先日暇しかないくせに例によって都内某所のディスクユニオンをぶらぶらしていたときのこと。
この間ライブで見たトリプルファイヤーのCDでもないかしら、と思って「と行」のコーナーを見ていると、思わぬタイトルが目に飛び込んできた。
こ、これは!もしや!?
そう、かつて探してみたがすでに廃盤になっていた幻の名盤(かどうかはわからないが)『溶け出したガラス箱』のCDがあるではないか。
思わず店内でわなないてしまった。
ちょっと説明すると、5つ赤い風船というフォークユニットにいた西岡さんという人のソロプロジェクト的なものらしい。
さすがにこのグループも曲も私は知らないのだけど、当時からいわゆる鬼才というような人だったとか。
スタジオワークにこだわりの強い人らしく、その才能を発露させるために作ったのがこの『溶け出したガラス箱』だったとか。
彼のやりたいことをやるために集まったのがジャックスの人とか、細野さんとか加藤和彦とか、当時の日本の音楽界でもトンがった才能たちだった。
当時このアルバムの音楽性は「アシッドプログレッシブフォーク」とかいう、当時としてみれば前衛的な呼ばれ方をしていたらしい。
私が彼を知ったのは、町田康原作の映画「けものがれ、俺らの猿と」の中で使われていた曲がきっかけである。
劇中でもひときわ奇妙で強烈な印象を与える鳥肌実扮する田島の登場シーンで流れていたのがこのアルバムに収録されている”君は誰なんだ”という曲。
あまりにもシーンにマッチしていて、不気味な田島の存在を際立たせる絶妙な選曲であった。
カーステレオから流れる「君は~誰なんだ~」という歌をバックにバナナをだらしなくもぐもぐする姿が最初っからきの字全開だった。
そのインパクトを持って私のここに大きな爪痕を残していたのであった。
その後サントラをまず買って、やっぱり変な曲だし意味不明な歌詞で、このなんとも言えないモヤモヤ感が素敵なのでアルバムも探してみたのだけど、その時は廃盤になっていて入手できなかった。
しかし、後年復刻版として再発されて、デジタルリリースもされていたらしい。
すでにメディア盤は再び廃盤になっているらしく、中古であるにも関わらず当初の売価より高くなっていたのだけど、それでもつい買ってしまった。
アルバムを改めて聴いてみると、やっぱり全編にわたって非常に強烈というか前衛的というか、これがん10年前と思うと、えらくとんがっていたんだなと思う。
ある意味時代に対して普遍的な側面もあるから面白い。
最近でこそこういしたアヴァンギャルドなものもある程度のポップさを拾われるような土壌が少しずつ出来てきていると思うけど、これを当時真正面から評価できた人っていたのかな。
まだしっかりききこめていないけど、はっきり言って結構狂っている。
歌はむしろ淡々としていて、その音楽と合わさると本当に奇妙な感覚にさせられる。
”君は誰なんだ”もそうなのだけど、この温度感て一体なんだろう。
ともあれ、こうして昔の音源ながら今だからこそかえって新鮮というか、面白く聴けるものも多分まだたくさんあるんだろうなと思うと、楽しくなってくるよね。
これに大衆性があるかといえばないと思うけど、こういう奇妙奇天烈さも芸術の一側面だから、いろいろ聞くのはいいよね。
それにしても、マイケルって誰だ。
”君は誰なんだ”