる。
もちろん由来は乱歩である。
彼らはBlack Sabathとか、プログレとか、とにかくおどろおどろしいものは大好きらしく、それらの影響を楽曲中にしばしば、ていうかいつも覗かせて、いや晒している。
かといって単なるコピーではなく、ちゃんと自分たちのスタイルにしており、その存在感はまさに孤高、他の追随を許さない。
もっとも独特すぎてマジョリティにはなりえないだけだけど。
大体格好からして既に素敵すぎるから。
私が彼らの音楽に興味を持ったのは、大槻ケンヂのエッセイなどでたびたび登場していたためである。
高校生の頃は完全にオーケン本ばかり読んでいたからね。
実は現在に至多様な音楽的趣向も、この人の影響によるところが非常に大きい。
まさに我が青春を決定づけたと行っても過言ではないのである。
おかげですっかりモテない男のメンタリティを獲得してしまったが。
それはともかく、折に触れて出てくるので一つ、という訳である。
で、最初に手にしたアルバムは、これまた彼らのキャリアの中でもどうやら比較的コアな「無限の住人」という奴。
これはアフタヌーン誌連載の人気時代劇漫画とのタイアップもので、アルバムのアートワークなどは漫画の作者・沙村広明氏が担当している。
当時漫画を知っていたからこのアルバムをチョイスした訳ではなく、中古屋でたまたま見つけたのがこのアルバムであった、というだけである。
ちなみに私はこの漫画が今一番好きなのだが、その導入はなんとこのアルバムである。
出会いというのは、どこにあるかわからないね。
得てして運命という奴は、単なる偶然である。
曲に触れるのなら、こういうのを和風ロックというのだよ、と言いたくなるような音楽性。
基本はメタルなんだけど、三味線みたいなリフや、詩吟のごとき節回し、英語の一切出てこない歌詞など、それこそ古典文学をメロディにのせたような音楽で、始めは爆笑したよ。
だって、こんなの聴いたことなかったから。
しかし、何回か聴くうちに結構好きかも、となって、今でもたまに聴いてしまう。
特に好きな曲は"辻斬り小唄無宿編"で、できたらカラオケでも唄いたいくらいだ。
絶対ないけど。
その他”黒猫”は普通にかっこいい曲である。
実は非常に楽曲の幅も広く、ポップと言えばポップだし、キャッチーと言えばキャッチーな楽曲群なのである。
後は世界観を受け入れられるかどうかだけである。
漫画についてはこの後に読むようになったんだけど、そうして漫画の世界観を知ったる後改めて聴いてみると、実に双方がリンクしていて、タイアップ作としても非常に優秀であるのがよくわかる。
特にタイトル曲でもある”無限の住人”などは、まさに万次のテーマ曲でいいんじゃなかろうか。
でも”宇宙遊泳”は絶対作品とは関係ないよな。
妙にファンシーな曲もあったりするのがまた面白い。
彼らは90年代のバンドブームの時に世に出てきたバンドである。
すでにデビュー当時から異彩を放っており、オリジナルな世界観を展開しまくりで、さわやかさなど欠片もない文系オタク集団といた風情。
しかし、圧倒的な演奏力を誇る彼らは、審査員からは非常に高評価を頂戴したとか。
それにしても、この頃のバンドなんて大半が女の子にモテたいためにやってたようなのだったのに、こいつらにはそういうところがまるで感じられない。
従って、このバンドをフェイヴァリットに挙げるような奴はすべからくモテないんじゃないだろうかと推測される。
実際、私もこういうの知ってる？と聴くと、男友達ですら「え？」みたいな感じで怪訝な顔するからね。
賢明な私は女の子にはあんまり聴かないようにしている。
・・・そんなこともないか、だからモテないんだよ。
まあモテるモテないは別にして、非常に日本らしいバンドである。
特にサバス系メタルの好きな層にはかなりの支持率があるそうだが。
ちなみに大学の先輩で青森出身の人がいたんだけど、地元じゃやっぱり有名みたい。
まあその先輩は、どうやら母校が一緒だったらしいしね。
彼らは実は結構高学歴なのである。
でなきゃあんな音楽はできないか。
ぶっちゃけ全くおすすめしないけど、ちょっと変わった奴が聴いてみたいわ、でも洋楽って苦手だし、という人などは、是非一度手に取ってみていただければ良かろうと思う。
でも、その場合多分買わないといけないと思うけど。
それにしても、最近彼らの過去の作品が頻繁にリイシューされている。
一体どういう訳かはさっぱりわからないが、実はベスト盤も出ているんである。
謎の存在感を放ち続ける、まさにカルトバンドである。
