もう改めて書かないけど、やはり一流のプロデューサーは一流の審美眼を有している、と言うことであろう。
今や出来のいい新人を誰が一番早く探し当てるかに、メディアも躍起になっている印象がある。
日本でいえば、Snoozerなんかはマイペースに毎年肝になる新人を早くから紹介しており、特にKlaxons以降は国内でのCDの店頭販売でも敏感に反応していたりする。
一方老舗的ロッキンオンは、昨年から毎号巻頭でちょっとでも話題になっている新人アーティストをガンガン掲載していたが、最終的にはまり芳しい成果は出ていない印象である。
今月号には数ページにわたり列挙しまくっていたが、変に凝ったフォントと情報過多で正直途中で見る気が失せた。
やっぱり音楽だから、音聴いてなんぼだよね。
ちなみにクロスビートは今一その辺はよくわからないが、むしろそういうことに価値を見いだそうとはしていないような印象も受ける。
いずれにしろ、いわゆる目利き耳利きというのは、やっぱり重要なんだよね。
散々発掘的な話をしておいて何だが、有名プロデューサーと言っても、いわゆる先物買い的な目利きさんもたくさんいる一方で、時代に対する嗅覚の強いタイプの人もいる。
今は少しなりを潜めている印象のあるDFAなんかは、まさにそういうタイプだと思う。
Raptureに始まり(別にそういう訳ではないけど、世に知られるようになったのはやっぱりこれが一番大きいだろう)、様々なバンドのリミックスワークなどもありながら、自身の音楽も圧倒的な評価を獲得しているLCD Soundsystemでその才能を遺憾なく発揮しているしね。
NINのトレントも、彼らのデビュー盤を大絶賛していた。
アレを21世紀最重要盤と位置づける人もいるくらいである。
確かにここ数年の音楽性の起点的ポイントに彼らの音楽があるだろう。
実際アルバムを出す前から、既に数曲のシングルでその界隈では非常に名が知れていたと言う彼らの1stは、ディスコ・パンクなんて呼ばれている訳であるが、それを象徴するようなシンプル且つハイセンスなジャケットからして非常にすばらしい。
白地に黒でミラーボールの描かれているこのジャケは、ジャケだけでもかなり上位である。
こういうシンプルな奴って好きなんですよ。
で、肝心の音楽はと言えば1曲目から痺れる。
"Daft Punk is Playing my House"である。
ふざけてんのか?と思うようなタイトルであるが、これが最高にかっこいいのである。
o-A,Ah~u!!という叫びとともに、スカスカながら骨太なビートが鳴り響く。
ぽこぽこいう奴も絶妙な入り込み方で、いわゆるピコピコなシンセ音のダンスミュージックとは異なる指向性を持ったダンスミュージックである。
基本はもちろんミニマルだしね。
でも、ギチギチのトランスとかと違い、程よく陽気なのである。
力技ではなく、あくまで自然に体を揺さぶられるような心地よさ。
力の抜き具合が絶妙なのだろう。
全体的に言って派手な展開はない。
いわゆるもう爆発の性急で攻撃的な展開がある訳でもない。
音の密度もきわめて低い。
それでも尚ダンサブル。
レビューなんかでも結構書いている人多いけど、パーカッションとかの使い方が本当にうまいと思う。
かなり考えて作っているんだろうな、ていう感じはするけど、でも感覚を探りながら音を紡いでいるような感じかもしれない。
わかっているんだよ、この音楽は。
後に出てきているバンドの中でも、彼らの音に何かしら影響受けているだろう、という感じのする奴はちょくちょくいる。
今やすっかりポップアイコンともなりつつあるThe Ting Tingsなんかはすごく強く感じるのですけど。
LCDをもっとポップで軽快にしたらこうなった、見たいな。
彼らがディスコ・パンクと呼ばれる所以をその辺りから関節的に感じる思いである。
ちなみに、彼らはJoy Divisionの”No Love Lost”のカバーをしばしばライヴでみせるようで、YouTubeでその音源は聴けるが、これも実にかっこいい。
この1stアルバムは、2枚組になっており、1枚が本編、もう1枚がアルバム前に出していたシングルなんかを集めたもので、クオリティ的にはこれ単品でも遜色ないどころじゃないくらいすばらしい。
特に有名な曲ばかりであるし、ライヴでも定番曲ばっかなので、はずれなはずないんだけど。
なんと言っても"Losing my Edge""Beat Connection""Yeah"は最高としか言いようがない。
"Yeah"なんてライヴでやられた日にはもう叫ぶしかないしね。
このディスクをバンドルとする際、レーベルなどからは当然のように反対されたようだ。
何故ならこれ1枚で十分すぎる商品になるのだから。
それにも関わらず、1stのおまけのような位置づけで、実際価格的にも1枚分なのである。
商業的に見ればもったいない、でもそんな男気が素敵である。
このDFAのドンといえば、今は既に軽くメタボったジェームス・マーフィーという男である。
本当に普通のおっさんていう感じなんだけど、ライヴだと実に最高にかっこいいのである。
かなりの完璧主義者と見た。
まだ一回しか見たことないけど、次またきたら絶対いくもの。
一見の価値のあるバンドである。
余談だが、DFAはジェームスともう一人の男が中心になっているようであるが、この二人の出会いと言うのが、実は昨日書いたPrimal Screamの「XTRMNTR」であったようだ。
このアルバムでたまたま一緒になり、大変意気投合したそうな。
いろんな部分で相通じるところがあったみたいですね。
当時まだ有名でなかったはずだし。
意外なところに、様々ななれそめはあるようだ。
まさに運命的な出会いで、音楽界にとっても希有なことである。
ああ、早く新譜が聴きたい。