都会の喧騒を忘れて、田舎で静かに暮らしませんか?なんて。
確かに東京、特に都心に近いところほどいかに静かといえども常になにかしらの音が一日中聞こえる。
生活音、車の音、電車の音、外を歩く人の声、エアコンの室外機などなど、静けさは実はありはしない。
なので、そんな静けさを求める気持ちはわかるのだけど、田舎出身者からすれば所詮そんなものは一つの広告に過ぎないと感じる。
実際田舎は基本的には静かだ。
人いないしね。
山の中に居を構えていると、数十メートル先の家の笑い声が聞こえるくらいだ。
しかし、この時期になると虫はせわしなく鳴いているし、川が近ければその流れる音が響いている。
その意味では静かでもない。
それでも行く人は「虫の声がいいねぇ」「かかわのせせらぎがうんぬん」「空気がおいしい云々」。
田舎舐めんな!
3日で飽きるぞ、マジで。
君は川を眺めるだけで1時間過ごせるのか?どうせ泳いだりバーベキューとか言ってほたえ騒いで、酒飲んでウエ~イとかやるだろ?
そんなやつに田舎暮らしは無理だ。
何もない世界がずっと続くんだぞ!
だから田舎ものは都会に出てくるんだ。
そして都会の喧騒にやられてちょっと田舎の町に生涯の住処を構えるのである。
それが日本人の大半ではないだろうか。
とはいえ、やっぱりたまにはそんな山が恋しくなる。
3日でいいからちょっと何もないところで何もせずに過ごしたくなる。
私も昨日、どうもいけねぇと思って東京の奥の方へ電車でゆらゆら行ってきた。
やっぱり山の川の水は綺麗で非常に良いのだけど、すでに観光地化された山なのであちこちでほたえ騒ぐ人があってそれだけはいただけない、と思いつつも、できるだけ人がいないところを探して、水に足をつけながら1時間半くらいぼ~~っとしてきた。
小魚がちょらちょらしているのを見ながら、なかなか良かったですよ。
それから少し川沿いのヲーキングコースをせっせと歩いてそばを食って帰って来ました。
疲れた。
さて、そんなわけで今日はそんな田舎風景の似合う音楽を探してみよう。
田舎で聞いてこそその景色とともにいい塩梅にしてくれる筈である。
まずはこちら。
9月に新譜が出るPredawnの1stEPから”Suddenly”、アコースティックな曲はやっぱり静かな景色には合う。
特に彼女は曲調自体も声質も落ち着きのある音楽性なので、アルバム含めてお勧めである。
次にはこちら。
ポストロックの代表的なバンドの一つ、Sea and Cakeの代表作『Fawn』から”Sporting Life”。
アルバム1曲目なのだけど、夏にもぴったりな爽やかさもある1曲である。
キーボードの音色が実に素晴らしい。
透明感のあるヴォーカルも手伝って、これ聴きながら静かな田舎道を車で走ると最高である(実施済み)。
基本的にクリアな音楽ほど合うのである。
続いては少し違う感じで。
坂本慎太郎のソロ1st『幻とのつきあい方』から”幽霊の気分で”。
歌詞の内容としても、日常からの脱却という感じなので、あてどもなくうろつく時にぴったりだ。
特にエスケーピズムを求めて田舎へ行く人にはジャストではないだろうか。
こちらも電子音のない音像含めて非常にはまる。
この系統ではこんなのもお勧めだ。
本日休演の『けむをまこう』から”けむをまこう”。
古き良き日本のロックという感じもいいではないか。
こちらも逃避的な内容の歌詞なので休みの日に聞いていてもはまる。
次はちょっとアグレッシブなところではこんなのもいかがだろうか。
この密林感、木々の生い茂る山道を行くにはぴったりだろう。
地獄の黙示録的な世界が待っていそうでちょっと不安になるが。
夜のキャンプにもお勧めな1曲だ。
酒飲んで踊り狂おう。
再びアコースティックに戻るけど、こういう昔ながらのソングライター的な曲もいいですよ。
The Coralのヴォーカル/ソングライター、James Skellyのソロより”Sacrifice”。
明るいながらも少し切ないメロディが疲れた心には刺さるのではないだろうか。
この人の少ししわがれた声もしっくり来る。
いい曲だ。
最後にしっとりとした1曲で。
夜に酒でも飲みながら静かに聞くならこのテンションがやっぱりはまる。
自然の景観を邪魔しない密度もちょうどいいではないか。
彼女も総じて静かな曲が多いので、アルバム通して聴いてもいいですよ。
数曲ピックアップしてみたけど、やっぱり静か目というか、音の密度の低い音楽がしっくり来るのである。
せっかくの風景を邪魔するような音楽をあえてチョイスするのは無粋というものだ。
特に落ち着いたトーンの曲の方が、私も個人的に好きというのはあるのだけど、どれもいい曲のあるアーティストなので、ぜひ聞いてみてほしいですね。
ここで番外編。
田舎者の気持ちをうまく歌った1曲で本当の最後。
MOROHAの”上京タワー”。
ここで描かれる世界は彼らの地元、長野県の風景だと思うけど、その環境に囲まれている時の焦りみたいな気持ちっていうのは、東京とかでやっている田舎者にはある程度共通するマインドじゃないかなと思う。
あるあるな部分もあって、聴いていてなんとも言えない気持ちになってくる。
田舎者の気持ちを知るのにいい材料である。
田舎って、何もないんですよ。
それがいいと思えるのは3日くらいだ。
それを受け入れて過ごしている人は、多分求めているものとかが違うんだろうなと思う。
言っておくけど、否定のニュアンスは一つもなくて、単に価値観の話ね。
それを受け入れられるなら、田舎暮らしはいいのではないだろうか。