音楽放談 pt.2

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鏡としての音楽 ーTHA BLUE HERB

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昨日は仕事納めで、私にとってはライブ納めでもあった。

 

今月は毎週末ライブに行っていて、ここ2年の鬱憤を晴らすように楽しんだのだが、そんなライブ月間の締めくくりだと勝手に位置付けている。

 

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毎回律儀に記事を書いていたとはいえ、考えてみればここ1年は更新頻度も下がってしまったのだが、やっぱり刺激があると考えることも増えるからね。

 

で、そんな最後を飾ったのは毎年恒例、年末には必ずLiquid RoomでやっているTha Blue Herbだ。

 

先月もイベントでは観ているけど、彼らの本領はやはり単独でこそ発揮される。

 

彼らは90年代からやっているわけで、ちゃんと継続的に音源も出して、音楽で稼いでいるのは彼らくらいだ。

 

MCはIll-Bosstino、トラックはO.N.O、そしてライブDJはDYEという3人が実質TBHだ。

 

Bossは50歳になったということなので、ヒップホップというジャンルにあってはオワコンとか過去の人と言われそうな年齢だ。

 

レジェンドの領域だしね。

 

実際今の若い世代でトップと言われるCreepy NutsZornなんかにとっては圧倒的なアイドルで、Zornは彼ら自身が24時間配信で対談相手として呼んだり、アルバム客演したり、そのほか様々なインタビューにも答えていたりと、Boss自身が完璧に認めている存在だったりする。

 

特に顕著なのは、セルフタイトルを冠した2枚組のアルバムでは、明らかにその影響を受けたリリックをあえて書いているとしか思えない。

 

今回のライブでは、珍しくMCも長かったのだけど、そこでも「あいつが今のトップだ」と楽しそうに話しているのが印象的だった。

 

Zornからしたら嬉しいだろうね。

 

 

と、前置きが長くなったが、今回はチケット発売間も無くで完売したこともあり、配信も決定、すっかりデジタルも使いこなしている。

 

会場はソールドアウトなので流石の満杯、といってもやはりキャパ100%入れていないようだった。

 

ともあれ会場の期待値はすでに高い。

 

彼等はヒップホップという、今の不良文化を代表する音楽ジャンルではあるが、客層は私も含めていわゆる普通のやつもたくさんいて、むしろ騒ぎたいだけのどヤンキーみたいな人はあまり見たことがない。

 

スタイルとしても自らリリシストと呼んでいるくらいそのリリックの世界観が一番の魅力なわけだが、そこに感動する人って、たとえヤンキーと言われる人でもちょっと芯のあるやつが多いのかなと勝手に思っている。

 

もう一つ面白いなと思うのは、携帯でカメラを構える人もほとんどいないということ。

 

これは今時めちゃくちゃ特殊な状況だと思う。

 

問題になり始めた当初はちらほらいたが、そのことにステージ上から彼等自身が「気持ちはわかるけど、そんなの勿体無いからちゃんと聴いてくれ」ということを言っていたこともあったが、いつしかそんなことを言わなくてもファンがわかっている状態になったのだろう。

 

私の行くライブはせいぜい2000人くらいのライブハウスがほとんどではあるが、彼等のライブでは会場全体が本当にワッとなる瞬間がたくさんあって、観客の期待値を分かりやすく感じられる。

 

それこそアイドルのライブとかはまた違うんだろうけど、本当に濃密なファンなんだろうなと思うわけだ。

 

 

開始時間を10分くらい押してスタートしたが、拍手で会場の空気が揺れるというか、あちこちでみんな力一杯するから細かな波紋が無数に広がりあっているような、そんなイメージが浮かぶくらいだ。

 

年末ということもあるだろうけど、やっぱりライブが始まった時の盛り上がりがまずすごい。

 

そして1曲目は"Amenimo Makezu"だ。

 

そりゃ盛り上がるよな。

 

そこから“北風"と、初期の曲を続けてドロップして、旧来のファンからすればたまらんだろうし、新しいファンにとってもこれ聴きたかった、とかあるだろうな。

 

そこからTBH名義の作品と、直近リリースしたDJ Hondaとのコラボアルバム、ソロからの曲を織り交ぜたセットリストを展開していく。

 

コラボアルバムでも顕著だったし、先のイベントでも感じたけど、今のBOSSはモード的にすごく明るいというか、楽しくてしょうがないというのが強く感じられるのですよね。

 

MCも結構取られて、そこではラップバトルについての苦言を呈することもあったりとか、テレビ番組に企画で呼ばれて、面白そうだと思ったが結局断った話とか、いつになく饒舌だった。

 

本当にあちこちで言われるんだろうね。

 

 

そして中盤では今年レーベルメイトになったYou The Rockも登場。

 

ソロアルバムでフィーチャリングしていたのでもちろんその曲での登場だ。

 

過去にトチってしまったことはもはや語種のように毎回いじられているが、それでも笑顔でお互い向かい合っているし、別に嫌味的なネガティブなニュアンスというよりは、今のYTRのあり方を考えた時に、むしろそのエピソードを込みでこいつ頑張ってるんだぜ、というパフォーマンスでもあったのだろうなと思う。

 

YTRのアルバムも私は買って聴いたのだけど、正直好きだったもの、この作品。

 

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これは冴えない中年の泥臭くてカッコ悪い足掻きを曝け出している。

 

反対側では変わらない本質が見えてきて、私は彼については昔よくテレビに出ていたくらいのイメージしかなかったし、音源も聞いたことはなかったけど、なんだかすごく知っている人のように感じられたものだ。

 

せっかくやってきたので、このアルバムからもリミックスverとして1曲披露された。

 

MCでは普通にトークセッションみたいになっていたが、そこで改めてこの曲のタイトルの背景や、こうして改めて活動をしている中でのあれこれも語られて、なるほどなと思ったものだ。

 

私も30半ばを超えて、そのくせいまだに大した実績も残せないままあくせくしているし、少し先の将来について不安に思ったり、死に方を考えるようになったりするわけだが、そんな中で改めて自分の昔を思い出す場面があって、曲を聴きながら改めてそんなことを重ねていた。

 

“Think About Why You Started“という言葉が改めて語りかけてくる、というやつか。

 

ライブで聴いて改めて思ったが、YTRは声が強いな。

 

 

2曲披露して彼はステージを後にしたが、そこからもまだまだライブは続く。

 

新旧はもちろん、客演したもの、特に最近はZornのアルバムでやった"Life Story"を部分的にだがよくやっている。

 

彼等の3rdアルバムのタイトルに冠された言葉だけど、これ以降の作品で変わったと言われているが、実際かなり心持ちは変わったのだろう。

 

このアルバムが、Bossが36歳の時だというから、なるほどなと思ってしまうよね。

 

私にとっても、最近やたらと頭に浮かぶのはこの“Life Story“という言葉、もちろん彼等のこのアルバムを聴いて以来、徐々に染み付いてきたような感じなんだけど、個人的には違う表現だけど同じことを言っていたんだろうなというので印象的だった言葉あった。

 

人には誰にでも語るべき物語がある、という言葉なんだけど、なんだか妙に頭にこびりついたのは20代前半の時だった。

 

そこから10年くらい経って改めて、やっぱり言葉が語りかけてくるような感覚なのだ。

 

 

すでに色々脱線しながら長くなってしまっているが、この日のライブも3時間の長丁場だ。

 

書いていて気がついたけど、曲を聴きながらそれぞれの曲で自分の中で浮かぶ景色や場面とか、いろんな人の顔だったり昔の記憶だったり色んなものを思い出してたね。

 

呂布カルマも何かのインタビューかYoutubeチャンネルかで話していたのが、表現しようと思ったことをすでにBossが言ってることが結構あるから一時聴きたくなかった、というようなことだ。

 

ひょっとしたら多くの人が感じる感覚だったり、形は違えど似たような経験を思える状況だったりを描いているんだろうな。

 

それらが紐づくからいろんなことを考えてしまうんだろうな。

 

3時間という長さで、まあ流石に長いぞとは思うのだけど、でも体感としては全然そこまでは思わない。

 

いつもそうなんだけど、それだけ音楽に没頭しているのだと思うし、まあこんだけあれこれ自分でも考えてるから、時間とかそういうことじゃないんだろうな。

 

多分毎回同じような経験をしていたと思うけど、自分の中でようやく言語化できた気がするな。

 

だからなんだかんだ彼等の音楽はずっと聴いてしまうんだろうな。

 

MCでも、俺らだけじゃなくてお客のあなたたちと一緒に作っている、という表現をしているが、もちろん彼等自身のパフォーマンスのテンションを上げるためのリアクションを求めるところもあるだろうが、他方でどう受け取るかでも楽しさは変わるぜとということもあるのかな、なんて思ったり。

 

私は音楽的なことはあまりわからないけど、その表現を通して自分が何を感じるかという感覚を大事にしているし、なんならそれがある音楽だったり絵画だったり本だったりを好むので、まさにそれを体感できるから毎回こうして足を運ぶことにもなっているのかもしれない。

 

ラストは"今日無事"で、最後は今年無事だ。

 

年末にはこの曲で締めるのが定番になってきているね。

 

最後まで万雷の拍手は続いて、満足度もめちゃ高かったな。

 

帰りは足が棒になっていたが、まあ3時間も経ってたからね。

 

期待以上に楽しかったし、変な客もいないし。

 

隣にイカつめのお兄さんがいて、MCの度に声を出して「うん・・・うん・・・そうだよ・・」とか言ってて気になったが、最後の方で両手をぶんぶん振りながら、まるでアイドルを見つめる少女のように胸の前で手を組んでいる様を見た時はなんか知らんがほっこりしたが。

 

友人と来ていたらしく、そのリアクションは「ああん?」みたいな感じなのに、そのギャップでまた思わず笑ってしまったが、彼にとってはBOSSは本当にアイドルなんだろうな。

 

 

来年はまた全国ツアーもするらしく、そして年末もすでに会場を抑えたと早すぎる公表、いつになくBOSSもずっと楽しそうだったし、MCでも曲について語ることはこれまでもあったけど、語り口がいつものようなストーリーテリングな形ではなくもっと率直だったのも驚いた。

 

本当に楽しいんだろうね。

 

年明けには24時間配信の再放送も決定、2日分けて配信されるので、今度は体にも優しいのはありがたい。

 

また音源も聴きながら、ライブを見て、楽しんでいきたいですね。

 

最高でした。


www.youtube.com

2年前の映像だけど。