音楽に限らず全てのことにおいてだけど、とにかくこれまでと違うこと、自分なりに新しいことをやろうとしている人に興味を惹かれる。
一つのことを突き詰めることももちろんすごいことだし、そこから突き抜けていく人は尊敬する。
一方で、私自身の性分のせいかもしれないけど、どんどん変化していきながらもちゃんと結果を残していくような人っていうのも、等しく素晴らしいと感じる。
日本では前者の方が美徳と語られることが多いと思うけど、それぞれに差分なんてない。
音楽でも、ずっと同じ音楽性の中で研ぎ澄ませていく人もいるし、他方でどんどん変化する人もいる。
どちらかというと前者であると思うバンドの一つが、Ogre You Assholeだ。
私はそんなに古いファンではなく割と最近になって聞き始めた方だと思うけど、それでもだいぶ様変わりしている。
キャリア初期はまさにModest Mouseという感じの、エキセントリックなギターが印象的なバンドだったが、出征作となったかの3部作で後期ゆら帝のような音楽に接近、当時若手だったDANとシンクロニシティ的にミニマルメロウというキーワードを言い始める。
その後の2作はどんどん引き算されていって、どこか達観したような音楽になっていた。
そんな彼らの魅力の一つがライブで、音源のようなゆるくて引き算な音とは打って変わってサイケデリックな空気満載の音の渦が轟々と迫ってくるような凄まじい音像を描いていた。
毎年年末のLiquidroomでのライブが定番になっていたが、その中に身を委ねるのが気持ちよかったよね。
セットリストも少しずつ変えてきているが、コロナ明け以降、特に昨年くらいからまた変化が見えている。
なんだかんだ彼らのライブはちょくちょく足を運んでいて、昨年末ももちろん行ったし、DANの野音ライブでも観に行った。
そこで既に彼らの変化は感じられていたが、今回のライブはその一つの結実ではないか、というライブだった。
ライブはサイケデリックでミニマルな展開が気持ちよかったのだけど、最近はダンスミュージック的な反復性がどんどん増して、さらに打ち込みなんかも活用するようになって色々模索しているような印象だった。
それを踏まえてのライブになるとは思っていたけど、今日のライブは本当にストイックだった。
新作EPのリリースツアーという体ではあったので、ライブ序盤は多分そこからの曲だった。
多分というのは、アレンジが効きまくっていてなんの曲かわかんないことも。
音楽的には違うと思うけど、まるでCANのようにひたすら反復とダウナーな音像を繰り出す。
ただでさえ観客を置いてけぼりにするような音楽だと思うが、彼らのファンだけが集まるはずの単独でさえ置き去りにしていくようなライブだった。
アレンジから何からこれまでと全然違うし、ひたすら反復ですよ。
私はそういう音楽も好きなのでこういう展開は嫌いではないけど、さすがにここまで焦らすかとびっくりした。
しかし、ラストに向けての展開は圧巻だった。
ここ最近のラストの定番は”見えないルール”だが、この曲でのカタルシスは素晴らしかった。
時間はトータル90分くらいだけど、すごかった。
いやね、すごかった。
余談だけど、私のすぐ前に外人のお客さんがいたんだけど、こうして海外の人にも響いているのがなんか誇らしいし、ライブ中携帯でカメラを構えていたのは私の目に入った範囲ではこの外人さんだけだった。
せっかく現場にいるんだから、ガッツリ観ないともったいないよね。
とはいえ、こうして動画を撮りたくなっちゃう気持ちもわからなくはない場面ではあったけどね。
せめて母国で布教してくれ。
あまり中身のない記事になってしまうけど、音楽的体験としてここまでぶっ飛ばされた感は久しぶりだ。
1時間半のうち1時間以上観客を焦らしまくる展開、まさにオルタナティブだ。
帰り際に、「途中眠気と戦ってたわ」という声も聞こえたけど、まあそりゃそうだよなと思う。
サービス満載のライブにしてもいいところを、めちゃくちゃ攻めている。
こういうバンドって大好きなんですよ。
ライブ中、つまみをいじる場面もあって、色々やりたくなっているんだろうなと。
こういうのが音楽家だよなと私なんぞは思うわけですよ。
コロナもいい加減常態化して、もうしょうがないよね、というところに来たので、これまでの鬱憤を晴らすような時期だと思うが、ここでそこまで攻めてくる、だから好きなんですよ。
結局ライブ全体の満足度は高くて、多分がっかりしたファンはいなかっただろう。
すごかった、いやほんとにすごかった。
オウガはまだまだ進化していく。