音楽放談 pt.2

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山に登る前に ―下山

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最近は図らずも邦楽を良く聴いている。

友人から借りたいしたのもあるのでね。

とはいえ、相変わらずなのはヒットチャートとは縁のない音楽ばかりという点である。

個人的にはもっと売れても良いと思うようなものばかりなのだが、世間はそうは思わないそうだ。

アンテナ低すぎるんだよ、どいつもこいつも。


とはいえ、こいつは売れないだろうな、というアングラ臭の塊のような音楽も聞いている。

その一つが下山なるバンド。

ご存知の方はいるだろうか?

かくいう私も知ったきっかけは単なる偶然である。

暇つぶしに観ているHMVのHPで、何故がBo Ningenのメンバーが交代でインタビューを受けている企画があったのだが、そこでこのバンドが紹介されていたのである。

どうやら関西のバンドらしいのだが、何故関西のバンドはかくも個性的なメンツがいるのだろうか。

それはともかく、なんとヴォーカルはかの三島由紀夫の孫らしい(マジで)。

その上アルバムのタイトルが『かつてうたといわれたそれ』である。

紹介しているBo Ningenも絶賛。

こりゃ聴かんならん!とてレコード屋へ走ったのだがレコードしかなかったのでCD屋さんへ急いだ。

渋谷の某塔の上レコード屋に1枚だけ置いてあったので、無事購入。

印象的なジャケットだが面置きしていなかったのですぐにわからなかった。


早速聞いたのだが、第一印象は「なんじゃこりゃ?」であった。

いわゆるノイズ、アヴァンギャルド系、初期Boredomsを想起させるような曲達。

ヴォーカルも何言ってるかわからんし、メロディなんてありはしない。

ポップってなんや?とでも言いたげな音の塊は、正直圧倒されて終わった。

しばらくは何だこれは?と頭の中がぐるぐるしていた。

その後もう一回聴いてみて、やっと音を楽しめるようになった。


一言でいって破壊衝動、て感じ。

決して心地良くない耳障りな音だが、次第にこれが良くなってくる。

なぜだろう、俺は壊れているのか?なんて。

このタイトルからして、果たして彼等の伝えんとするところとは?なんて。

最近こういうイカれた音楽がやたら心地いいときがあるのは個人的には不安になってくる。

Black Diceなんかもそうなんだけど、基本的に売れない音楽ばかりだ。

いうなれば自己表現の塊。

所謂ポップとは何かと言えば、元はポピュラーという言葉だから、最大公約数を如何に大きくするかが視点になる。

オリコンチャートに乗る音楽というのはここに重点を置いているから幅広く人気になるのだろうけど、一方で私のようなギークには物足りないのである。

もちろんそういう音楽も聴くけど、やっぱり一癖はないと。

で、そういう視点からこの音楽を捉えれば、残念ながらポップではないよね。

歌詞を観ても、やはり恋愛とか、友情とか、世界平和とか、自己顕示欲とか、承認欲求とか、ベタベタした自己愛とかを歌わないと行けないんだよ。

「俺は三島由紀夫の生まれ変わりだぞ!」なんていわれてもね。


とはいえ、こういうイカれた音楽ってやはり魅力的でもある。

人間なんて、突き詰めればどいつもこいつも他人から観ればイカレているものだ。

それを素直に出すと憚られるのが社会というものなんだけど、やはりそういうものをジワジワと出す事が許容される社会になりつつあるようにも思う。

一方で出しすぎて害悪となっている奴もいる訳だけど。

社会というものの在り方がよくわかるよね、個性なんて求めていないのですよ。


それはまあ飛び過ぎだとしても、たまにはこういう意味不明な音楽も聴いてみると、視野が広がっていいですよ。

そして、電車とか、人込みとかでこの手の音楽がやたらハマる瞬間がある。

その時に、世界の在り方の一端を観ることができるような気がするな。

そんな風に、ある種のフィルターのような役割もする。

それも音楽の力の一つではないだろうか。


”MAN麻疹”