年明け以降もちょいちょい新譜を買っているが、なかなか文章化するほどに聴き込めていないのだが、とはいえ良作がリリースされているのは嬉しいことだ。
そして、きちんと整理しておかないと自分の中で時間軸がぐちゃぐちゃになっていくなと最近とくに感じるところなので、個人的な整理の意味で直近買ったものをざっと並べておこう。
まずは、昨年末になるがこちら。
METAFIVEの2ndアルバム『METAATEM』。
元々は昨年7月とかにリリース予定だった気がするが、件のオリンピック問題でメンバーの一人、小山田が大炎上させられたことで一度発売中止に追い込まれた作品だ。
ライブも発表されていたが全て白紙になってしまい、ファンとしては苦い記憶である。
しかし、年末頃に配信ライブと合わせてアルバムも限定的に販売され、私はこちらを購入した。
配信ライブ自体、7月に行われる予定だったもので、会場にて撮影されたものが配信されたのだけど、さすがキャリアも積み上げた人の集まったスーパーバンド、めちゃくちゃかっこいいライブだった。
そしてこの2ndアルバムだが、曲はもれなくかっこいいし前作は割とテクノ的というか、そう言う色が強かったが今作ではメタリックなハードな曲もあり、他方で現在の世界を移したような曲もあり、文句なく素晴らしい作品であった。
特に個人的には先行配信もされていた"環境と心理"という曲が好きだね。
目の前の景色の変化によって気持ちが変わっていく様を端的な言葉で表現しており、情報量はそこまで多いわけではないが、すっと情景が目の前に広がる思いがする。
そのほか、"Wife"という曲の歌詞が絶妙に緩くていい。
「Wi-Fiは飛んでいるけど、MyWifeは飛んでない」という謎の一説でスタートするが、曲自体はかっこいい。
大人の遊びといったところか。
ともあれ、このアルバムが正式な形でリリースされなかったことは、非常に惜しいことである。
続いてはこちら。
Broken Social SceneのKevin Drewのソロ、K.D.A.P.名義でリリースされた『Influence』。
リリース自体はこちらも昨年だが、メディアとして入手したのが割と最近なので。
以前からソロ作品自体はリリースしていたが、それらはバンドの音楽と親和性のあるロックをベースにしたものが基本だったが、このアルバムでは初期のエレクトロニカ的な作風うだが、曲調などはあまりこれまででなかった感じのものだ。
よりオーガニックな音像で、打ち込みながら温もりを感じるあたりがちょっと違う感じで面白い。
アンビエント的な風味もあるので、個人的にはAphextwinを感じるところもある気がするが、ちょっとこういう音楽も作ってみたかったのかな、という印象だ。
日本語の情報がほとんどないので詳細な背景はわからないが、聴いていると不思議な気持ちにさせられる。
2月は待望の作品が立て続けにリリースされて、久しぶりにちょっと忙しかった。
まずは、今やアメリカの代表的なロックバンドになりつつあるSpoonの『Lucifer On The Sofer』。
アルバムとして10枚目になるので、実は結構多作なバンドと言えるかもしれない。
初期はポストパンク的な音楽性だったが、現在はロックンロールを基本にしながらもスタジオでのアレンジにも注力、音響的なアプローチもしながら生音の迫力も追求したような音楽が評価され、近年急激に評価されているようである。
前作はよりそのプロダクション的なところが立った印象のアルバムだったが、今作はまた曲にフォーカスした生なましさのあるアルバムになったかなという印象だ。
彼らの出征作になった『GaGaGaGaGa』にちかい感じかな。
かなりアップテンポな曲も多く、またアレンジのセンスもかっこいい。
何よりヴォーカルのダニエルの声がやっぱりいいよね。
こういう渋い声に憧れる。
次に、個人的に最近聴くようになった中で爆裂なヒットはこちらだ。
LAのネオソウル系の3人組、Moonchildの5枚目となる『Starfruit』。
タイトルもジャケットもかつてなく明るいというか、陽気な印象のアルバムだ。
彼らの音楽はとにかく品がいいし、ウィスパーヴォイスなヴォーカルも手伝って休日にまったりききたい音楽No.1だが、アレンジは音響的なアプローチも結構やっているのでイヤホンなどで聴いているとぐわんぐわんと頭を振り回されるような感覚も味わえて、一筋縄ではいかない。
今作はゲストヴォーカルが多く参加しており、曲自体はこれまでの良さを踏襲しながらもまた違った印象になるのが面白い。
ジャケットほど陽気さがあるわけではないが、ストレスが溜まっているような人にはぜひおすすめしたいアーティストだ。
以前にざっくりまとめ記事も書いたのでぜひ。
最近不安な出来事も多いので、休日くらいは浮世から切り離してゆっくりしてはいかがだろうか。
そして近年ジャズ界隈だけでなく、ジャンルクロスオーバーで注目を集めているのがこちら。
Robert Glasperの名作シリーズの最新作、『Black Radio Ⅲ』。
グラミーも受賞した前作だが、以前は〜Experience名義だったが、今回は個人名義である。
とはいえ引き続きさまざまなアーティストとのコラボが基本である。
タイトルの通り、いわゆるブラックミュージックと呼ばれる音楽をぎゅっと凝縮したようなコンセプトで、ジャズ、ヒップホップ、R&B、ロックンロールなどさまざま要素が感じられる。
私もこのアルバムをきっかけにブラックミュージックを聴くようになったのだけど、なんだかんだ彼のプロジェクトを1番聴いているな。
まだじっくり聞き込めていないのだけど、彼のような存在はとても大きな意義があるよね。
ちなみにジャズフェスティバルでの来日も決まっているが、なぜか秩父という。。。
遠いぜ。
最後はこちら。
Boom Boom Sattelitesの中野さんとThe Novembersの小林くんのThe Spellboundの1stアルバムがようやくリリースとなった。
先だってシングルは発表されていたし、昨年からライブ活動もスタート、そして2月にアルバムとしてリリースされたわけだ。
世の中的な注目のポイントはいくつかあるが、一つは中野さんが表に出ているバンドであるということと、それを音楽性自体は全然違うのではないかというノベンバのヴォーカル・作曲もしている小林くんと組むことでどうなるんやと。
ノベンバは、どちらかというと暗いバンドというイメージを持っている人の方が多いのではと思っているが、近年はだいぶ変わっており、作品のスケールも音楽としての強度も格段に上がっている。
打ち込みを取り入れたりもしているし、そもそも小林くんはブンサテの大ファンでもあtたというところ、そして何より彼のパーソナリティの基本がとても純粋なところがあるため、そこでマッチするところがあったのだろう。
実際アルバムの1曲目を飾るのが“はじまり”という曲だが、歌詞は小林くんが書いているとはいえ中野さんのストーリーとも紐付けてしまいたくなるようなものだ。
歌詞だけを見るとちょっと悲しいというか割り切りみたいなふうにも聞こえそうだけど、そうではなくて、そもそも生きていくとか生き続けるということがどういうことかという話や、そのための立ち向かたみたいなものが曲と合わせてめちゃくちゃポジティブに響くのである。
特に序盤の間奏部分のキーボードのところがあることで、サビや後半の繰り返される歌詞をさらに際立たせており、音楽としての完成度が高すぎる。
そして、何よりこのアルバムの曲は全編通してものすごく純度が高いというか、言葉にするのが難しいのだけど純粋さの塊みたいに感じるのだ。
さまざまなインタビューでも答えているけど、中野さんも制作段階で重視していたことだったり、小林くんの思いだったりを聴いても、なるほどなと思える。
ラストの前はやっぱりというか、“Flower"というポジパン的なアップテンポな曲なんだけど、この曲も最高なんですよ。
ラストは少し重た目の曲調だけど、聴き終わった後の充実感たるや。
尺としてもほぼ1時間と最近の作品の中では長い方だと思うけど、素晴らしい1stアルバムである。
ライブも当たり前のように最高なので、機会があれば本当に生で体感してみてほしい。
久しぶりに、すごく純粋なものに触れたような気がして、それを作っているのは年上のベテランと同い年のアーティストというのがなんだか勝手に感慨深い。
2月はいい作品が立て続けにリリースされたし、3月、4月もすでに待っている作品がある。
相対的に音楽に割く時間が減っているとはいえ、やっぱり聴いていて楽しくさせてくれるし、時間が少ないからこそいい音楽に浸っていたい。
色々と変化もしていくし、ここからの数年で世界のありようそのものが変わっていくんだろうなと私でも感じる。
それは遠い国の世界情勢とかいう言葉の指すようなものではなくて、ごく身近な社会のあり方も含めてである。
音楽は文化の一つなので、そうした時代性を反映していくだろう。
いろんな人の感じている世界をこういうものでも感じながら、どう生き残っていくかを考えていかないとね。