私はやはり基本的にはいつまでのクソみたいな感情を抱えているのは好きではないらしい。
なぜならそれをつづけると本当に死にたくなるから。
過ぎてしまったことはもうしょうがない。
このクソみたいな年の瀬だが、せめて気分を盛り上げてくれそうな個人的年末ソングを考えてみよう。
Tha Boss × 般若 "New Year's Day"
まずはTHE BLUE HERBのTHA BOSSと般若のコラボシングル。
彼にしては珍しくどストレートなタイトルで、内容もわかりやすい「1年間おつかれさん」な曲だ。
はっきり言ってクールな曲じゃないんだけど、でもこういうわかりやすい曲、肩の力を抜いて聴ける曲もたまにはいいものである。
曲自体はBOSSパートと般若パートで分かれているのだけど、般若パートは逮捕の話なので残念ながら感情移入はできない。
そこはちょっと難なのだけど、この曲で好きなのが「手付かずの次の一瞬が待ってんだ」というところで、特に前半部がいいなと思っていてね。
残念ながら今年は行けなかった年末ワンマン、この曲がしばらくはラストの定番だったんだよな。
明るいし、いいことばかりじゃなかったけど、でも心機一転、また仕切り直して頑張ろうぜ、という感じが年末にはまさに良いのではと思う。
社会人になると学年なんかあるわけでもないし、自分で何かしら楔を打たないとただただ同じような時間が流れてしまう。
ひたすら仕事に追われるような状態というかね。
そんな中で等しく訪れる季節の知らせはこの年末年始だけなんだよな。
だからこそ、ここを一つのタイミングとしておくのは個人的にも結構あってね。
先にも書いた通り少しリリックが人を選ぶけど、戦っているあなたにはおすすめな1曲である。
Yogee New Wave ”How Do You Feel?”
続いては曲のムードが年末感な1曲。
1年の中でも私は12月中旬から年末までのこの短い期間が一番好きなのよね。
寒さのピークは2月だけど、まだギリギリ体が寒さに慣れる前だし、年末に向けて徐々に店じまいのように街全体も静かになっていくような空気感がすごくいい。
この時期に思い出す絵画もあって、東山魁夷という人の『年暮る』という作品で、日本的街に雪が降る風景を描いているのだけど、色使いも含めて静かな空気感を感じさせる美しい作品である。
そんな絵ともリンクするのがこの曲である。
今は雪も降らなくなって久しいが、私は子供の頃は年末年始は祖父母の家で過ごすことが多く、祖父母の家は山の中にあって雪が降るのが常であったので、この時期の雪って原風景なんですよね。
雪国ほどは流石に降らないけど、ちょうど『年暮る』くらいの感じだったんですよね。
で、曲であるがイントロから素晴らしい。
「少し、ごめん休ませてくれないか、重い荷物おろしてさ」という一節が先にも書いた私にとっての年末感なのよね。
「そしたら春の嵐が来る」というのも、正月の賑わい、暦の上でも春である。
特に個人的にグッと来る一節が「笑いは笑顔が伝えるから、悲しみは僕に任せてさ」というところ。
とかいいながらここの前のところも素晴らしくて、まあこの曲は歌詞も曲も完璧ですよ。
ちなみにこの曲のPVは公開はまさにこの時期だったのだけど、私以外にもこの曲の年末感を感じていた人もたくさんいたようで、映像的にもめちゃくちゃイメージぴったりでこちらも最高だ。
ヨギーの中でも屈指だと思っている。
The Mad Capsule Markets "公園へあと少し"
こちらは少し古い上のハードコアパンクの頃のマッドの名曲だ。
基本的には対社会、対システムで攻撃的な曲が多かった中で、非常に珍しい叙情的で静かな曲である。
とはいえ後半は爆発するわけだけど、こういうマッドの内省的な歌詞の曲っていいんですよね。
「冬の朝1人で歩いた、曇り空と霧の中」と始まるのだけど、晴れてないんだよな。
公園へ向かう道すがら、1人で歩きながらあれこれ思い出しながらそれを噛み締めてみたり、懊悩してみたりという心象風景を描いている。
そしてサビでは「このままでいいのさ、歩き続けるだけでいい。飛び出そうなんて思うな、その先には何もない」という、一見肯定的なようでその実諦めたような言葉が出てくる。
これでいいのか、何か違うのか、そんな自問自答で行ったり来たりしているような表現だ。
私もいい年になって相変わらずこういう行ったり来たりを繰り返す。
仕事でもなんでも自分の正しさを確かめるためにできるだけ理論や根拠を固めようとはするけど、その集めたものも正しいのかどうかはわからないしね。
生き方もそうだし。
でも、そのまま歩くしかないですからね。
自分の中の青さみたいなものがいまだに抜けきらないということも思い知らされるので、事あるごとに振り返る曲かもしれないね。
cero "Narcolepsy Driver”
次は少し経路の違う曲を。
年末年始、田舎へ帰る時は父親の運転する車に乗って2時間くらいの道のりをいくのだけど、子供の頃は気楽にわがままを言って、眠くなったら寝ていればよかった。
今は親になったわけではないが、帰省のために高速道路で渋滞と戦う人たちをみるにつけ、大変だよなと思うわけだ。
この曲のタイトルのナルコレプシーは睡眠障害の一種で、ずっと眠くてどうしようもないという状態のことを言うのだけど、社会人になって思うのって、ちゃんと寝てもスッキリ起きられることって少ないのよね。
私はデスクワークメインということもあって、肉体疲労はないけど変なところが痛かったり、眠いのに眠れなかったりすることが多く、結果日中もずっとぼんやりしてしまうこともある。
そんな中で連休に入ると、そんなぼんやりとしたものと戦いながら今度は家族を乗せてそうして車で走っていく人たちを思うと、この曲がなんだかしっくりくるんだよな。
曲自体は暗くもないし、批判的でもなくてむしろゆったりいい感じの曲なので、余計に個人的にはハマって聴こえる。
家族連れのお父さんお母さん方には、ぜひ交通安全にも気をつけて、楽しい年末年始を演出してほしいものである。
The Coral "After The Fair"
続いてはデビュー当時から職人的な名曲製造バンド、The Coralの曲なのだけど、サイケデリックやフリーキーなどとも言われていたが、他方でアコースティックな曲の美しさよ。
彼らのこの手の曲はほんのり諦めのようなものもありつつ、でもそれは仕方ないから次をみていこうというようなメッセージもあると私は思っていて、だからいいのよね。
悲しいことやしんどいことはあるけど、そいつにずっと絡め取られ続けていますかと。
「Look to Tomorrow Before It's gone」という一節が印象的で、詩的で美しい表現だと思う。
そして何よりやっぱり曲自体が素晴らしい。
心穏やかに過ごしたい日にぴったりである。
余談だけど、この曲の収録されているアルバムは個人的に彼らのキャリアでも上位にくる素晴らしいアルバムだと思っているのだけど、少し前まで活動休止をしていた。
理由はメンバーの脱退に伴うものだったんだけど、再開後1作目は暗いトーンのアルバムだったんだよね。
そこからこのアルバムでは全体に明るくて、彼ららしいグッドメロディ満載となった。
以降もハイペースでアルバムを出しており、どれもいいのよね。
そもそも才能のあるバンドなので、引き続き最高な曲を出してほしいなとファンとしては思うのである。
Analogfish "Moonlight"
最後はこちら。
なぜか最近アナログフィッシュのこういう曲を聴いていると泣けてくる。
ダンサブルでポップな曲調に反して歌詞は非常に内省的なところらはじまって、色々と悩んだり後悔したりするような内容だ。
でも、終盤に向かって徐々にそれが外に向かっていくような感じがあって、曲調も伴って結果ポジティビティに溢れていく。
自分の中の変化によって、街そのものが輝いて見えるような表現もいいんですよね。
曲そのものには季節感とかはないんだけど、過去から未来へ目線が映っていく感じが、こんな時期にもぴったりではないかと勝手に思っている。
レビュー短めになってしまったけど、多分私のなかの感覚に近いところで共感しているからなんだろうなと思う。
共感っていうか、あくまで私がそう感じたというだけだけどね。
なんとなく思いついていくつか挙げてみて改めて思ったけど、私にとってこの年末年始ってやっぱり一つの楔なんですよね。
いいこともあれば嫌なこともあるし、楽しいこともあれば苦しいこともある。
どっちがより多かったかまではもう覚えていないけど、少なくともネガティブなものを引きづり続けると私は死にたくなるので、そうならないように音楽も聴きながら自分をモチベートしていくのであるよ。
年明けからはまたあれこれと予定を入れているので、休みとしてたのしみつつ、2024年はこれで諦めて次を目指そう。