今年は洋楽邦楽問わずライブが盛んに行われているので、あちこち足を運んでいる。
Queens Of The Stone AgeとかElephant Gymとかレッチリとか、海外のバンドも多く来日、嬉しい限りだ。
そして日本のバンド、アーティストも好きなバンドたちを見るわけだが、結構久しぶりに観るメンツも。
筋肉少女帯や8otto、今月はレピッシュもあるのだけど、改めてライブは超楽しいぜと思っているわけだ。
こうして聴いていると、ライブならではの熱量だったり世界観だったりを示すアーティストがたくさんいて、もちろん音源通りの曲を生で聴きたいわという思いもある一方で、やっぱりライブならではの音を出してくれるのもどっちもいいんだよね。
そんなわけで、個人的に音源とライブで印象の変わる日本のバンド、アーティストをいくつか考えてみよう。
意味不明なくらいの手の動きがヤバいLITE
まずはマスロック日本代表LITE。
インストメインの楽曲をやっているバンドで、音源ではロックバンドらしいダイナミズムもありながら、抒情性のあるメロディとアルバムとしての流れも見事なバンドだ。
初期はマイナーコード全開でやや暗いながらにアグレッシブな曲と静かでメロウな曲の展開が良かったが、最近は根っこがひらけたような曲も増えており、最新作では歌だけでなくラップまで披露するくらい多様性を展開している。
中でもポップな曲は、なんかしらんが個人的には必殺技みたいな印象がある。
音源で聴いてもなかなか複雑な音楽なのはわかるが、ライブで観るとまじでびっくりする。
ギター、ベース、ドラム、全部のパートがまあ驚くほど速く動く。
その速度でバチっとタイミングも合っているし、ミスったところはあまり見たことがない。
人間の手ってこんなに速く動くんだなと感動する。
でも、やっぱり演奏はめちゃくちゃ熱がこもっているし、ステージングも含めてエモさもしっかりあって、曲はそもそもいいから最高にかっこいいのである。
テクニックは世界で見ても屈指だと思うが、そんなものを超越した表現が何よりの魅力である。
全身が楽器、バンド自体がまさに音楽なtoe
ポストロックを聴く人なら知らない人はいないであろうこのジャンルの日本代表といえば、やはりtoeだろう。
それぞれがデザイン会社の社長やレコーディングエンジニア、サポートなど個人活動も多いので、活動はマイペースだが世界的にファンベースも持っている。
見た目はぬもっとしたおっさん達だが、その演奏テクが抜群。
なんでもリハなしで、あの曲やろうか、と言ったらバチっと合わせられるらしい。
まじか。
音源ではかなりゆったりめというか、静かな印象で、聴いているとちょっと泣けてくるような時もあるくらいなのだけど、ライブでは感情が爆発したような演奏をする。
表情も何も見ていて最高なんだけど、全身で音を鳴らしているようなそんなライブをする。
どのパートもそれぞれに耳を傾けるといいんだけど、特にドラムが大好きだ。
手数の多いタイプだけど、歌うドラムと言われるくらいさまざまな音が散りばめられておりその流れるようなドラミングは見惚れてしまう。
ドラマー自身も暴れ散らしていて、毎回ライブではつい目で追ってしまう。
よくカッコつけたやつが、楽器は体の一部とかいうことがあるが、彼らを見ているとその本当の意味がわかるように思う。
単純なテクニックとは違う次元での表現を見せてくれる稀有なバンドである。
黒い光が眩すぎるThe Novembers
続いては、今や日本のオルタナロックバンド代表だと個人的に思っているThe Novembers。
Art-School的なダウナーロックにラルク的な壮大さも併せ持つ、ここ数年で爆裂に存在感を大きくしたバンドだ。
初期の頃はVoの小林くんも金髪長髪で客席を睨みつけるような感じ、メンバー全員高身長で無愛想ということもあって、同業者からもビビられていたとか。
ところが最近では髪もさっぱり黒髪、メンバーは変わらず髪は長いし黒服なのだが、気のいい兄ちゃん的なキャラだったり好青年だったりラルクだったりと、個性が前面に出ており、また各自のソロ活動も活発で、すっかり懐の深いバンドになった。
何よりライブでは小林くんも動きまくり、基本的にはギターボーカルなのだが、曲によってはハンドマイクで叫びまくる。
ギターのケンゴさんは曲によっては弓で引いたりノイジーだったり、ベースの高松さんは一際無表情でラルクだが、そのベースフレーズはめっちゃ跳ねていたりぶんぶんに曲を引っ張っていたりとアグレッシブでかっこいい。
そしてドラムの吉木さんは力強いロックなドラミングをかましており、バンドの総体として素晴らしい。
曲自体のスケールもましており、ライブのパフォーマンスも最高。
音楽的にマスよりはコア寄りではあるためまだまだ限定的だが、彼らはスタジアムの似合うバンドだと思うので、しっかりスケールアップしていってほしいところだ。
サイケデリックハードコアノイズ、Bo Ningen
日本ではマイナージャンルでも、世界的にはあちこちにファンのいるのが音楽で、だからこそ逆輸入とかそんな現象もあるわけだが、このバンドもそんな感じだ。
私が彼らを知ったきっかけはThe HorrorsというUKのバンドのインタビューで、それで興味を持って聴き始めたのだが、当時は1stアルバムの日本盤がちょうど出たタイミングだったが、全部日本語で歌っており、それがまずびっくりした。
彼らはメンバー全員日本人だが、留学先で出会ってバンドを結成しておりそのままデビュー、ライブが評判を呼んで今では世界各地のフェスでも常連、日本には年に数回来ては滞在中ソロ含めてあちこちライブをかましている。
音源でもなかなか激しめではあるが、ライブではノイジーさマシマシ、インプロもかましまくりで特に終盤では20分くらいずっと暴れ回っており、狭いライブハウス内を音の渦がずっと渦ましているような空間を醸している。
シンガロングも一緒の振り付けも何もない、ただ叩きつけられる音を各々浴びるだけである。
先日ライブでのアクションについてひと騒動あったが、彼らのライブに行けばそんなことがそもそも問題になりようがないくらいだ。
日本人ながら日本でライブを見られる機会が少ないという意味ではBoris、Monoなどの系譜に連なるバンドだ。
イケメンは不在だがまじでかっこいいので、来日した際にはぜひ観てみて欲しいバンドだ。
爆音すぎるシューゲイザーアイドル、RAY
ここで少し変化球的に、バンド以外のライブを。
私が唯一ちゃんと音源も聴いてライブも行くRAYというアイドルグループ。
最近はdownyの青木ロビン、Mo'some Tonebenderの楽曲提供が話題になったが、そもそもこの界隈で名うてのアーティストが提供しており、シューゲイザー、オルタナ音楽を軸にやっている。
時間の長短はあれど、月に15本以上ライブをやっており、今月は韓国、中国でも開催。
またさまざまなバンドのイベントや対バンも多いが、8月にはまさかのdownyと明日の叙景(とあとひと組)との対バンが決定。
ただでさえライブ頻度の低いdownyがアイドルと対バンする日が来るとは・・・。
この作曲陣がかなり協力ということもあって何よりもまず曲がいい。
そうした話題性もさることながら、ライブではとにかく音がでかい。
そんな中彼女らは全部生歌なので、その音圧に負けまいと時に音程が不安定になってしまう時はあるのだけど、それ以上に熱量が乗っかってくるのがいい。
またバンドと違って音源自体はオケではあるが、ライブ用に多分低音を強めてビート感が高まっているように思うのだけど、曲によってはダンス色の強いものもあり、最近ではモッシュになるくらい盛り上がるようになっている。
ダンスという要素も私には新鮮で、見ていて面白いし、そこに肉体性が宿るんだなと最近では感じるようになった。
曲によっては振り自体も結構覚えたりして。
流石に踊れないけど、曲を聴いているとそのシーンが脳裏に浮かぶ。
普段バンド音楽ばかり聴いている私のようなやつが聴いてもいいと思えるようなグループで、たまに無料ライブとかもやっているのでぜひ機会があれば覗いてみて欲しい。
ちなみに賛否あるアイドルのコールだが、個人的にはバンド音楽ではみられないアイドルライブらしい景色だなと思って、ちょっと面白く感じている。
殆ど音源詐欺、音像渦巻くOgre You Asshole
個人的に音源とライブが全然違うじゃん!と1番の衝撃をくらったのがOgre You Assholeである。
初期はModest Mouse譲りのエキセントリックで直角なギターの印象的な音楽だったが、中期?以降は後期ゆらゆら帝国の名前も挙がるような引き算でゆったりした一聴するとまったりしたチルな音楽だった。
ところがライブへ行ってびっくり、まるでステージから音の渦がぐんぐんと迫ってくるような音だった。
確かLiquid Roomだったと思うけど、本当にヴィジュアル的に渦が見えるくらい強烈に印象的だった。
曲自体が別にライブアレンジで別物になっているわけではないし、ギタフレーズだったりベースだったりも音源と同じではある。
でも音が全然違うのだ。
まさにライブの体験というのはこういうものだよなという気持ちよさがある。
ちなみに最近はリアレンジが効きまくった感じになっているので、さらにとんでもないことになっている。
サイケデリックで宇宙に飛んでいきそうになってきている。
そんなに音源は出していないが、旧曲がアレンジ変わって別の曲になっているので、そんなことが問題ではなくなってきている。
なんなら初期曲を今のスタイルでリアレンジするのも聴いてみたいので、それだけであと5年は余裕で楽しめるだろう。
今後もスタイルも変わっていきそうなので、ぜひ今からでも観て欲しいバンドである。
中年が燃える!これぞロックンロールな8otto
先日久しぶりに観て、これがロックンロールだなと感じたのが8ottoだ。
1st アルバムのプロデューサーがStrokesの2ndのエンジニアという触れ込みもあり、デビュー当時は和製Strokesなどとも呼ばれていたくらい、どちらかといえばクールな印象が強かった。
まあ、改めて聴き返せばヴォーカルの歌い方によるところが大きいようには思うが、音数は少なめ、ドラムヴォーカルとあって手数も多くないポイントを抑えたドラミング、ギターの絡み方などある程度イメージとして共通する部分も多かったりする。
英詞で歌ってたしね。
しかし、ライブの熱量ってこういうことかということを、彼らのライブを観ているとつくづく思わされる。
曲は全体的には少し音源よりも速くなっているケースも多いが、その際たるものが"Counter Criation"という曲があるのだけど、この曲のギターイントロがめちゃくちゃかっこいい。
この曲だけじゃなくて、全体的に言ってギターリフがくそかっこいい。
ギターリフだけじゃなくてベースは他の楽器と比べてもダンサブルなフレーズが多くとにかく跳ねていて、ライブでのダイナミズムというかグルーヴは間違いなくベースが作っている。
そしてドラムはシンプルなセットでタイトなプレイ、そこにヴォーカルが叫びまくる。
ドラムヴォーカルなんですよ、このバンドは。
ドラムセットを離れて客席ダイブは昔からのお馴染みの光景、先日のライブでも見事に舞っていた。
こんなライブいつまでできるんだろうと心配になる一方で、どうしてもそうなっちゃう感じがたまらないのよね。
曲自体はそもそもどこから切っても彼らの曲で、日本屈指のロックンロールバンドだ。
最高に楽しいんだけど、同時に泣きそうになるようななんともいえない感覚を与えてくれる。
それこそScoobie Doと近しいメンタリティを感じるかもしれない。
関西のバンドで、それぞれが仕事もしているのでライブの頻度は高くないのだが、機会があればぜひ観てみて欲しい。
ロックンロールが好きなら、そのバイブスにやられてしまうはずである。
音楽でしか生きられない人たち、Analogfish
こちらも8ottoと同じく、ライブだとその熱量の伝わり方が明らかに違うのがこのアナログフィッシュだ。
デビューしてもう20年以上のキャリアを誇るバンドだが、今もコンスタンスに音源は出しており、その中で昔の曲のリアレンジもやっている。
ライブも頻繁に行っており、新曲だったりリアレンジだったりも、ライブでまずは披露されることが多く、ファンとしてはそれだけでも楽しかったりするし、それが後々パッケージになった時にアレンジが変わっているのも面白いところだ。
ただ、それ以上にやっぱりライブである。
toeとは違うタイプだし、8ottoとも違うタイプだけど、彼らもやはり音楽でないと生きていないタイプのひとたちなんだろうなと毎回思う。
なんていうか、曲に体重が乗っているし、タイミングや時期によってセットリストの傾向も変えてくる。
パフォーマンス的にはベースヴォーカルが圧倒的に目立つんだけど、ギターヴォーカルも飄々とした中に明確に意志を持って伝えてくるような歌だったりする。
この人たちを観ていると、本当に音楽が軸にあって、それを表現することが人生なんだろうなというように思えてしまう。
そもそも曲が大好きなんだけど、ライブで生で演奏されて歌われるその全てが体に染み込んでくる。
いつでも私を癒してくれる。
30過ぎてから聴くようになったバンドだが、ずっと私のそばにいる楽曲だ。
ずっとライブし続けて欲しいバンドの一つである。
This Is Life Story, Tha Blue Herb
最後はヒップホップの中で唯一ちゃんと聴いているTha Blue Herb。
界隈の人にはもはや説明不要の今も現役バリバリのジャパニーズヒップホップのレジェンドだ。
デビュー当時からインディペンデント、ずっと自分たちで道を切り開いてきた。
MCのIll-Bossttinoはもう50を過ぎているが、今なお現役だ。
初期は全方位に牙を向きながらも同じ価値観のやつには共闘を呼びかけるようなリリックが目立ったが、スタンス自体は今も変わっていない。
年をふるごとに表現はアップデートされていくため、それを日和ったとか丸くなったと言って批判する人も少なくないのも事実だ。
だけど、少なくとも日々を懸命に生きている人からすれば、その言葉は刺さって仕方ないはずだ。
止まるな、やるしかねぇんだ。
彼らの音源の完成度はジャンルによらず全方位で評価されて久しい。
しかし、やはり本領はライブでこそ発揮される。
毎度単独では2時間半超えは当たり前、30曲以上をひたすらラップし続けるようなライブを今もやっている。
しかもただ録音通りの曲じゃなくて、ビートジャックやちょっとアレンジを加えたり、マッシュアップでやってみたりとツアーごとに色々とやってくれる。
流石に声は苦しそうな場面も増えてきたが、それでもここまでやりきるんだから、すごいとしか言いようがない。
彼らの単独ではスマホカメラを向ける人はいない。
なぜならそんな暇もないくらいBossが語りかけてくるからだ。
せっかくならその場で体験しないと勿体無い、そう思わせるライブをずっとやっている。
終始叩きつけられる言葉の数々が、その時の自分のコンディションや状況によって刺さるものが変わるのも面白いんだよね。
ああそうか、今は私はこれに悩んでいるんだなとか、そんな自分発見もあったりするから面白いのよ。
Bossが歌うのは彼自身の人生だ。
でもその表現は普遍性を持って発信されている。
3rdアルバムのタイトル通り、まさに『Life Story』だ。
30代後半過ぎたあたりから、このシンプルな何気ない言葉が常に頭の中によぎるようになって、結局のところ何が起こっても、誰かとのささやかな絡みも、全てLife Storyの一部で、きっとこれからも地続きに起こり続けていく何かの一部なんだろうな、みたいなことも思うし、人と話をしていてもそんな捉え方をするので、寛容にもなるよね。
同じ曲でもその時々の自分によって受け取り方が変わる。
まさに共感は自分の鏡だなとつくづく思い知らされる。
いつでも私を奮い立たせてくれうる。
そんな活動のスタンスを表すような曲たちは、20代後半以降の私にとってはまさに私にとっての戦いのテーマ曲だったね。
じじぃになってもラップして、その瞬間を切り取っていて欲しいなと思う。
ライブは体験、音楽の本質は体験だ!
最近ライブに行くたびに発見があって、しかもその発見はアーティストの新たな面ではなく自分自身の中だったりする。
私は絵を見るのも好きだし、プロレスを観るのも好きなんだけど、中でも刺さるものと刺さらないものが当然ながらある。
それを掘り下げていくと自分自身が見えてくるので、それが私にとっての大きな勝ちなのだ。
もちろん直感的にとにかく楽しませてくれるものもそれがそれで価値がある。
だけど、私のような偏屈ものにはその瞬間だけで終わるエンタメでは物足りないのだ。
ポジでもネガでも何かしら残して欲しいし、それがポジならなお最高という世界だ。
自分にとってポジなものを接種するために、今日もチケットを抑えるのである。
まあ、何はともあれ生で観ることはただの鑑賞を超えた体験になる。
ぜひ行ける時にはいろんなライブに、引き続き足を運びたいですね。