音楽放談 pt.2

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クソみたいな現実でも -T2 Train Spotting

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この連休は暇なのでまた映画を観に。

さすが連休とあって話題作が盛りだくさん、美女と野獣、シング、コナンくん、クレヨンしんちゃん、とか、あと、あの、あれとかさ、これとか色々王様のブランチとかでなんか紹介してたような、イケメンとか可愛い子が出てくるだけのやつとか、いっぱいあって悩んでしまった。

実際映画館はなかなかの盛況で、先日無限の住人は9時~の回で行ったのだけど、チケットカウンターが長蛇の列で20分も並んだ。

しかし、入ったらここのシアターはガラガラで、みんな違うものを見に来ていたらしい。

おかげで快適でした。


で、昨日見に行ったのは『T2 Trainspotting』、20年前に流行った映画らしく、その時のキャストがそのまま出演しておりまんま当時の主人公たちの20年後を描いているというのが話題だったらしい。

デザインにUnderworldのカール・ハイド擁するTOMATOが関わっていたり、曲でも"Born Slippy"が使われていたり、その他当時のUKバンドの曲が劇中印象的に使われていたということもあり、ロック好きにも知られてる映画であったらしい。

私はぶっちゃけ知らなかったし、ちょうどこの映画で話題になって目にするようになって、そうなんだくらいのテンションでしかなかった。

とはいえせっかくなのでととりあえず前作をアマゾンで見て、その足で映画館へと向かったのであった。


軽く1作目についてまとめると、舞台はイギリス、学も職もない若者4人が主人公で、ドラッグ漬けで仲間同士でだらだら過ごす日々を描いている。

当時のイギリスの若者のリアルをコミカルに、しかしゆえに切実に描かれているとか。

日本ではピンと来ないけど、イギリスではいまだに階級みたいなものがあって、それこそ今や大スターOasisもいわゆる労働者階級である。

多くは地元の工場やバブで働くくらいしかないなんて話も聞いたことがある。

割とロックを志す人も多いのは、まさに一発逆転を狙ってということらしい。

この映画でも、彼らは一発逆転を狙ってオリジナルのドラッグを作成、それを売人にさばいて多額の金を得るのだけど、その金を彼らの一人が持ち逃げして海外へ飛び出すところで前作は終わるのである。


で、今作はその続き。

一人逃げた奴が結局チャンスもつかめずに地元に帰ってくるところから始まって、懐かしの仲間に会うところから話が転がっていくのだけど、4人それぞれにダメな大人になっている。

まずこの逃げたやつと一番の幼馴染みは、親族のしがないバーを継ぐもろくに金にならないので美人局みたいなことをやっているのだけど、ある時しくじって相方の女の子にまで愛想尽かされる一歩手前、もっと儲かる自分の店を作るなどと行ってみせるがなかなかうまくいかないわけだが、今回はこの店を作るというのが一つの大きな軸になる。

もう一人は変わらずヤク中から抜け出せず、セラピーに通うもうまくいかず、結果女房子供に愛想を尽かされて自殺しようとしているところで帰って来たものに救われる。

彼は今回の映画で唯一と言っていいくらい前向きになった存在だ。

そして最後は刑務所に入ったやつ、喧嘩っ早いというよりはもはやただの爆弾みたいなやつで、20年経っても変わらず暴力的なままである。

こいつは故意に怪我をして病院に担ぎ込まれるわけだが、そこから脱走してまた悪さするのだけど、最後に少しだけ彼から切実な現実が語られる。

「俺には学もコネもなくて、選択肢なんてなかった。でも今はそうでもないんだな」なんて息子に語るシーンだけが彼の人間味を写している。


この映画で印象的なセリフは「人生を選べ」というセリフだ。

若い頃、ひたすらドラッグに明け暮れてダメ人間でしかなかった彼らが、20年経つ中でそれぞれの経験を得ていくし、世の中も変わっていっている。

どうしようもなかった現実は少しだけどうにかできそうな兆しは社会の変化だろう。

その環境は個人の力だけではどうしようもないところがあるけど、それでも生きていかないといけないのが現実で、そんな切なさ、ペーソスとでもいおうか、そんなものが滲み出てくる映画であった。

ただ、客観的に見ればダメな中年4人が足掻いている姿はもはやコミカルに写ってしまって、それが過度なシリアスさをなくしているのは見る側としてはみやすくなっていた。

もちろんバカじゃないのかという意味じゃなくて、なんだかんだヘコタれないタフさが頼もしかったりもする。

結局店もうまくいかず、腐れ縁同士だらだらとサッカーを見るというエンディングなのだけど、まあしょうがねえか、みたいな感じで、それって中年ならではかもしれない。

若者の方が本当はチャンスもいっぱいあるし、ちょっとの失敗なんて大した問題にもならないのに、深刻に受け止めてしまったり、自分の失敗を重ねやすいからグッとくるところもあるんだけど、中年だとこうも受け止め方が変わるのかと思う。

おっさん、強いからね。


そんなわけで、結構面白かった。

音楽についても確かにいい感じの使い方だったけど、それよりも単純にこの静かな盛り上がりがよかったよね。

彼らは年月が経ってもダメなやつのままだし、人って成長しないという現実を見せつけもするけど、それはそれで生きていけるということだから、そういう目で見れば励まされるところもあるだろう。

引きこもり、ニートとか、就活浪人からそのままダメになったやつはぜひみてみてほしい映画だと思う。

人生はどっちにしたって続くし、悲観的になってばかりいてもしょうがない。

ダメな時は何やったってダメだけど、たまにチャンスは舞い込んでくる。

そこに少しだけ楽しい瞬間があれば、割となんとなるんじゃないかという気がするよね。

なりふり構って塞いでいるよりは、その方がいいんじゃないかって気がするよね。

ゲロまみれ、クソまみれ、借金まみれのかっこ悪い人生でも、やっていかないと仕方ないもんね。


そんなわけで今日は映画には使われていないけど、イギリスの若者のリアルと言われるこの曲を。

すっかり音沙汰がなくなってしまったHard-fiの1stの1曲目、"Cash Machine"を貼り付けておこう。

金がない!と叫ぶこの切なさ満載、翻ってコミカルにすら映る現実は、結局悲観的になって何もしないよりはとりあえず何かするしかないっていうのが、タフさだよね。