音楽放談 pt.2

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今なお輝く深みと広がり ―R.E.M

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現代は早い時代だと言われる。

情報の飛びかう速度、消費される速度、歩く速度、成長の速度、飽きる速度、などなど、何かにつけせわしない時代である。

昨日は真実として伝えられていたはずのものも、今日になればあっさり情報が翻る。

もちろん伝える側の問題もあるけど、多少の間違いはあってもとにかく早くないと消費者が情報そのものを必要としなくなってしまう。

情報だけじゃなく、パソコンでも形態でも、ほんの一瞬の機会を逃したら、もうすぐに古いものになってしまう。

売る側、作る側としては厄介なことこの上ない。

しかし、同時に消費者の側も、実はかなり困惑しているのではないだろうか。

次から次に現れては消える最新機器達、あるいはツールにしろ何にしろ、手に入れるのに苦労した瞬間にもう時代遅れが確定するような状況である。

そんな中にあって、一体我慢がどれほどの意味を持つのだろうか、なんて思わず思ってしまう。

消費者にとっても、もうすこし回転率が低い方が何かとありがたいように思うのだが。


それにしても、こうして需要側も供給側も、そこまで望んでいないはずなのに、どうしてこんなに時代は早くなってしまったのか。

一体誰が、こんなに急かしているのだろうか。

それはわからないが、きっと社会とはそういう得体の知れなさを孕んだものなのだろう。

モノなのか、あるいはコトなのかもしれないが、いずれにしろ不思議な事である。

まあ、恐らく求められているのが「特定の」何かではなく、面白い「かもしれない」何か、だからかも知れないけどね。


こんな時代にあっては、音楽も当然のように早さがつきまとう。

去年のベストにしろ何にしろ、一体いつ出された音楽なのかはもはやわからない、なんてザラである。

ただでさえ選択肢も多いし、同じアーティストの中でも色々な変化なども起こる為、着いて行くのも結構しんどい。

あんまりしんどいので、最近は無理にリアルタイムで追う必要もないかな、と思っている。

何せ今の流行は1ヶ月先にどうなっているかもわからないし、何より自分自身一つ一つを十分に味わっていられないのであれば、急ぐだけ無意味でありそれこそ本懐を損じる可能性だってある。

一方、アーティストサイドにしても、せっかくこだわって一生懸命作っても、勝手に時代遅れにされてしまったり、あるいは前と基本的には変わらない、などという本質とは関係ないところで批判を浴びる事も有る。

それが時代性云々ということになるんだろうけど、彼等にとっては至極迷惑と言うか、そんなコトで批判されるのは不条理だし、納得できないだろう。

最近若手バンドの解散、脱退といったニュースがよく流れる。

一方でベテランバンドが再結成した、なんてニュースも多い訳で、そういう対比というもの実は結構興味深いのではないかと思う。

いずれしろ、自分の好きな事をする事すら、ともすればままならないような時代、社会であるとは思う。


随分前置きが長くて申し訳ないが、そんな時代にあって、なお一層その存在感に輝きが出てくるのが、ご存知R.E.Mではなかろうか。

90年代のオルタナの先駆けにして、現在も尚精力的に活動するバンドである。

キャリア通じて音楽性は、強いて挙げれば2000年前後のドラマー脱退による打ち込みの導入くらいで、大きな変化はしていない。

彼等の曲にはシングルヒットは少ない。

従って、キャリアは長いが長いだけ、というとそういう事もない。

それどころか、アメリカではアリーナクラスを平気でフルにしてしまうくらい人気のあるバンドである。

そういう意味でも非常に特殊な立ち位置に居るバンドである。


また、音楽性の転換もなく、言ってしまえば同じような事を続けているとも言えるが、それでも尚輝きを失わないのは、一重にその楽曲の良さである。

基本的にはポップで、メロディがあり、演奏もアレンジも特徴が有り、聞けば一発で彼等とわかる。

同時に歌詞に目を向ければ、時に政治的に、時に人間的に、時にファンシーに、時にナンセンスにと幅広い世界が広がっている。

そしてその歌詞を紡ぐヴォーカル/マイケル・スタイプの独特の声が合わさると、もはや唯一無二のバンドとなる訳である。


そんな彼等のデビューアルバム「Murmur」を最近また聞いてみたのであるが、これがいい。

メジャーアルバム以降に買ったのであるが、買ってすぐはちょっと物足りないような印象を受けた。

一番の理由は音源の古さによる音の弱さであろう。

その当時も色々手を出していたので、第1印象でピンと来なかった奴はしばらく聞かなかったので。

しかし、今改めてキチンと耳を傾けてみると、今も変わらぬR.E.M.節を聴く事が出来、同時に若さゆえの疾走感や瑞々しさ、あるいは色々やってみている感がでており、非常に良いアルバムである事に気がついた。

わかりやすさで言えばキャリア随一かもしれない。

バンドっぽさも含めてね。

今以上にはっきりしないマイケルのヴォーカルも健在だし、当時からギターの音色は非常に耳を惹く。

買った当時、どうしてこれが響かなかったのかが、今となってはわからない。

しかし、ある意味ではそういう深みみたいな部分が魅力のバンドであるが故に、シングルヒットには恵まれていないのかもしれないけど。


AC/DCなんかは永遠のマンネリ、などと言われるが、それはもはや肯定的な意味合いとして捉えられている。

R.E.M.に関しても、はっきり言って今の若い人(私もまだ若いですけどね)に刺激的ではないだろう。

良さがわかるまでに時間が少しかかるからね。

だけど、こんな時代だからこそ、彼等のこのマイペースさであったり、ゆったりとした時間の流れのなかの確かな意志であったりというものが、かくもじっくりと染み渡るのかもしれない。

他のエキセントリックな音楽と比べても何ら遜色のない、彼等とは違った良い音楽がここにはある。