音楽をジャンルで語ること自体に本質的な意味はないけど、好きな音楽の傾向をまとめていくと一定の傾向は出てくる。
私の場合は、基本的にはロックが好きだし、打ち込みよりもバンド音楽が好きな傾向にある。
80年代のイギリスで見られた一群だが、この頃の音楽ていいんですよ。
それこそJoy DivisionとかDepech Modeとかその辺りのバンドですね。
日本にもその影響を受けた音楽を展開しているバンドは少なからずあるわけだが、とりわけそのエッセンスを感じるのがLillies and Remainsである。
知る人ぞ知る状態ながらその音楽性の評価は高く、是非知って欲しいバンドの一つだ。
ポストパンク/ニューウェイブ代表、Lillies and Remains
改めて紹介すると、一部では絶大な評価を受けつつもなかなか大きく名前が知れることのないバンド、Lillies and Remainsである。
彼らの活動開始も2007年頃と、まさにそんな渦中だ。
彼らの参照点も80年代に出て来たバンドたちの音楽で、Depech Mode、Echoes & The Bunnymen、Killing Joke、Joy Division、The Smithなど、私も大好物なバンドたちである。
当時の音楽の持っていた空気感などを見事に纏っており、このあたりの音楽を聴く人にはたまらないものがある。
メンバーはソングライティングもしているG/VoのKENTとG/ChrのKazuyaの2人である。
結成当初は4人でベースとドラムもいたのだけど、2ndあたりで離脱してしまったため、ライブではサポートを入れてやっている。
おそらくKENTがかなりセルフィッシュというか、もともと1人で宅録で作っていたというくらいだから自分の思い描く音楽を完璧に再現するためのバンド運営をしていたんじゃないかな。
それが結果的に彼らの音楽の評価にもつながる空気感を生んだのだと思うけど、一方でメンバーからすればやっていられない、という場面もあったのかもしれない。
それこそPlasticzoomsも最近メンバーが減って、バンドの方針自体もVoのShoの思いを形にするためのものとして宣言したが、体質としては近いのだろう。
どちらもかなりカラーが色濃く出ている。
この2バンドとThe NpvembersでBODYSというイベントを不定期に行なっているが、ノベンバは少しカラーが違うなと感じるのは、彼らはバンドとしてのバランスがあることである。
共感しあうものが必ずしも同じようなタイプではないのである。
ちなみにサポートのベースは盟友The Novembersの高松さん、ドラムはThe Collectorsの阿部さん、キーボード・シンセはちょいちょい変わるが、元Plasticzoomsのトムかminus(-)のフジマキである。
最近では元メンバーも少しだけ加わることも多いけど、仲直りしたんだろう。
このメンバーを見るだけでどんな音楽かの一端は想像できるだろう。
異本的にはギターメインの音楽で、とにかくリフがカッコいい。
ヴォーカルは歌い上げるというよりは低音で這うように歌うので、シンガロング系では決してない。
そこが日本ではイマイチ売れない理由かもしれないが。
全部英詞だしね。
実際Youtubeでも外国語のコメントが溢れている。
頼もしいではないか。
と、すでに前段が長いんだけど、今日は彼らのライブがある。
ライブハウスの企画ライブらしいが、ライブ自体あまり頻繁にやらないバンドなので、時間のある人は是非訪れてほしいという思いで、彼らの代表曲を一挙ご紹介。
ギターの切れ味抜群、クールでタイトな1stアルバム『Part Of Grace』(2009年)
"Moralist S.S"。
力強いギターのカッティングがカッコいい。
ブレークから演奏でガッと持って行く曲の構造がそもそもJ-POPとは違うので、結構洋楽ファンの方が刺さるかもしれない。
個人的に彼らの曲の中で1.2を争う好きなのは1stアルバムの2曲目に収録されているこちら。
"The Fake"
イントロからすでに最高なんだけど、いわゆるAメロ終わりのサビの部分のリフが最高に格好いい。
めちゃくちゃテンションが上がるんだけど、こういう展開が私は大好きだ。
クールってのはこういうのをいうんだよ。
一方で爽やかさと一握の切なさとを感じさせるこんな曲もある。
"Wrekage"
一部ではBloc Partyのある曲にも少し似ていると言われているが、ギターリフが多少似ることはあるだろうし、参照している音楽も近ければそういうこともあるだろう。
そんなことよりも曲としてどちらも素晴らしければ、それでいいのである。
これら3曲とも1stアルバム『Part Of Grace』に収録されており、このアルバムは中古で500円くらいでも手にはいるので、是非チェックしてみてほしい。
こんなところでもちょくちょく出ていたんですね。
完成度抜群、とにかくクール2ndアルバム『Transpersonal』(2011年)
彼らの評価が一躍上がったのは2nd『Transpersonal』で、歌詞などは仏教的なものをモチーフにしているらしい。
タイトル自体もそういう概念らしいが、残念ながら全編英詞なので詳細な意味は拾えていない。
日本人アーティストなのに・・・。
それはともかく、このアルバムは前作以上に硬質でハードなギターがカッコいいんだけど、アルバム通してのテンションも素晴らしい。
1曲目収録の"Across The Line"、このハードでアグレッシブなギターよ。
やや吐き捨てるような歌い方のヴォーカルもグッド。
それにやっぱり演奏でガッと持っていけるこの曲たち、才能って素晴らしい。
シングルもお勧め、『I Survive』(2013年)
ここからアルバム以外の曲をいくつか。
まずはシングルでリリースされたこちら。
細かいカッティングがグイグイと引っ張って行く"I Survive"。
ああ~、カッコいい。
ギターのエフェクトも含めてう素晴らしい。
この曲はちゃんとサビもあって、わかりやすい曲ではないだろうか。
原点カバーと茶目っ気と、カバーアルバム『Re/composition』(2012年)
彼らは自分たちの好きなバンドの曲のカバーアルバムもリリースしており、その曲も非常に面白い。
こちらはThe Simthの"Some Girls Are Bigger Than Other"、割と原曲に忠実だが、ギターがより立ったアレンジをしている。
ただ、一番の衝撃はBretny Spearsの ”Toxic”のカバーだろう。
こちらのアルバムも是非チェックしてほしい。
遂に開かれた3rdアルバム『Romanticism』(2014年)
そして目下の最新アルバムが『Romanticism』、あのフジマキがプロデューサーとして参加したアルバムで、彼らのキャリアにおいても一つの転換点となるアルバムだろう。
これまでのギターメインのところは変わらないけど、よりダンサブルな路線の曲が多く、アレンジもシンセが多くなって来ている。
ちなみに藤井麻紀が音楽界に復帰する一因となったのは、彼らの存在である。
で、このアルバムの1曲目がこちら。
この曲だけでこれまでとちょっと違うぞ、とわかるはずである。
ライブでもそうだけど、かなりKENTがオープンになったし、それが楽曲にも表れている。
彼が周りを信頼し始めたという意味でも、大きなきっかけなのである。
こちらは映画『新宿スワン』にも提供された"The City"。
この曲は彼らのこれまでのイメージ通りの曲だけど、やっぱりかっこいいな。
アルバムの中で色が違っていいのはこの曲。
やや甘酸っぱいような香りもする"Like The Way We Were"。
歌詞の中に自分たちのバンド名も出したりしてね。
まあ、このバンド名は確かBouhousの曲名に由来しているから、その曲ともかけているのかもしれないけどね。
と、なんだかんだ長くなってしまったが、本当に曲はいいし、かっこいいし、ライブもまた素晴らしい。
盟友たちがここ2年でキャリア最高傑作をリリースしているが、彼らはまだそこまでは至っていないように個人的には思っている。
次のアルバムが出るのかも定かではないが、彼らならきっとできるはずである。
今日のライブでは、ヒカシューの巻上さんもサポートで入るらしい。
ここで嬉しい知らせも聞ければなおいいが、ともあれまずはライブである。