音楽放談 pt.2

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私とTHA BLUE HERB

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このコロナ禍において窮地に追いやられた音楽業界、ライブハウスやそこを中心に活動していたインディーズアーティストほどその影響は大きく、多くのライブハウスが廃店に追いやられている。

 

エンターテイメント全体が抑圧されて、この業界では80〜90%の収益減となっている。

 

不要不急のキーワードの下、そうしたものがどんどん追い詰められている様は、私のような人間にとっては悲しくて仕方ない。

 

私は友達が少ないし、昔からあまり人に何かを相談するのも得意ではなかった。

 

あれこれ考えて、一人で決断することをやってきたのだけど、その判断が正しかったのかどうか迷うようなこともたくさんあったんだけど、そういう時に文字通り音楽に力をもらうということは例えとかじゃなくて本当にあることである。

 

背中を押される思いや、寄り添ってくれる思いや、慰められたり色々の経験を私は音楽を通してしている。

 

そんな人が全てではないということは私も理解しているから、少なくとも政治家の先生方にとっては税金も対して払わない道楽としか写ってなかったのだろうか。

 

にもかかわらず、星野源のキャンペーンに乗っかった当時の首相は、どの面下げてと思ったものだ。

 

 

ともあれ、そうして私の人生を彩ってくれる音楽、その中でも特に好きなアーティストだったり、特別の意味を持つアーティストだったりはいる訳だけど、ある時から聴き始めて、その音楽でとても助けられたなと思うアーティストの一人が、日本のヒップホップのレジェンドとなっているTHA BLUE HERBである。

 

私は元々ロックと呼ばれる音楽が好きだし、ライブもバンドの演奏が好きではあるが、その中で数少ない全アルバムを聴いてるのが彼らである。

 

完全に後追いなので、聴き始めたのは確か3rdが出てしばらく経ってからの頃。

 

まだ新卒の会社にいて、どうしたものか悶々とした日々を送っていた頃だ。

 

当時読んでいた音楽雑誌でインタビューに出ており、そこでん発言から興味を持ちはじめて、ネットなどで調べるとロック好きも唸らせている、といった評も多くみかけたので、そこで1stを買ったのが最初だった。

 

それまでまともにヒップホップを聞いたことがなかったので、音楽的にどうこうというのはよくわからないながらに、そのラップの力強さと鋭さは素直にかっこいいと思ったし、楽曲はそれこそPortisheadとかにも通じるところもあったので、思っていたのとちょっと違うぞという感じだった。

 

日本のヒップホップは誰かをディスってなんぼ、またやたらとべたべたしい友情論みたいなものを歌っている印象だったので、そういう類とは違うのはわかった。

 

中でも、最初に突きつけられた思いがしたのはこちらだった。


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スキットという奴だろうか、MCのBossが一人で街の音を背景にメッセージを投げかけるもので、ここで彼なりの宣戦布告のようになっており、一方で自分たちと同じように頑張っている奴らにエールを投げるような、そんな内容になっている。

 

当時、会社の中で一人あくせくしたような状態だったので、なんだか妙に刺さったんだよね。

 

レコードを想定したセットリストになっており、このトラックはいわゆるB面の1曲目の位置にあるので、彼の意図はわかるだろう。

 

頭から最後までこのアルバムはカッコ良くて、まさに私のヒップホップ感を変えられたものだった。

 

 

その後はシングルやアルバムをどんどん集めるようになり、割と時系列に買い集めていった記憶だ。

 

次に聞いた2ndは1stの印象とはまたずいぶん違って、内省的な世界観と物語仕立てのリリックが彼らの一つのピークを示しているだろう。


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その代表格と言えるのがこの”路上”だろう。

 

プッシャーの青年の足掻きを描いたものだが、この緻密なストーリーテリングは他のジャンルを跨いでもそうあるクオリティではない。

 

海外旅行経験をもとにしたリリックが中心なのだけど、その中でもポップというか、わかりやすい曲も混じっている。

 


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ライブ映像の切り取りだが、この"ウルトラC"はBossのキレッキレのラップが聞ける彼らのキャリアの中でも変わり種の曲である。

 

 

こうした表現としての面白さもさることながら、やはり彼らの魅力は圧倒的なパンチラインと、説得力抜群のメッセージだ。

 

私が転職した2社目のところでも色々と問題が多くあって、社員同士割と仲は良かったと思うけど、業務上ではばちばちしたところも多くあり、やっぱり私は勝手に孤軍奮闘しているような思いで働いていた。

 

愚痴ってばかりの奴らを尻目に、なんとかしてやると鼻息荒くしていたんだけど、その時に私の背中を押してくれたのはこの曲だった。


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”時代は変わる”

 

彼らの代名詞的なパンチライン「追うものは追われるものに勝る」も炸裂する楽曲だが、この曲の精神はいつの時代も生きる。

 

「お前の力はお前自身で確かめろ、お前のための時代ならお前が変えろ」という一節はまさに脳天に喰らった思いがしたものだ。

 

この時代の彼らは多くのファンの評価でも無双状態だったらしい。

 

まあ、シングルやEPいずれのトラックもめちゃクソかっこいい。

 

またヒップホップらしく客演も多くやっているのだけど、彼らの恩師でもあるDJ Krushとも共作しており、しかもそのトラックはこの令和の時代にあっても十二分に響く内容の曲だ。


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"Candle Chant"という曲だが、病気でまさに死の淵にある友人に向けて歌われた曲で、この不安な時代だからこそ多くの人に響くんじゃないだろうか。

 

冒頭のBossのインタビューはまだまだ若さが溢れまくっているのも初々しくてなんだかいいんだけど、そんな彼からこんなラップが出てくるんだな。

 

DJ Krushが世界的なDJということもあるが、この動画コメント欄には英語のコメントもかなりついている。

 

それだけ普遍的なメッセージということだろう。

 

また純粋なスキルとカッコよさでいえばやはりこの曲だろう。


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Mighty Crownとのコラボ曲、"スクリュードライマー"だ。

 

トラックもめちゃくちゃかっこいいのだけど、Bossのラップとも同期させてとにかくかっこいい。

 

コラボ曲はかっこいい奴満載なんだけど最後にこの曲だけ。


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ジャズ的ポップバンドClambonとのコラボ曲、"あかり from Here"。

 

曲も味わい深いが、是非歌詞もしっかり聞いて欲しい1曲である。

 

こうして改めて振り返ってみると、本当に今この瞬間にバシッとハマる曲やメッセージが多いな。

 

それだけ何かの本質をえぐっているんだろうな。

 

なんか知らんが聞いていると泣けてきた。

 

 

ここからまたTBH名義の曲を何曲か。

 

3rd以降は評価が分かれるところではあるが、個人的にはこの3rdアルバムがとても好きだ。

 

大人になって、ガムシャラさから少し抜け出したころに見えてくる景色っていうか、周りのこともよく見えてくるし、少しだけ他人の思いにも気持ちをはせられるようになってくる。

 

一緒に走ってたと思ってたやつらも、いつの間にかそれぞれの人生を歩み始めている。

 

そんな風景を見ながらも、それでもなお自分はまだまだいくぜ、というような思いを新たにするような感じだろうか。

 

終盤になるに従い盛り上がっていくが、この曲は大好きだ。


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「生きてきた証、探し、踏みとどまる。去るものには縋らない」と歌われる"Mainline"。

 

決意表明のような曲で、人によっては冷たく響くのかもしれないけど、本当に何かをやろうと思ったらこうでないと前には進めないだろう。

 

だからこそついてこれない人もいる類の音楽だと思うけど、もしこれからいく先を見定めながらも踏み出せない人がいるなら、是非聞いてみて欲しい1曲だ。

 

 

割と力強い曲を中心に挙げているけど、彼らの懐の深さを感じるのは実は穏やかなトラックによく見られる。

 

かの震災以降政治的なメッセージも発しつつ、他方で純粋に支援的な活動もしている。

 

そんな思いを込めたこの曲は優しさの詰まった素晴らしい曲である。


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彼らはアルバムのたびに全国ツアー、本当に全国津々浦々のライブハウスまで行くんだけど、そのツアーの様子とライブ映像を映像作品に納めている。

 

この"Prayer"という曲は震災後にリリースされたアルバムのライブDVDにつけられたシングルなのだけど、震災後の日本への鎮魂歌のような内容の曲で、被災者に向けられた真摯な視線と、彼なりの矜持を示したような曲だが、こういうのを聞くと音楽の力というものを感じるのだよ。

 

 

2021年現在の目下の最新アルバムはセルフタイトルの曲だが、かつての攻撃的なトラックからは随分距離を置き、表現の幅は広がっているが、彼らの本質はずっと変わっていないだろう。

 

単に仲間が増えて、その中で敵なんていないなとおもったんじゃないかな、なんて思うよね。


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こちらが最新のMVになるが、穏やかな曲調もさることながら、リリックも比喩的な表現としてとても含蓄が増しているように思う。

 

彼らの地元北海道の厳しい冬の中での暮らしぶりの描写を通して、人の強さみたいなものを歌っているのかなと思う。

 

 

全員ぶっ潰す!みたいな感じだったデビューから、人の繋がりを歌うようになるとは。

 

こうした彼の変化を批判的に捉える人は少ないし、気持ちはわからないでもない。

 

だけど、私は歳をとるほどに彼らの表現に引かれていくし、過去の曲も今の曲も、ライブも全てがグッと染み入ってくる瞬間がある。

 

かっこよさってなんだろうなって思うんですよね。

 

まだ携帯すら持っていないというBossだが、このコロナにあっても音源を作ったり、コラボ曲ガンガン出したり、配信ライブやってみたりと彼らなりに新しいことをやっており、なんだか楽しそうだ。

 

知らない人のために補足すると、彼らはいわゆるレコード会社にはデビュー当時から所属しておらず、一貫して制作から流通、ライブのブッキング、物販のプロデュース、販売も全て自分たちでやっている、本当に叩き上げのアーティストである。

 

あまり地上波に出ることもないためなかなか知らない人も多いと思うが、過去には錦織くんの出ていたゲータレードのCMでラップしたり、最近では缶ジャムのヒップホップ回でR-指定が打ち合わせ時のVTRで話していたのは彼らのことである。


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彼らは今日24時間配信を行う。

 

20時から、自身のキャリアを総括しながら独自企画も準備しているらしく、数ヶ月前に発表されてからSNS上でも情報配信しており、やっぱり楽しそうだ。

 

もう50手前の彼らだが、そんな生き方もとても素敵だなと思うよね。

 

先ほど酒を食べ物を買い込んできたので、少しこれから寝て夜に備えようと思う。

 

どうなるかわからない時代とはいうけど、本当はいつの時代でずっとそうだったし、今はそれがわかりやすい形でリスクが等しく降り注いでいるだけだろう。

 

それでも生きていくんだし、死ぬときには死ぬ。

 

だからとりあえず今この瞬間楽しくやっていくしかない。

 

それが人生だろう。

 

最後にいつの時代にも希望を鳴らしてくれそうなこの曲を載せておこう。

 

"未来は俺らの手の中"


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