40手前でも独身でちゃんと働いているので、幸い趣味に使う金もちゃんとある。
学生の頃から好きな音楽ライブは引き続きよく足を運んでおり、最近でも海外からの大物ライブから日本のインディーバンドまで、幅広に聴いている。
PortisheadのBethの単独も、12月だが早々チケットを確保。
5月はCraftrockにPlasticzoomsのラストワンマン、Luby SparksもJazzイベントで単独があるらしく、チケットをゲットしたいがどこで買えるのかがわからない・・・。
6月にはアジカンのフェスでくるBeckもみるし、Lillies And Remainsのコンセプチャルな2Daysもゲット。
もう終わったが4月は2週続けてSynchronicityもあって、実にいい感じだ。
そんな中でアイドルのRAYも単独だったり、イベントだったり、いくつかチケットを押さえており、私の中で定番ラインになっている。
で、割とバンドのライブばかりを観てきた中でも客層だったりノリ方だったりは色々違いがあるなと感じるんだけど、客層で言えばバンドTにクビにタオルを巻いてサークルモッシュしたがるザ・ロックライブファンみたいなのもいれば、おしゃれながらある種の定型化されたような世田谷系みたいなファッションのもいる。
割と女の子は普通っぽい格好の子が多く、男と比べると現場ごとの差分は意外と小さいかもと思っている。
まぁ、ドームクラスのライブに行けばそれなりに着飾ったような子もいるけど、ライブハウスなので正解だろう。
ノリ方みたいなところで言えば、声援がとんでもメンバーの名前を呼ぶとか、たまにイタイ発言を飛ばす人もある。
あとはアーティストによってはコール&レスポンスや、定番の合唱みたいなものもあるけど、概してステージとのコミュニケーション的な意味合いのものが多いように思う。
そんな中で、やはりアイドルのライブってちょっと独特だよなと思ってしまう。
一応断っておくと、単にアイドルライブに最近まで行ったことがなかったので、私のとっては新奇な体験だ、という話である。
ライブについてはももクロとPerfumeも観たことあるけど、サマソニの幕張メッセ会場だったので、あったとしてもわからないから、結局サンプルはRAY一つなんだけど、多分こういうものなんだろうなという想定で以下書いていく。
RAYでも、1stからの曲だと大体の曲で定番のコールがあるようで、基本的にはメンバーがソロで歌うパートに合わせて何か一言添えて名前を呼ぶというものである。
そのバリエーションやタイミングがファン、もといオタとしての腕の見せ所なのだろう。
そして人によるところはあるが、ダミ声のザ・アイドルコールみたいなものもあり、それぞれが個性を競っている感もある。
狭い会場でのライブが多いので、すぐ隣でそれを展開する人に遭遇することもあるが、いまだに何を言っているかわからないものもある。
ともあれ、わかりやすく聴き取れるものもあるのだけど、その内容を聴いていてふと思うことがあった。
まず、当然だけど基本的にポジティブにめっちゃ褒める。
褒めるといいながら、基本的には「可愛い」的なことを絡めながらなんだけど、とにかく全肯定である。
特にわかりやすいなと思ったのは”秘密がいたいよ”という最新アルバムに入っている曲だけど、歌詞はある種のもどかしさみたいなものを歌っていると思うけど、曲自体も非常にポップで彼女たちの標榜するシューゲイザー的なジャキジャキしたギターがしっかり鳴っている。
作ったのはクライフのハタさんなので安心のクオリティだ。
で、この曲のAメロのところで飛び出すのが「可愛い可愛い超可愛い、〇〇は可愛い超可愛い」と、言ってしまえがひねりも何もないが却ってそれが面白い。
またサビのところで「いたいよ」という歌詞と共にかなり激し目の振り付けのパートがあるのだが、ここではファン、もといオタどもも「俺も〜〜」と叫ぶ。
楽しそうに叫んでんじゃねよとか思いつつもなんか笑ってしまう。
微笑ましいという意味である。
また、コールで一番関心したのが、downyの青木ロビンが提供した”火曜日の雨”のもの。
容赦ないまでのロビン印なので、曲のテンション的にもオタたちの全肯定コールなど挟む余地がない。
そこで彼らはイントロのギターパートを歌うという暴挙に出た。
その様はまさにQueens Of The Stone Ageの"No One Knows"という曲の盛り上がり方と同じなのだ。
ゴリゴリのアメリカンハードロックなバンドだが、冒頭のギターに合わせてファンが歌っていうのはわかるだろう。
ギターリフがめちゃくちゃかっこいいバンドなのだけど、まさかアイドルの現場でこれに遭遇するとは思ってもみなかった。
どっかに何か差し込んでやるとばかりの意気込みを感じざるを得ない。
ただ、残念ながらこれは毎回聴くことはできない。
いずれにせよ、バンドの方と比べて演者がどうこうよりとにかく自分たちが楽しむみたいなスタンスが強いのかな、と感じるのである。
こうしたコールに対して、非アイドルファンからは不評であるらしく、一部ではあれはなくしてほしい、と言った声も動画のコメント蘭に散見される。
彼女らはバンドとの対バンイベントも結構やっているので、そういったところで知ったファンなのだろうけど、確かにバンドのライブではあまり観られないものであるので馴染みもない。
それに、見方を変えれば別に聞きたくもないオタクのダミ声を聞かされて、肝心のメンバーの歌声が聞こえにくいなどのノイズになる部分もあるのは確かだ。
もっとも、これについては大声で歌い出すやつはバンドライブでもいるし、なんならモッシュ・ダイブなんて半ば暴力的な行為なので下手な奴がやるとマジで怪我をすることもあるので、結局それぞれの会場においてそれぞれの文化がある、というだけにすぎないのである。
むしろアイドルライブではそうした暴力性はないし、賛否はあるにせよ基本的には肯定的な言葉が飛んでいるだけなので、私はそれも含めて楽しんで観ている。
流石に真横に来たときは場所どりミスったな・・・と思うことはあるが、ステージも見ずに、喉が千切れんばかりに叫んでいる姿をみるともはや風物詩と思えるのである。
なんならRAYのライブはとにかく音がでかいので、ほとんどの場合はかき消されて聞こえないしね。
にも関わらず、肝心のアイドルたちの姿を見ずにひたすら濁声で「可愛い可愛い超可愛い!」とか叫んでいるのはある種の生き様すら感じるところだ。
この手の地下アイドルと呼ばれる子達のコアなファン層は、おそらく40代以上の男性である。
で、たまたま近くにいたオタの会話を漏れ聞いた時に印象的だったのがあるのだけど、2人づれで来ているらしいうちの1人はやや無愛想な感じながら、アイドルライブに来ていることについてこんなことを言っていた。
「寂しいからオタクやってるんでしょ」と。
それを言われたもう1人は、それまでは何か言い訳のようにあれこれ言っていたが、その瞬間うっすら寂しそうな表情を浮かべて黙ってしまったのがさらに印象的であった。
ライブ後には特典会といって、チェキをとったり少し話をしたりするところがあり、タイムテーブルにも必ず記載されているし、アイドルにとっては重要な収入源になっている。
こうしたシステムは言ってしまえばキャバクラと同じで、ボトルなんぼ入れるかで彼女らの活動を応援しているという形になる。
流石に順位とかは出てこないにせよ、メンバーによって偏りも出てしまうのが実際だろう。
この辺りは某AKBとか坂道系も規模感は違えど同じなので、現在のアイドル産業がそういう構造になっているのはもはや認知されて久しいだろう。
それはそれとしつつも、私が感じたのはもちろんオタク側にとっては若くて可愛い女の子と話したり握手したりできるという下心みたいな物はあるにせよ、他方で承認欲求の表れなんだろうなと思う部分もある。
自分のことを知ってくれている人がいる、ということをわかりやすく感じられるのだろう。
そしてさらに突き抜けていくと、とにかく誰かの何かを応援したい、たとえ自分が影の存在だとしても、みたいなボランティア精神に近い感覚の人もいるんだろうなと思う。
先にも書いたけど、アイドルの応援コールはひたすら存在の全肯定だ。
それを言われるアイドル側も悪い気はしないだろうし。
自分には何もできない・・・という人間的な自信のない人にとっては、応援することだけでも自分にもできることがある、という救いになっているのかなと。
私でも好きなバンドでもまだまだ商業的に成功していないバンドなどは着る予定のないTシャツ買ったり、CDは物販で直接買ったり、お布施のつもりでそんなことをやっていることもあって、行動の本質は同じかもなと思う。
私は音楽を聴くのが好きだし、割と本当に音楽に救われる経験をしているし、だからこそそんな好きだと思える音楽を生み出してくれているアーティストは少しでも報われてほしいし、ずっとそんな曲を作って、ライブをやってほしいと思っている。
自分のことを認知してほしいとは思っていないが、応援しているわけである。
ライブにいく動機だったり、楽しみ方だったりは人それぞれだし、音楽性やアーティストによっても千差万別あってそれぞれに面白かったり、自分には合わなかったりがある。
いろんな会場に足を運ぶと自分なりの価値基準もできて素直に楽しめると思うのである。
合わないなと思ったら行かなければいいのだから。
ちなみに私は日本のメロコア系とかロッキンイベント系の感じは好きになれなかった。
アーティストではなくファン層とか会場の雰囲気とか、アイドルオタクより遥かに気持ち悪・・・やめておこう。