時代に漂うムードみたいなものはそこはかとなく存在している。
それは音楽だったり絵画だったり、様々な芸術活動にも表出されるわけだけど、そこに対してなんだかピンときて仕方ない、みたいなことはしばしば起こる。
今という時代も、後になれば何か思うのだろうか。
私は80年代の、いわゆるポストパンク/ニューウェーブと呼ばれる音楽がなんだか好きで仕方ない。
最近は少し遠ざかっていたけど、Spotifyでちょろっと聴いたらまた火がついたようであれこれ聞いてしまっている。
かっこいい。
ただかっこいいなと思ってしまったので、その気持ちをそのままに、好きな曲の動画をモリモリ貼っていこう。
まずはこちら。
世界的にも売れているニューウェーブの代表的バンド、Depech Modeの1983年の代表曲の一つ"Everything Counts"。
打ち込みの入ったインダストリアル的な風味もあるサウンドで、歌詞的には資本主義的な価値観に対する批判も含まれているとか。
彼らは元々アイドル的なバンドとしてデビューしたようで、実際この頃はみんななんかキラキラしている。
しかし、バリトンな良い声は健在で、ちょうどこのアルバムあたりでは音楽的に目覚めており、徐々に宗教的なモチーフの曲なんかもリリースしつつ、世界的なバンドに上り詰めて行った。
日本ではイマイチ広がらなかったららしいが、何故だろうか。
ちなみに今も現役である。
続いてはこちら。
こちらもインダストリアルロックの源流の一つと言われるKilling Jokeの1st収録"The Wait"。
ヴォーカルのJazz Colemanは当時ジョン・ライドンと並ぶ天才と言われていたとか。
かなりアグレッシブでメタリックな音楽と、やや呪術的なヴォーカルが絵も言われぬ魅力を放っている。
こちらもまだまだ現役で、数年前来日公演も数日にわたって行っている。
近年はよりハードロック的な音像になりつつも、反復を繰り返す展開で相変わらず独自性は持っている。
ちなみに、コールマンの見た目はジョーカーみたいだ。
少し爽やかな曲も。
ご存知The Cureの"Friday I'm In Love"、この曲のイントロがもうたまらない。
明るいしポップなんだけど、なんとなく胸を締め付けるような切なさ見たいなものがあて、さらにヴォーカル、ロバート・スミスのちょっと泣きそうな弱々しい声がそれに拍車をかける。
歌詞自体は恋愛におけるとても幸せな瞬間についてだと思うけど、この曲は本当に素晴らしい。
ギターのメロもこれぞ80年代と言いたくなるような風味満載だ。
見た目は変なメイクしているが、爽やかすぎるだろう。
実はこの曲は90年代のアルバムリリースだが、バンド自体は80年代からやっているので、よしとしてくれ。
この曲、大好きなんですよ。
ちょっとキテレツなこんな音楽も80年代初だ。
This Is New Waveとも言われるDEVOのRolling Stonesのカバー"Satisfaction"。
全員お揃いのつなぎを着たファッション性からして非常に特徴的だ。
メンバーを没個性化することでバンドとして個性が際立つという逆説的な存在で、バンドでありながややコミカルなステージングも見ていて面白い。
日本のPolysicsというバンドがかなりわかりやすくオマージュしているので、一部では有名だろう。
彼らも良い年だがまだまだ現役、最近ではおじさんが揃いの衣装でポップな音楽合わせてぴょこぴょこ跳ねたりみんなで更新する振り付けがなんだか可愛いともっぱら評判である。
かなり癖のある音楽だと思うが、トータルな意味でのポップ性は抜きん出ていると思う。
続いてはこちら。
ポップ職人と名高いAndy Partrig率いるXTCの80年の名盤『Black Sea』収録の"Respectable Street"。
デビュー当時はDevoにも通じるキテレツなキーボードと変則的なメロディで、どちらかというとパンク的な色の強かった曲調から、徐々に影響源であるビートルズ的なポップさを出すようになっていくが、このアルバムはキャリアの中でも一番ロックっぽいアルバムではないか。
私は一時XTCにどハマりしてずっと聴いていた。
初期の破天荒な感じもかっこいいんだけど、このアルバム以降のメロディアスな曲も最高で、どのアルバムも本当に大好き。
ちなみに、アンディは飛行機恐怖症かなにかでツアーができなくなってしまったので、このアルバムからしばらくしてツアーはしないアルバムアーティストなっていくため、ライブ映像も初期のものしかない。
是非70年代の彼らと80年代後半以降の彼らの対比も見てみて欲しい。
続いてはこちら。
Echoe and The Bunnymenの『Ocean Rain』収録の"Killing Moon"。
実は彼らについてはそこまで詳しくないんだけど、他のバンドと比べて少し影のあるような印象で、当時はこういったバリトン系ヴォーカルが多かったようだが、局長含めてムーディさは随一ではないだろうか。
特にこのアルバムは全体にウェットな空気も満載で、こんな梅雨の時期に聴くのもおすすめだ。
ギターの音色がちょっと民族音楽っぽいような感じもグッドだ。
続いてはこちら。
ご存知Joy Divisionの"Dead Souls"。
当時冷却装置と評された音楽性だが、同時代の他のバンドとこうして改めて比べてみるととても無機質に感じるね。
ただ、そのサウンドに対して歌詞は非常に詩的であったり、またヴォーカル、イアンのパフォーマンスも肉体的であったりと、彼らなりにパンクバンドだったのである。
しかし、このバンドって演奏は素人が聞いても上手いとは思えないし、洗練されて無さがあるんだけど、音楽の魔法とでもいうべきものが漲っている。
当時20代前半、Sex Pistolsに当てられてバンドを始めたばかりの若者で、まだまだ円熟なんて遥か遠いところだったであろうキャリアなので当たり前だけど、いまだに多くのバンドに影響を与え続けるだけあって、絵も言われない魅力を持っている。
先ほど書いた歌詞については、まあ暗い歌詞なんだけど、魂の慟哭ともいえる表現は、大学時代に私の心を捉えて、今も呼び続けられているような思いだ。
後にNew Orderというバンドに化けることでも知られているが、音楽性の転換にも驚くばかりだ。
長くなってしまったので最後はこちら。
Gang Of Four の2ndアルバム『Solid Gold』収録の"Hell With Poverty"。
1stのジャギジャギした鋭い音楽で一気に世に知られた彼らの2ndは、スピードも落として腰も低く、重低音の響くドスのきいた音楽だったわけだが、世間的にはイマイチだったらしい。
でも、私はこの2ndが大好きで、アルバムの構成も非常に素晴らしい。
冒頭から重たい、不穏さのある展開で静かに始まり、確かに派手さはないだけど、徐々に盛り上がっていきラストがこの曲である。
ノイジーなギターに何気に羽まくているリズム隊、そして狂ったようなハイトーンのヴォーカル、思わず踊り出したくなってしまう。
酒を飲みながら聞いていると本当に最高なんですよ、この曲。
ベースだって、完全にダンスミュージックですよ。
ドスが効いてるだけで。
ギターのAndy GillもNew Waveの代表的な人で、他のアーティストのプロデュースなどもしており、先のPolysicsの曲もプロデュースしたことがあった。
バンドとしてはアンディを中心に再始動しており、オリジナルメンバーではないが活動もしていたし、ちょくちょく来日もしてくれていたんだけど、昨年亡くなってしまった。
いやぁ、まだまだ現役バリバリ感だったのでびっくりしたし、一度は彼の生のギターを見ておけば良かったと後悔したものだ。
見た目的にもつり目がちでとんがっている感じで、かっこいいんですよ。
今更ながら、ご冥福を祈るばかりだ。
と、80年代の中でも私の好きな曲、アーティストだけをざっと並べて見たけど、こうして聴いてさえ多様性が満載だし、どこか懐かしさを感じるような曲もあるだろう。
90年代の日本のJ-POPの中には明らかに影響受けてるだろみたいな曲も多くあるしね。
それはともかく、こうして違うアーティストながらそこはかとなく通じるフィーリングがあるように思うのは不思議なところだ。
センス抜群。
昔のアーティストでも、良い曲は良いし、色あせるものでもないので、是非聞いてみて欲しいですね。
最後に、そんな80年代的なサウンドをここ日本で展開しているこれまたスーパークールなバンドの音源を紹介して終わろう。
本当はPVがあると良かったが消えてしまっていたね。
Lillies and Remainsというバンドだが、バンド名はBouhousの曲名からとられている。
彼らの音楽を聴いていつも思うのは、理屈じゃなくてクールな音楽だと直感させるということである。
是非色々聞いてみてね。