ふと思い返すと、私はここ数年以上夏バテをした記憶がない。
毎日ちゃんとお腹は空くし、もりもり食べている。
まあ、この連休もさることながら、ここのところはもっぱら酒ばかり飲んでいるのでそもそも食欲云々ではないんだけど、思い返しても学生の頃の方が夏バテしてたな。
そういえば、母親はしばしば「私は夏バテなんて全然しない」と豪語していた。
思うに、大人になるとちゃんと冷房の効いた心地のいい環境にいる時間の方が多くて、学生の方がこの夏の暑さをダイレクトに受けてしまうから、必然夏バテにもなるのだろう。
このクソ暑いのに走り回ってりゃ、そりゃバテるよね。
熱中症には気をつけてほしいところだ。
さて、遅ればせながらLITEの新作『Multiple』について。
リリースから早2ヶ月たつのだけど、私はここ何作かのリリースツアーにはちゃんと行っていて、多分『All For The Innocence』以降皆勤賞だ。
作品ごとにその芯はそのままに着実に進化している彼らの音楽もさることながら、やっぱり彼らの音楽がそもそも私は好きなのである。
で、今回のアルバムは前作以上に原点回帰と言わんばかり1st、2ndを彷彿とさせるようなアグレッシブで力強く、とてもストイックな曲が並んでいる。
それ以上に楽しそうだなというのが印象的である。
彼らのキャリアにおいて一つの転換点となったのは、間違いなく『All For The Innocence』であろう。
それまで生楽器4本で突き詰めていたところから、シンセ音を全編にわたって導入したのみならず、ヴォーカル曲も出てくるようになったから。
音楽的な限界を感じたというよりは、単に表現したいことを突き詰めた果てにその制約には意味がないと判断したんだろうと思っている。
そのワールドツアーについてはDVDにもなっているのだけど、そうなったらそうなったで却って違う壁にぶつかる事態になり、次のアルバム『Intallation』はまた生楽器の比重が大きくなったものの、引き続きループは多用する音楽だった。
彼らはいうてもファン層はメジャーではない。
タフな環境でのライブを強いられる中で、音楽として伝えるためには環境的な制約があってはダメだ、というところから再び生楽器主体の曲作りにシフトしていったわけだけど、その中で色々なことを試したのが前作『Cubic』だろう。
ヴォーカル曲といってもゲストを招いた形のものだったところから、ギターの武田さんが歌っているのだから。
もっとも、LITEの前身的なバンドでは普通に歌っていたというから、彼らにとっては特別なことではなくて、久しぶりにやってみようか、という感じだったのだろう。
ある種の歌心を重視し始めたのかな、と感じる曲は他にもあって、インストながらSoil & Pimp Sessionsのタブゾンブが参加した”D”なんかは、トランペットが絶妙に歌メロを奏でているようで、めちゃくちゃクールでかっこいい曲に仕上がっていた。
そんな作品たちを経ての今回、彼ら自身も初期作をかなり意識したといっていた新作は、確かにここ数年の彼らを見事に咀嚼した素晴らしい作品に仕上がっていた。
ほとんどはギター、ベース、ドラムが主体になっており、シンセ音はほとんど見当たらない。
ループは満載だしゲストヴォーカルもしっかり使われているが、かつてのストイックさ全開のアルバムとなった。
また、かなりミニマルな曲調なのは最近の彼らっぽいし、だけど必殺のリフは炸裂しまくり。
楽曲によってはなんか必殺技みたいな曲だな、なんて思うものも。
正直はじめて聴いた時には えらいあっさりしているというか、音数減らしまくってタイトにしまくったみたいな印象だったんだけど、その実ソリッドにした果てんだなと感じだ。
先行シングルとなった"Brizzard"しかり、1曲目の"Double"しかり、めちゃくちゃタイトでかっこいいのよ。
何より彼らが楽しんで作ったのだな、というのが伝わってくるがとてもいい。
やっぱり楽しんでやっている人たちの作り出すものは楽しんですよ。
今回のツアーで、彼らは独自アプリの開発も発表、そこではライブ映像の配信や未発表曲のリリースなどのコンテンツを用意。
さすがビジネスマンでもある武田さんを要するバンドだ。
こうしたアクションもとても面白いけど、こうして作品をリリースするごとに喜ばせてくれる存在というのは、音楽ファンとしては嬉しい限りだ。
またいけるライブには足を運びつつ、がっつり音源を楽しもう。
LITE / Zone 2 (LITE 15th Live)