昨日は私にとってはライブ納めとなる恒例のTHA BLUE HERBのリキッドワンマンであった。
ここ数年彼らにとって恒例となっており、同時に私にとっての恒例にもなっている。
今年は年末に風邪をひき、あわやコロナかと思ったが普通の風邪で、当日までには概ね回復できたのでなんとか行けてよかった。
10月にも東京の中心エリアでは2デイズやっており、このスパンでの単独はあまりない。
しかし、コロナで思うようにライブできなかったところもあってか、その鬱憤を晴らすようなところもあるのだろうか。
ライブでは終始上機嫌だし、昔の曲も積極的にやるようになっている。
前回の単独では、ツアー中セットリストに触れることは御法度、そしてそれをちゃんと守るファンという美しい関係が鮮明になったけど、実際あれはファンとしては現場でびっくりしたかったものな。
彼が30前後の頃に作った曲を多く演奏しているが、改めて”未来は俺らの手の中”の強さが輝いている。
”ウルトラC”は正直舌が追いつかない部分もあったけど、それでもある意味過去の自分に挑むようなセットリストという側面もあったのかなと思う。
いい意味で客体化している感じもして、いずれにせよ当時リアルタイムで聞けなかった私としては、嬉しい限りだ。
とはいえ、このツアーで36曲だったか演奏した直後なので、今回は割と最近の定番セットで組むのかなと思ったが、これまた挑戦的なセットリストだった。
珍しく発表していたので、公式から拝借。
初っ端から”And Again”始まり、まじか。
この曲はいつ聴いてもいい曲だし、しんどいに聴いてもいいし、こういう年末みたいなタイミングで聴いてもいい。
そんな普遍性がある曲で、人生論としてのヒップホップみたいな曲で私は大好きだし、人気曲になっている。
前回のツアーでは全てオリジナルトラックで演奏されたが、今回はビートだけ変えた曲も多く盛り込んでおり、そうした面でのヒップホップ的エンタメを見せてくれたのがまたよかったのよ。
曲が始まってもこれなんの曲だ?というところからなので、まさに彼らの狙い通りの展開。
イズム連発や”AME NI MO MAKEZ”などはビートを変えていたが、”Mainlaine”はオリジナルで演奏。
この曲もまた最高にかっこいいのよ。
そして、個人的に一番痺れた瞬間の一つは”時代は変わる”である。
ちょうど10年くらい前によく聴いていた曲の一つで、まだバチバチな頃のBossをよく表しているリリックだと思うけど、これ今改めて若い子たちにも聴いてみてほしい曲である。
この頃の方が切れ味はあるけど、今の方が確信がこもっているように感じるのは気のせいか。
こんなにしっかりと聴けたのも嬉しいし、この曲を違うメッセージとして発信したかった意志を感じた曲でもあったね。
そして今回はゲストも登場、北海道の盟友コージさんである。
”路上”の例のフレーズを朗々と歌い上げて、しかし演奏したのは”コンクリートリバー”。
もう1曲はコージさんのアルバム曲かな、2曲だけだか演奏してステージを後に。
ちなみに東京へ来たのはあの野音以来だったらしい。
そして今日のハイライトは”New Years Day”からの”未来は俺らの手の中”だ。
この曲はまさかの合唱曲みたくなっているが、でもこんなに違う形で力強い曲として響くというのはやっぱり曲の凄さだよな。
さすがにフルコーラスではなく終わりに向かうところからの演奏だったけど、最近のBossにとっては、ラストのところが今まさに突入しているのかもしれない。
「増えることはあってももう減らない、多分ずっと一緒に歳をとって笑う」という感覚。
前半は若い時ほど強烈に共感できるし、後半に行くほど年齢を重ねることで沁みてくる。
この曲書いたのいつだよ、ていう話だが、やっぱり最高だ。
ここからまた”And Again”のラストを演奏することで、冒頭からここまでの流れを一つらなりの物語として示すような構造になっているから、ここでまたグッとくる。
すでにこの段階で仕上がっているというか、完成しているわけだが、残り3曲はアフターパティーみたいな曲としての演奏かなと思っている。
”バラッドを俺らに”は最近終盤の定番曲になっているが、この曲も聞くほどにいいなと感じるのよ。
”この夜だけは”は、野音以来よく演奏されるようになったと思う。
そしてラストは”今年無事”だ。
個人的には無事だったかどうかわからないが、ちゃんとこうしてライブをみられている時点で無事だったんだろう。
Boss自身もMCで語っていたが、なんだかんだどの曲も色々と一言以上は言いたくなる曲ばかりで、すごいなと思うわけだ。
彼らはずっとアンダーグラウンドでやっているので知る人ぞ知る存在、TVにもでないし、何かのBGMとして使われる曲でもないので、世間的な知名度はないけど、全国のライブハウスで必ずといっていいほど貼ってあるポスターが、ブラフマンと彼らだという。
でも、名曲は売上に比例して生まれるわけではないということを徹底的に見せつけてくる。
また曲の普遍性って何かなと考えると、多くの人がわかるというだけじゃなくて、どんな時代に聴いても、どんな季節で聴いても、どんな年齢の人が聴いても、何かしら受け取ることができる曲なのかなと思っている。
同じことを思うということじゃなくて、それぞれがそれぞれに感じるものがあるという話だ。
いやほんと、若い子たちにも聴いてほしい音楽。
ともあれ、またぞおろ色んなことを考えながら聴いていたので、あっという間に150分が過ぎていた。
毎回この体験が面白くて、没入できている感じが心地よくて、いつも足を運ぶのよ。
その時々に響く曲も違うから、今の自分を発見するようなところもあるしね。
音楽に限らず、アートっていうのは須くそういう性質があると思っているので、彼らの音楽は私にとっては名匠と呼ばれた著名な画家の作品と同じなのである。
来年もやるみたいなので、当然行くわな。
期待通りに素晴らしいライブ納めであったよ。