音楽放談 pt.2

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今を映す ―Neon Bible

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最近は輸入版も国内シェアを広げているのであろうか。

国内版よりも先に出る場合が多いし、今は情報の方がかなり早いので、待ちきれない場合輸入版を購入することも少なく無い。

国内版であれば、ボーナストラックがつくが、それ以外は大した魅力はないんだよね。

もちろん対訳があるとすごく助かるけど、まあその気になれば自分で訳せなくはないから。

ライナーにしても、最近は別に読まないね。

雑誌みれば概略とかはわかるし。


多分こういう認識の人が少なくないのだろう。

最近は国内メーカーも如何に売るかに必死と見える。

もちろんデジタルの台頭はあるにせよ、国内版は最近非常にサービス満点である。

PVがついているのはもはやザラ、ボートラは未発表がなければリミックスを3曲くらいとか、あるいは日本先行発売というのも多いし、初回2ヶ月のスペシャルプライスといって、場合によっては輸入版より安いこともある(もっとも輸入版は店側が値下げしている場合が多いけど)。

CDにパッケージされているのは、発売の1ヶ月以上前にはできているだろうし、それをどのタイミングで出すかが商売としての音楽であろう。

日本メーカーもその発売権なんかをきっと必死に獲得したりしているんだろうな。

その辺の事情には興味あるが。


こうした努力も虚しく、オリジナル以外認めない、というスタンスをとるアーティストもいる。

オリジナルとは、要するに自国版のみてこと。

それで話題になったのが、1stで世界中から大絶賛を浴びたArcade Fireである。

彼らの2ndは輸入版のみ。

世界中でボートラもボーナスディスクもなし。

純粋にアルバムのみである。

そこには、一重に彼らの真摯な思いがあるのだろう。


このアルバムが発表された当時というのは、まだブッシュ政権であったし、先の見えない不安感がアメリカ中に蔓延していたという。

かの9.11以降、価値観を根本から揺さぶられたアメリカは、非常にマズい状況でもあったしね。

そんな中で、そうした状況に警鐘を慣らそうとするアーティストは結構いる。

特にインディシーンには非常に多く、むしろそれを発するためにインディとして活動していたものもかなりいるだろう。

Arcade Fireはその中でも商業的な成功を収めたこともあり、もはや代表格のようなバンドである。

もちろん2ndも世界的に歓迎された。


このアルバムにおいて注目が集まったのは、一つにレコーディングを教会でやった、ということ。

古い教会を買い取り、そこを改装してスタジオとして使用した訳である。

その風景がどのようなものだったか定かではないし、その甲斐あってなのかはわからないが、このアルバムは全体的にライヴ的な音になっている。

響きがあるというか。

バイアスかかっているからか知らんけど、その向こうに透けて見えてくるような気持ちもする。

また、今回非常に効果的と言うか、ムードを強烈に醸しているのがパイプオルガンである。

教会といえば、これという楽器。

非常に重層で威厳ありげなその響きは、なるほど彼らのもつムードや、アルバムのテーマのフィーリングとも合う。


アルバムタイトルが「Neon Bible」というだけあって、テーマはアメリカにおけるキリスト教と言うことだろう。

ツアーTのモチーフも十字架をあしらったりして、強く押し出しているのがわかる。

あいにく対訳はないので、一部しか歌詞はわかんないけど、全体的にダークだし、喪失感のようなものが非常に強いんだよね。

前作では、タイトルの割には非常に希望と言うか、前向きさを感じたんだけど、このアルバムにはそういうフィーリングはあんまりない。


このアルバムは、基本的には好意的に受け取られたんだけど、一方で批判的と言うか、懐疑的な評価もあった。

個人的には、良いアルバムだけど普遍性は薄れたかな、という印象。

というのも、このアルバムはテーマが非常に固有のものだし、音的にもそこを想起させるものがあるため、言ってしまえば追いつけない部分があるのである。

要するに、アメリカ人にとっては非常に重要なテーマなんだけど、アメリカ人以外、とりわけ日本人にはやや他人事過ぎるように思うのである。

従って、コネクトできる要素少ないんだよね。

それに加えて歌詞は自分で、と言うことになると、やはりちょっと音楽的にも重いのである。


もちろん良い曲はいっぱいあるよ。

"Black Wave / Bad Vibrations"のヴァイオリンはとても素敵。

ジーヌがメインヴォーカルの曲なんだけど、ヴァイオリンとも相まって非常に女性的な柔らかさのある曲で、素直にポップな曲である。

続く"Ocean of Noise"は、非常に思い曲ながら、このフィーリングはすごくいい。

「You've got a Reason, i gave mine. But all the reason i gave were just lie to buy myself sometime.(ちょっと違う箇所もあるけど勘弁)」という一節は、非常に切なくて。

また、ep収録で、彼らの代表曲である"No Cars Go"も再録版が入っているが、この曲はこのヴァージョンが遥かにかっこいい。

ライヴ的な疾走感があって、曲のムードにも合っているし。

"(Antichrist Television Blues)"のまくしたてるような展開もすごく良い。

1stの"Rebellion"とちょっとフィーリングが似ているかも、と個人的には思う。


アメリカの今、という意味においてはきっとこのアルバムは非常に良くとらえられているんじゃないかと思う。

わかんないけどね。

ただ、それ故に普遍性は弱いとおもうのよ、国際的なね。

純粋に音楽的な評価をすればやはり相当高い水準であるのはそうなんだろうけど。

まあでも、良いアルバムなのは間違いないですよ。

ただ1stの方が好き、と言うだけでね。

聴いてみる価値は十分にあるけど、好みはかなり分かれると思う。


早ければ来年には次作のレコーディング情報くらい入ってきそうな気はするが、次はどんなのが来るだろうか。

彼らは結構U2とコラボをしているようなので、何かしらの形を出しそうな気もするし。

いずれにしろ、ライヴを、もう一度、見たいな。

本当にすごいライヴなので、前回観てない人は是非観ることをお薦めするね。