音楽放談 pt.2

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サブカルチャーのカルチャー化 -Metal Gear SolidとDavid Bowie

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以前も少し書いたのだけど、ここ数ヶ月結構デームをやっている。

PS3盤の『Metal Gear Solid Ⅴ』である。

発売はもう5年くらい前になるのかな、ハード含めてまだやってんのか?と言われてしまいそうではあるが、このゲームは実に面白い。

もともとこのシリーズは大好きなので、正規シリーズは全てやっている。

敵を倒すのではなく隠れながら進むという革新的なコンセプトで一世風靡して、今でも根強くファンがいる。

開発者が会社と喧嘩したとかで、これ以降の続編はもう出ないのではないか、いや出るらしいといろんな話はあるものの、話は一旦着地している。

最初はファミコン盤だったかなので、正味20年以上前から続いているシリーズが、現在の最新作を持って1作目のストーリーに至っているという壮大さ。

ストーリーも単なるゲームと侮るなかれ、核兵器生物兵器、強化人間とかいろんな社会的、政治的なトピックもありつつ、イデオロギー的な話もたくさんあり、非常に重厚である。

初めてプレイした中学生の頃には、『Metal Gear Solid』のゲーム性に痺れて、半分意味がわからなかったがストーリーと演出に痺れて、謎を残したまま終わるエンディングでなんてクールなんだ、と衝撃を覚えたものだ。

まさか30過ぎてもやっているとは思わなかった。


で、このシリーズ最終章はこれまでのゲームシステムと異なり、オープンフィールドのステージになっており、フリーランニング型のゲームシステムになっている。

これまでのゲームでは、相手の基地に徒手空拳で潜入して、武器やアイテムは現地調達というのが緊張感を生んでいたわけだが、そうした緊張感はこの作品では減衰している。

その代わり、ひたすら広いフィールドを歩き回りゲリラ的に的の基地に入ったり、敵兵を拉致して仲間にしたり、遊び方は色々なのでこれが面白い。

自分の基地を作り、拡大して、人を集めて武器を作って、そのための資金を稼ぐためにミッションやって、みたいなことを繰り返すゲームなので、一応ミッションを全部クリアすればゴールとなるが、その気になれば一生できるかもしれない。

グラフィックも綺麗で、天候も昼夜も変わるため、そうした中を車で走ったり、ゆるゆる歩き回っているだけでも悪くないのだ。


このゲームはエンディングが尻切れだ、未完成だということでゲーム性自体は評価が高いにもかかわらず、否定的な意見も多数飛んでいることで、結局このストーリーはなんなのか?と言われているらしい。

すこし説明すると、このゲームでの主人公はくだんのファミコン盤のラスボスなのである。

このラスボスも元は伝説の傭兵で、いわば英雄だった男が悪に堕ちてしまうという設定だったのだ。

その悪に堕ちる過程を描くと言われたのがこの最新作なんだけど、結局そこを明確に描かれることはなかった。

だからユーザーからは未完成とか言われているわけだけど、ここに一つ作者の仕掛けがあると思っていて、このゲームではオンラインプレイができるようになっており、世界中のプレイヤーの基地に潜入してはスタッフを奪ったり資源を奪ったりできるのだけど、ゲームの中で核兵器を開発することもできるため、その核兵器を奪ったり廃棄したりすることもできるというのがミソ。

プレイヤーは誰かに潜入されて資源を奪われたりしないように武装を固めようとするし、核兵器も作るだろう。

基地は拡大して、戦力も増えていくと、いずれはラスボス化していってしまうという構図である。

なるほどなと思ったものだ。


で、今回あえて取り上げたのは、そうしたストーリーの妙もあって面白いということはあるんだけど、そのほかこのゲームのストーリーで下敷きにしていると言われているいくつかの小説があり、その中の一つがジョージ・オーウェルの『1984年』というもの。

SFディストピア小説家として有名な人なんだけど、ここでも全体主義や言葉の統制などを強いられた社会を描いている。

かなり狂人的な世界観ではあるが、話としては面白いし、最後ハッピーエンドにはならないあたりに好き嫌いが分かれるところではあるだろう。

ともあれ、そこで描かれる全体主義の怖さみたいなものをこのゲームでも踏襲しており、組織づくり、あるいはプレイヤー自身についてもいつの間にか普通の基準が歪んでいるような思いを抱かせる構図になっているのも、巧妙だと言える。

そのほかにもいくつか元にしているものがあるらしいので、それも追って読んでみようと思っている。


また、ゲーム中でも様々な音楽が使われており、80年代くらいの曲をゲーム中でもウォークマンで聞けるようになっている。

Joy DivisionやAhaなど、聞き馴染みのある楽曲を聴けるのもささやかな面白みなんだけど、全体として大きなテーマになっているのがDavid Bowieの曲である。

ボウイのアルバムでも『1984年』をモチーフにしたものがあるわけだが、そこから拝借したのだろう。

このストーリーの一つの終着として描かれるところでは、"世界を売った男"が流れてくる。

ちなみに組織の名前はDiamond Dogs(同名タイトルあり)だったりもするので、そうしたところも面白い。

同じ作品を参照していることもあっての起用だと思うけど、こうした多面的な引用って非常に面白いよね。


たかがゲームと侮るなかれ、テーマもストーリーもメッセージも、実によくできたゲームで、これは一つの文化として確立された世界だと言って差し支えないだろう。

異なる表現のものを同じテーマのもとで一つのパッケージにしようという発想もすごいし、何よりゲームとして面白いし。

たまには違う切り口で書いてみたけど、サブカルが時にメインカルチャーをも侵食する時があるのである。