場所はLiquidroomとあって、密度的にも非常に快適。
このバンドの場合、こういう小さな箱が合う。
既に何度目かの来日になるが、今一縁がなくて今回が初ライブとなる。
彼等は21世紀のClashなんて言われているように、1stの頃から社会的、政治的な内容の歌詞が主流であった。
一方で、アホかと言いたくなるようなナイトライフ、女の子を軟派する曲など、お気楽なものもあって、それが却ってリアリティがあった。
イギリスの若者の今を見事に切り取っていた、という意味でも注目されたのですね。
そして、これが非常に重要だと思うのだけど、彼等がはっきり言ってかっこ良くない。
ヴォーカルのリチャードは眉毛太いし、アー写もお洒落してみてもいかにも着せられてる感があって、その点も非常に親しみが持てるのである。
でも、彼等には音楽で訴えようと言う明確なアチチュードがあった。
それが最も象徴されていたのはジャケットである。
1stの監視カメラのシルエット、2ndの「No Cover Art」の文字、全ての表現に意味があった。
だからかっこ良かったのですね。
曲はもちろんポップであった。
そんな訳で待望のライブである。
今年のライブ初めにもなるので、そりゃあ楽しみでしたよ。
3rdも出したばかりだしね。
この3rdについては、洋盤を買ってしまったので歌詞がわからず、内容が十分に楽しめないので非常後悔してている。
ただ、曲だけ聴いたときには前2作とはかなり異なった印象を受けた。
その理由がライブを観て何となくわかったのだけど、彼等の曲にあったある種のやるせなさが今回のアルバムの曲にはないのである。
ある意味ではより音楽的な側面が強くなったとも言えるが、一方でそのやるせなさに魅力を感じていた私のような人間にはいささか肩すかしを食らった気分だったのである。
とはいえ、曲そのもののクオリティは明らかに上がっているし、文句のつけどころはないんだけどね。
そんな訳でライブである。
やや遅れ気味にスタートしたものの、1曲目から"Tighed Up"でかなり上がった。
細かなセットリストは既に他のサイトでも上がっているので興味があればそっちを見るのが良いと思うのだが、1stからヒット曲をもれなく網羅したような内容で、はっきり言ってスーパーありがとうであった。
"Hard to Beat""Television""Living for the Weekend"”Cash Machine”"Suburban Knights"など、これでもかというオンパレード。
もちろん新譜からも特にポップな曲をセレクトしてくるので、楽しくない訳がない。
諸処に声が出きっていない箇所もあったし、演奏も完璧であったかと言えばそうは言い難い。
だけど、今回は客も熱かったし、それに呼応するようにバンドのパフォーマンスがすごくよかった。
単に演奏がうまいとか、そういうレベルではないものがあったのですね。
特にヴォーカルのリチャードの歌が非常に力強くて、歌詞も知っている曲はある程度内容はわかるが、そこまで覚えている訳じゃないけど、すごく訴えるものが在り、これはちゃんと歌詞を観んといかん、と思ったものだ。
他のメンバーも仕切りに拳を振り上げたり、前に出てきたり、とにかく楽しそうだった。
リチャードも何度もThank youとFunkyとかの言葉を繰り返していた。
観客にコーラスを煽る場面もたくさんあって、でもそれが無理矢理な感じもないし。
彼等の曲にはかならずシングアロング的なコーラスがあって、一体感も生みやすい。
自ずとハンドクラップも飛び出して、みんな楽しんでいる感じがすごく良かった。
ロックバンドの魅力って言うのは今はあんまりならではのものを感じられる事って少ないと思うのだけど、今回の彼等のライブは、ロックってこういうもんだろ?ていうのを示してくれたような、そんなライブだった。
パンクロックの熱気はこういうところだったのかな、なんてちょっと思ったり。
こうして彼等の素晴らしいパフォーマンスをみて、改めて歌詞に目を向けても、例えば"Television"なんかもそうなんだけど、今の日本の状況と比べても決して他人事ではない気がして、なんだか胸の辺りがモヤモヤとするのであった。
こういうのをいいライブって言うんだよね。
素晴らしい音楽だし、素晴らしいバンドだと思った。
ライブ初めには最高でした。