リバイバル、という価値観がロックに再び持ち出されて久しい。
最近ではより原点回帰的なというか、昔の音楽の再構築、もしくは~の再来的な評価のバンドも多いように思う。
一方でロックとは異なる文脈の音楽を取り入れて、もっと広義にポップと言う視点から作られる音楽も非常に増えてきている。
前者で言えばVaccinesとか、Jake Bugなんかもそうかな。
伝統的なスタイルの中で新たな才能として注目されている感がある。
後者で言えばVampire Weekend とかDirty Projectorとかかな。
こうしてみると英国vs米国という構図にも見えるな。
やっぱり国民性というか、元々内向的で保守傾向の強いイギリスではこういう不安な時代には伝統に寄るところが大きくなり、一方アメリカでは同じような状況でも既存の価値観を壊して新しい地平を開こうとするものかもしれない。
ま、いずれもごく一部を切り取っているだけだから何とも言えないところは在ると思うけど、相変わらずストーンズが評価される現状を見ると、少なからず在る事だろうと思う。
方や日本は、というと、音楽はあくまで大衆産業としての側面が強いからあんまり時代性とかって感じにくいけど、見えにくいところではエキセントリックな音楽も一杯あって、よくも悪くもマイペースな印象である。
ただ、所謂流行歌を見ると従来のスタンダードな感じのポップよりも、ある種独自性のあるものが受ける傾向は強いかもしれない。
ジャニーズやエグザイルとか、Avex系の昔ながらの機能系J-POPも相変わらず安定した人気はあるとおもうけど、 きゃりーぱみゅぱみゅやももクロみたいなちょっと変わった人たちがど真ん中にいる辺りが、現代的なところかもしれない。
やっぱり日本人の感性って少し変態なところが在るんだろうな。
さて、そんな前置きをした割には本編とは余り関係ないだろう。
ポップと言う視点でみたら、その言葉は彼等の為に在ると言っても過言ではないとあちこちで言われているが、あまり商業的には成功していないバンド、XTCである。
職人とまで言われた彼等を私も愛して止まない。
アルバムはオリジナルは多分全部そろった。
1stから順番に見て行くと、結構印象は変わっていて面白いのだけど、それ以上に外れのなさに感動させられる。
一つの転換点は『Black Sea』だろう。
ロック的でありながらポップな曲もまんべんなく入っている。
前期と後期はここで別れると思う。
初期は変態的なキーボードが特に印象的な奇天烈ポップを展開していたが、後期はメロディ重視のハイパーポップバンドになっている。
元々ビートルズを敬愛している人たちなので、ある意味必然的な変化だったのだろう。
もちろんメンバーの変化もその音楽性に変化を与えた事は在るかもしれないけど。
彼等のアルバムについては最高傑作に何を挙げるかは評価が分かれる。
それこそ初期の奇天烈が好きな人は『Drums & Wire』を挙げる人が多い印象だし、中期であれば間違いなく『Black Sea』であろう。
後期になると非常に難しいのだけど、『Oranges & Lemons』あたりは一つの金字塔の要に感じる。
もちろんこれ以外のアルバムだっていずれも素晴らしいので、やっぱり一番を決めるというのが難しいのである。
『White Music』は全体的には一番楽しそうだし、『Go 2』はエキセントリックさでは1番だと思っている(ヒプノシスデザインのジャケットも含めて)。
『Skylarking』だってあんなに心安らぐアルバムはなかなかないし、『English Settlement』の曲の粒揃いったらたまらん。
『Murmer』『Big Express』は個人的にはアルバムとしての弱さはあるけど、平均点以上なのは間違いない。
『Non Such』だって初めから終わりまで良い曲尽くめ。
特に前者は後のチェンバーポップを先取りしたような作風で、もっと評価されても良いと思う。
そんな訳で、外れなしな彼等のアルバムの中でも、夏場によく聞いているのは『Oranges & Lemons』である。
サイケデリックな風味の強いアルバムだが、名曲”Mayor Of Simpleton”も収録されていて、聞き所も満載。
何でもっと売れないのだろうかと不思議で仕方がない。
結局XTCのアルバムは通年で何かしらを聞いているのだけど、なんだか毎回良い曲だなぁと唸っている訳である。
今はもう活動休止状態なのが残念なのだけど、こうして過去の音源だけでも飽きる事はないのである。
そういえば、XTCは今や本国よりも日本の方がコアなファンが多いらしい。
日本人と英国人は同じ島国という事で、内向的、神経質傾向などがよく似ていると言われる。
実はビートルズ的であったりするから、伝統的な英国ロックをならしているバンドでもあるわけで、そんな中で再評価がもっと高まっても良いと思うのだけど、結局彼等の一番の魅力は曲そのものであって、綺麗でポップなメロディであったりする。
だから、彼等を愛して止まない人は多分少なくない。
だけど、その理由は純粋なセンスから来るものであるから、真似しようと思ってもできないんだろうね。
そういう意味では唯一無二たるし、普遍的なままだと思う。
ホント、良い曲書いていたんだよ、彼等はさ。
"King For A Days"