秋晴れという秋晴れな日が続いている。
日向に出ればやや汗ばむくらいなんだけど、日陰に入るとひんやりとしてやや肌寒い、そんな気候が実に心地よい。
そりゃ洗濯でもしようという気にもなるんだけど、昨日全部しちゃったからね。
また、どこかへ行こうかしら、とも思うんだけど、いかんせん金がない。
電車賃すらケチりたい現状において、自転車でいける範囲はたかが知れているしね。
そんなわけでどうしようかしら、なんて考えながら秋を楽しんでみる、そんな日曜の朝である。
こういう心地よい気分のときには、いかなネクラといえども爽やかな音楽だって聴きたくなるのである。
別に世界を呪っているわけではないので。
最近そんな心地よさを与えてくれる音楽といえば、カナダの良心「Arts & Crafts」周辺の音楽なんだけど、その中でもFeistのアルバムは非常にいい按配である。
昨年出された2ndはグラミー賞ノミネートや、iPodのCM起用の効果もありかなり世間的な認知度も上がっただろうが、最近聞いているのは1st"Let It Die"のほうである。
はじめはフランスでリリースされたらしく、ボーナストラックにはフランス語で歌われている曲も入っている。
フランスといえば、ボンジュール、て感じで、なんだか品のあるお洒落感がつい連想される。
このアルバムには確かにそういう気品のようなものは感じる。
非常にローファイというか、あまり現代的でないプロダクションで、このゆとり感がまずすばらしい。
フォーキーであり、ややロックであり、時にエレクトロ的な部分もあったりと、なかなかいろいろなものを感じさせてくれるんだけど、この人の魅力にとってあまりそういったところは重要でない。
Feistという人の一番の魅力はなんといっても声である。
別に特別歌唱力が高いわけでもないし、広い音域による表現の豊かさのようなものではない。
声質的にはややハスキーがかった感じで、伸びがある感じでもない。
でも、とてもきれいでやさしい印象があり、本とに心癒される声をしている。
昔はパンク系のバンドをやっていたらしいが、そのときのどを痛めてしまい、一時期歌えない時期があったという。
それからしばらくして、人のアルバムにゲスト的に参加しながら歌っていたのであるが、その中でも有名なものでいえば、やはりBroken Social Sceneであろう(個人的に)。
もともとBSSが好きであったんだけど、そんな中で女性ヴォーカルがやけに気になって、調べるとFeistという人で、この人はソロで出しているということがわかり、そこから聴くようになったのである。
BSSは音楽的にかなりツボで、ヴォーカルをとているのも複数人いるのであるが、その中でも彼女の声は引っかかるものがあり、よかったのである。
まあ、単に自分の好きな感じだったというだけかも知れないけど。
ちょっとハスキーがかった女の人の声って好きなの(たとえば、めざにゅ~の杉崎美香さんとかね)。
話が少しそれたので、曲について少し。
全般的にはもう少し前の時代の、シンプルで音数の少ないフォークというか、カントリーというか、まあそこはよくわかんないけどそう言う感じで、ぶっちゃけ10代の子には物足りないかもしれない。
歌詞の内容はラヴソングなんだけど、ちょっと独特の表現もあったりして、読んでいると面白い。
で、アルバム中でも特に好きだなあ、というのは4曲目の"One Evening"である。
やや90年代くらいの歌謡曲的なメロディなんだけど、ちょっとアダルトチックな香り立つ曲である。
この曲はYouTubeなんかでもPVが観られるから、よければ見てみてね。
また、本編最後から2曲目の"Inside and Out"はひときわ明るい調子の曲であり、全体のトーンに違った色をもたらしている。
その次の"Tout Doucement"の囁くような歌い方も、なんだか子守唄のようなやさしさを感じさせる曲である。
で、いきなり最初に戻っちゃうんだけど、1曲目の"Gatekeeper"という曲は、ややさびしい内容の歌詞なんだけど、陽だまりでボーっとしながら聴いていると世界を染めてしまうような、染み入る1曲である。
そのほかの曲についても、まあはっきりいって良い曲ばっかだから書きたいくらいなんだけど、全曲レヴューに耐えられるだけのヴォキャブラリーが私にはないのが悔やまれる。
この人のアルバムは、あたかも映画音楽のような雰囲気がある。
お洒落ともいえるし、ものすごくムードを持っているといえる。
聴いていると、何気ない景色まですごく良い景色に思えてくるような、そんな力のあるアルバムである。
こんな天気のよい日に、更にその心地よさをあげるためのBGMとして、とてもお勧めな音楽である。