美人であること、それは一つの才能である。
顔面偏差値という俗語があるが、国や時代によって美醜の感覚にさはあれど、本当の美人はいつの時代美人だったのではないだろうか。
昔日本ではいわゆるオカメ顔が美人と言われていたが、それは単に絵の表現として好まれたか、当時の権力者にそういう顔が多かったので、いわゆる忖度的な意味でそう言われていた、あるいは描かれていただけではないだろうかと邪推してしまう。
それは一旦置いておいて、美人を見るとなんだか得した気分になる。
美人ってどんな顔?と言えば、一言で言えば整っている顔である。
人間に限らず、世の中の大半はアシンメトリー、つまり左右非対称で、右から見た顔を左から見た顔では違うし、正面から見ても左右で顔が少しずれていることも少なくない。
ちなみに私は左右の目が水平についていないので、メガネは気持ち傾けないと目と平行にならないというアシンメトリーな顔である。
しかし、中にはほぼ対称といえる人もいて、男でも女でもそういう人をさして美人というのである。
そんな美人は一般的には得をすると言われているし、実際そうだと思う。
私は男なので、相手先の担当者が可愛い、美人な女性だとやっぱり嬉しくなるし、テンションも上がるから、多分応対は丁寧だ。
それに、ちょうど就職活動も始まるこの時期にはホットなトピックだが、面接でも美人の方が有利な判定がされやすいというのは社会学だか何かの実験でも明らかになっている。
しかも、万国共通だ。
もはや仕方のないことだし、先にも書いたように美人であることそれ自体も一つの才能であるなら、それが評価されないのは逆におかしいという話もあるわけだ。
ところが、この日本という国は特にそうなのかもしれないけど、見た目については褒めても貶してもなんとなくいい感じにはならない場合が多い。
ことさら本人がそれを主張することは、とてもはしたないことだと思われているし、一歩間違えればいじめの原因にすらなる。
世の中にはそれだけ顔面コンプレックスを持ったやつが多いということだろう。
そんな美人だから、得をする場合もあれば逆に損を被る場面もあって、しかも損を被る場面ではほぼ原因を本人に帰結させられるというかわいそうな扱いをしばしば受けている。
例えばセクハラ、そんな露出の多い服を着ているからだとか、あえて武器にしているから仕方ないとか、そんなことをよく言われるそうだ(いまだにそういうところはあるという)。
あるいは面積の少ない服を着ていると、やっぱりそういう目を向けられることが多く、例えば不美人と美人が同じ格好をしている時に、そういう目で見られるのは間違いなく美人だろう。
当人からしたら、自分が好きな服を着ているだけで、別に男に何かをアピールしたいわけでもないだろうが、男はバカなのでつい勘違いをしてしまうのである。
その勘違いを指摘された瞬間、恥を隠すように恥を晒すわけであるが、それがいわゆる男性社会の構図なのかもしれない。
それはともかく、美人は美人というだけで勝手に妬まれて勝手に惚れられて勝手にキレられるという因果がつきまとう。
美人ほどしたたかでなければ、なかなか生きづらい社会だろう。
さて、随分長い前置きをしたんだけど、ここ数年でデビューして、瞬く間にスターダムに登ったバンドの一つがChvrches。
男2人女の子1人の3人組で、音楽的にはエレポップである。
1stアルバムから早々に売れたのだけど、実際曲はとてもポップだし、その割に実はかなり社会的な歌詞もあって、ただのポップバンドじゃねぇ、となったわけだ。
しかし、彼らが売れた理由の大きな要因の一つには、間違いなくヴォーカル・ローレンのビジュアルはあったはずである。
ちなみにこちらがローレン。
好みはあるだろうが、一般的に見て間違いなく美人である。
ていうか可愛い。
歌声も女の子っぽい声なので可愛らしいので、そりゃ世の男どもは食いつくわけだ。
彼らの初来日だったかは忘れたが、Hostessのイベントにも出演したことがあった。
その時の他のラインナップももちろん良かったのだけど、彼らの出演日は早々にソールドアウトした。
ライブ当日は大雪が降った翌日で、交通網も乱れた都内だったが、それでもかなりの入りを記録したというからやっぱりみんな美人を見たいのである。
で、単に成功しているならいいじゃないか、という気もするが、彼女自身は別にそれを否定はしないだろうけど、かといってそこにおもねるようなこともしない。
むしろ、そうしてちやほやされる現状に対して「女は性の対象として存在しているわけではない」みたいな発言をして、女性から喝采されるということがあった。
そんなことがあって2ndアルバムがリリースされた頃、彼女は宣材写真で超ミニスカートを履いていたのだけど、それがフェミニスト連中の逆鱗(?)に触れて「言っていることとやっていることが違うじゃないのよ!」と絡まれたのだけど、それに対して彼女は「私は好きでこの服を着ているだけ、別に男がどうこうなんて知ったこっちゃないわ」的なことを言って応じたことがあった。
「なんでそんなくだらないことを気にして自分の好きな服も着れないのか、それがおかしいでしょ」という彼女のスタンスを通じて、実はフェミニストと呼ばれる連中こそが女性の生きづらさを助長していうなどという批判も生んだ(というか加速したというべきか)。
いずれにせよ、彼女にしてみればアイドル的にしか見てこない、あるいは扱わない男連中も呆れたものだが、そうして過剰に男目線を批判するフェミニスト連中にもふざけるなと言ったわけだ。
もし彼女が美人でなければ、きっとこんな議論にはならなかっただろう。
実際最近名前を聞かないけど、Gossipのベスもあんなにむちむちのボディコン服を着ているのにそんな批判は一度も出たことはなくて、むしろ自分を貫き通してかっこいい、と賞賛されたものだ(別にベスを批判する意図はまったくないよ)。
結局見る側が勝手にいろんなものを投影しているに過ぎず、そんなものに強く晒されるのが美人とかなんだろう。
不思議なもので、イケメンはそういう批判にはなかなか晒されないのにね。
そんな彼らも今年3rdアルバムのリリースを控えている。
多分何かしらで来日もあるだろう。
私はそんなに熱心なファンでもないし、そんなに一生懸命聴いていないけど、曲はいいしポップだし、ローレンの歌声には力強さもあるから、単純に音楽としてもいいのである。
エレポップ好きだし。
個人的には1stの方が好きだけど、2ndはもっとエモーショナルというか、大きな印象がある。
きっといろんな批判にさらされることも多かったので、気負っていた部分もあったのかもしれないね。
"Empty Threat"