音楽放談 pt.2

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時代を生き抜く為のもの ―Hadouken!

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最近は流行廃りの速度が非常に早い気がする。

昨年のものは既にクラシック以上の過去のもの、みたいな感じすらある。

時代遅れも一周回ればまたお洒落、という発想はあるにせよ、そもそもの消費の速度があまりに速く、ひたすら消費ばかりが進んで後になって振り返ってもそこには何もないかのよう。

それがある種の虚しさになっているし、刹那的な生き方をする人がしばしば味わう虚無感というのはそういうのに由来するのではなかろうか。


音楽でもそれはやはりあって、最近のブームはリバイバル、というよりも懐古主義という方が正しいかもしれない。

グラミーだかなんだか忘れたが、ベストライブバンドがローリング・ストーンズだったのを観たときはひっくり返ったものだ。

別にストーンズを否定する訳ではなく、敢えてここで選ばれるべきバンドであろうかという事である。

あれだけ長く活動しているバンドに敬意を表してであればもっと別の形もあっただろうに。

それだけインパクトを残せる若手がいなかったと見るべきか、あるいは選出者が老人であるが故の弊害と見るべきか。

ただ、ここ数年の流れを観て行く中で、細分化されすぎた価値観の中で普遍性を求める事がどんどん難しくなっており、結果的に時代の象徴のようなものを選ぶ事が出来なくなって、それがあのような保守的と言うか、懐古的な選出になった気がする。


音楽誌をめくっても最近は90年代のグランジ/オルタナの爆発から20年という経過になるので、そこの特集ばかりが目立つ。

過去の未発表音源を集めたリマスター版とか、そんなものが尽く出されて行く。

あるいはStone Rosesの再結成に見るような、90年代のムーヴメントの火付け役の復活により、そこに再度新しい火種を求めているようにも感じる。

恐らく2000年代初頭までは、そうした一つの流れとしてくくれるものが存在したのだろう。

しかし、近年ではメディアも様々なバンド群を扱って名前を付けるものの、ムーヴメントと呼べるほど大きな潮流にはならず、翌年にはまた違う傾向のバンド、音楽が出てくる状況の中でもはや名付けることを諦めているようにも思う。

それこそStrokes 、White Stripesらに代表されるロックンロール・リバイバルFranz FerdinandBloc Partyらに代表されるポスト・パンクリバイバルKlaxons、Justiceらに代表されるニューレイヴなどが最近での傾向性の名前だろう。

その他Animal Collective周辺のアヴァンポップ系、Arctik Monkeysのようなギターロック、Fleet Foxesのようなフォーク系、Battles、Broken Social Scene のようなマス/ポストロック系、No Ageなどのローファイ系、Owen Pallet やSfian Stevensのようなチェンバーポップなど、名付けられたものは数知れず。

そういえばThese New Puritansとかの世代のバンドをニューエクレティックとか言ってた時期もあったな。

他にもVampire WeekendやDirty Projectorsのようなもはやロックとは一線を画した独自のポップミュージックなんかも台頭してきているし。

音楽性も方向性も指向性も売り方も何もみんな違うから、結局シーンと言うものも局地的なものになって行くし、昔のようなムーヴメントなんて起こりえないのかもしれない。

そんな中で何を打ち出して行くかが見えないメディアは一昔前のブームを掘り返す事で、一定の層を狙える紙面作りに自ずとなっているのかもしれないね。


さて、随分長い前置きをしたのだけど、そんな中で個人的に密かに評価しているバンドがHadouken!である。

彼等はニューレイヴと呼ばれた世代のバンドである。

出てきた当初は、どう考えても一発屋であった。

だって、この日本人にはやたらなじみ深いバンド名、即効性全開の音楽性、ブームという現象の中で、こいつらはこれっきりだなと思った人は少なくないだろう。

むしろまだ残っているなんて思っていた人は当時いただろうか。


とはいえ、表面的な評価とは対照的に、そのリリックは当時から抜群に評価よかったんだけどね。

1stは『Music For An Accelarated Culture(加速された文化のための音楽)』というタイトルであった。

時代の変化が早い中で、このタイトルだけでも非常に興味深い。

歌詞の内容としては若者のナイトライフを物語の主軸にしつつ、そこにおける心情や刹那感といったものを見事に描いており、それこそStreetsなんかも引き合いに出されていた気がする。

音楽のわかりやすさ故にそれがやや隠れてしまっていたのは勿体ないところである。


続くセカンドは、Bpmを落としてハードな方向にシフトして行ったが、個人的にはあまり良いと思えなかった。

友人から音源だけを借りたので、歌詞の内容はわからなかったがね。

ただ、今改めて聞き返すと決して悪くはない。

もう少し全体的に緩急があればもっと良かったのに、という印象。

1stはとにかく早かったので、その反動なのかもしれないけど。


で、今年3rdが出た。

まさかここまで持つとは思っても見なかった。

しかも、曲のバランスとしては恐らく一番良いと思う。

まだ歌詞にまで目を向けていないけど、彼等は完全にニューレイヴと言うブームからは距離をとることに成功していると思うし、バンドとして着実にキャリアを積んでいると言える。

実際は1stのときから彼等はブームとは距離を置こうとしていたけどね。

結果的にブームによって見いだされたところはあるにせよ、自分達が消費される事を嫌ったのだろう。

彼等の1stはもう少し早く出していればもっと売れただろうし、話題にもなっただろうと言われていた。

見た目の音楽性やバンド名からはアホな若い子のバンドという印象だが、実際はそんな事はない。

もちろん適度な馬鹿さはあるにせよ、音楽そのものはマジであったという訳である。


ブームという奴はわかりやすいから、メディアもそれを作ろうと躍起になる。

ただ、一方でそこに図らずも巻き込まれるバンド達は、一時はその恩恵にあずかっても、後にはそれに足を引っ張られる事もある。

「あ~、あの一発屋ね」みたいな発言を誘発する訳である。

もっともそんな事を安易に言う奴は「音楽」を聴いてないってだけだと思うけどね。

結局こんな混濁とした時代だから、自分の中に明確な軸を持っている奴だけが生き残る事が出来るってことだろう。

それはどんな分野でも一緒だと思うけどね。


ともあれ、ライブを観たのはまだ1stの頃のサマソニだった。

今年も来てくれると嬉しいね。

当時印象的なMCは「I Know Some Japanes. Sushi, Tempura, and ... HADOUKEN!」というのが今でも心に残っている。

そんな素敵な彼等には是非また来日してほしいね。