毎年のように言っている気がするが、今年もいい新譜が満載である。
Nine Inch Nailsはいうに及ばず、Arctic Monkeysも出しているし、既発のものでも充実っぷりが半端ない(個人的にね)。
その中で満を持して、という1つがFactory Floorではなかろうか。
インディーズながらフジロック12に出演したり、日本独自企画EPが出されたりと、ダンスミュージックの新しい波として期待値と注目度はすでに抜群だった。
もっとも音楽的には非常にミニマルで、ポストパンク的なバッキバキに乾いたクールなものなので、およそ大衆性はなかった。
とはいえ、そのヒリヒリとした切れ味あるサウンドは好きものにはたまらないというもの。
評価としては「ダンスフロアのヴェルベッツ」等と言う人もあったくらいだから。
インディーズ時代にアルバムは1枚出しており、そちらはすでにメディアでは入手困難となっている。
そのため私もMP3で購入したけど、非常にストイックでソリッド。
じわじわと体の中に浸透してくるその感じは、いわゆる中毒性の高いものであった。
別に過激な音が飛び交っているわけでもないのに非常に攻撃的で、歌にならないうめき声の様なヴォーカルも良かった。
ヴォーカルは女性なのだけど、女性特有のやわらかさはなく、むしろ感情を停止した瞬間の恐ろしいまでの冷たさを表現しているかのよう。
念のため言っておくが、別に女性にいやな思い出があるわけではないけど、感情を排した時の女の人ってなんであんなに怖いんだろうね。
それはともかく、そのアルバムでも非常にしびれる音楽であったので、いよいよ本格的なデビュー盤とあって一部では非常に話題であった。
私もこの報を知った時には嬉しく思ったものさ。
しかもプロデュースは安心と信頼のDFA。
昨日店頭に並んだその瞬間で買ってきた。
運よく(意図的に)外回りの予定を入れておいてよかった。
で、早速聞いたのですが、率直な感想としてはポップすぎる。
音楽的にはミニマルをさらに極めたような楽曲はらしさ満点だし、女性ヴォーカルの無感情さもそのまま。
だけど、ミックスのせいか音が丸いのである。
あのヒリヒリするほどのドライなエッジはなく、ポストパンク的な荒涼感もなく、これでは魅力半減ではないか。
ひたすら続くミニマルの果てに不意に訪れる凄みを利かせた世界観はなかった。
あの得も言われぬ攻撃性はどこへやら。
アルバムとしては全然申し分はないし、市場と言う観点からいえばこちらの方が間違いなく売れるだろう。
メジャー1stとしてはこれで正解なのかもしれない。
DFAもいい仕事はしていると思う。
でも、いい仕事しすぎてこれじゃ満足できないぜ。
この音像からはヴェルヴェッツの香りは感じられない。
恐らく雑誌の評価などは軒並み高評価を獲得しそうだとは思う。
だけど、あの乾いた感触のままミニマルが追及されるからそこに凄みが生まれるのであって、音が丸くなった途端生ぬるいだけになってしまう。
何度も言うが、曲もアルバムとしての展開も悪くない。
だけど、大事なものがないのである。
もっともあくまでそれは私が彼らに勝手に持っているイメージでしかなく、彼らの本質はこっちなのかもしれないけどね。
とはいえ、11月のエレグラも決まっているので、その前後で単独とかあればぜひ行きたいけどね。
2ndでその世界観を期待しよう。