テクノって、昔は全然聴かなかったんだけど、最近はそっちの系統も聴くようになった。
はじめは王道YMOだったりするんだけど、その後Craftwarkにさかのぼり、NINつながりでAphex Twinに手を出してみたり、興味本位でAutechreなんてのも聴いてみたりね。
そうした中で、いわゆるエレクトロニカってやつが非常に面白いと思うようになったのである。
エレクトロニカ、いわゆる音響系と呼ばれるやつで、かのRadioheadなんかも一時期かなり傾倒していたり、日本ではCorneliusが海外でも高い評価を得たり、かなりポップフィールドにも浸透している(そんなことはないか)。
音楽的な特徴としては、文字通り音が空間的な広がりを持っており、単に楽器がなっているというだけでなく、それらが如何に空間の中を飛びかうか、という視点で作られている音楽、とでも言うといいのだろうか。
ヘッドホンなどで聴くのに向いた音楽である。
もとをたどればPortisheadあたりにもルーツが見えそうな気はするけど、実際はどうだかそこまでは知らない。
NINなんかもかなり意識的には近いものを持っていると思うけど、なんか違うのかな、まあいいや。
音響系と呼ばれるアーティストの作品をそれほど多く聴いている訳ではないけど、ただ概して非常にきれいで流麗な音楽をやっている印象がある。
Corneliusなんかもそうだしね。
で、このほどようやく手を出したのがTortoiseというやつ。
音響系と紹介される事もあるし、ポストロックと紹介される事もあるため、どないやねん、と思っていたのであるが、聴いてみてなるほどと思った。
同時になんて滑らかな音楽なのだと思った。
この音が好きだと思った。
ポストロックと言ってイメージされたのが、結構激情な音楽であった。
友人に好きな人がいて、彼からしばしばそっち系のものを借りるのであるが、概して静と動の激しい交錯というのが特徴としてあげられるのである。
65DaysofstaticとかMogwaiとかね。
自分はこの手のやつって、どっちかと言えば好きなんだけど、それほど夢中にもならない、というのが正直なところであった。
そういう事もあって少し敬遠していたんだけど、後悔したよ。
なんてきれいな音楽なんだと思ったよ。
この種の感動は久しぶりだったな。
彼らが今もなおその名を刻んでいるゆえんの一つは、制作過程における革新というのがあるらしい。
ある機会を初めてモロ導入し、その後の音楽制作をがらりと変えさせた、という事であるらしいのだ。
まあその辺は完全に専門家の領域なので自分には全くわからないんだけど、音楽的にも前出のポスト系の先駆的存在となったことは伺える。
でも、そういうものはすべて脇においておいて、純粋に音楽に耳を傾けるだけでなんと心地よい音か、と思うはずである。
曲そのものの良さはもちろんなんだけど、アルバム通して曲のつながりも途切れる事なく、滑らか二つながっているのである。
曲間には展開が確かに変わるんだけど、それが季節の変化のように途切れなく、スペクトラム的に変化するのである。
聴いていると、情景すべてが感動的にすら思える瞬間もある。
素直にいいなあと思えるアルバムである。
リスナーレビューで、いい意味で意味のない音楽、と評している人があったが、これは言い得て妙だね。
確かに強く感情を揺さぶるような音楽ではないだろうし、そういう意図も感じられない。
純粋にきれいなだけの音楽であり、そういった質的な部分がポストロックの始祖的扱いを受けるゆえんであろう。
オルタナ期に自身を吐露する事が過剰になりすぎた事に対するカウンターがこれである訳である。
そういう意味では、インストではあるが決して聴くひとを選ぶような音楽ではないだろう。
単純に心地よいのである、てさっきから同じ事ばかりかいているね。
なんにしても、これはいい音楽を買ったな、と久しぶりに発見感(思い切りメジャーだけど)もありつつ、また素直に癒されて、素敵な音楽ですよ。
ちなみにジャケットの絵はメンバーの一人がレコーディング中に行った落書きをそのまま使ったそうだ。
大学ノートのような横線と脱力系ないい不明の絵は、期せずしてこのアルバムの性質をよくあらわしている、かも知れない。