一頃ポストパンク/ニューウェイヴ系ばかり聴いていた時期があった。
70年代終わりから80年代に掛けての時代の音楽ね。
最初はJoy DivisionかKilling Jokeだったと思うけど、それ以降Talking Heads、Gang Of Fourとか、そういうのをいっぱい聴いていたね。
それでも不思議とNew Orderはなかなか手を出さなかったし、未だにまともに聴いた事がない。
別に理由がある訳でなく、単純に時期を逃したんだと思う。
自分の中のね。
まあ割とエレクトロ系では重い音の方が好きだった事もあるとは思うけど。
いわゆるピコピコサウンドが今一ピンとこなかったのである。
もっともまともに聴いた事ないから完全にイメージだけで聴かなかった愚か者なんだけど。
80年代はそうしたエレポップも隆盛を極めた時代であった。
Culture ClubとかDuran Duranといったアイドルチックな人気を持ったバンドも世界的に有名になったしね。
シンセを多用した軽やかでダンサブルなサウンドは、華やかではあるがある種の刹那性もあって、どこか時代の空気に合ったのかもしれないが、私はリアルタイムではないのでそこまでは知らないし、今のところそれほど興味もない。
その種の音楽をやっていた人はどういう訳か、ゴス的な空気の人が多かった。
ほとんど女装のような出で立ちが、浮世離れして見えただけなのかもしれないけど、今に至る音楽とファッションに多大な影響を残しているのは間違いないだろう。
音楽性とファッションが結びつく例は昔からあるんだけど、一番強烈なものの一つかもしれない。
で、そんなエレポップ全盛な頃に出てきたバンドの一つにDepeche Modeがある。
彼らは本国イギリスはもとより、アメリカでも絶大な評価と人気を誇るバンドであるらしく、彼らを影響源に挙げるアーティストは多い。
NINやスマパンのビリーなんかも公言している。
デビュー当時は他のバンド同様アイドル的な側面が強かったようであるが、次第に音楽性を高め、ダークなフィーリングとゴシックなムード、そしてポップさも併せ持つと同時に宗教的な雰囲気もまとっていき、今に至も活動中のはずである。
非常に西洋的な世界観のマッチするバンドであろう。
今日取り上げるのは、そんな彼らの最高傑作との呼び声も高い「VIolator」というアルバム。
そもそも私が彼らに興味を持ったのは、Marillyn Mansonが彼らの"Personal Jesus"と言う曲をカバーしていた事に端を発する。
カバーがかっこ良かったし、当時はマンソン大好きだったので、これは是非に、といって興味を持ったのですね。
原曲にほぼ忠実なカバーであったので、それとのギャップは感じなかったが、ムードは明らかに違っていた。
オリジナル版はより以上にダークというか、暗闇で音が鳴っているような印象であった。
マンソンよりも低い響きのヴォーカルで、かつシンセの音も相まって、歌詞の世界観をより強く感じたのであった。
最初は本当にこの曲だけ聴ければいいや、くらいだったんだけど、聴いているうちに他の曲もいい曲ばっかやん、と気づき、アルバム通してすばらしいやんけ、と気づいたのである。
最初の曲は、ゴスなエレポップと言った風情の"World in My Eyes"。
既にこの時点で別の世界が広がり始める。
隙間の非常に多い音で、今風なエレポップのような派手派手しさとはほど遠い、静かな世界を繰り広げている。
続く"Sweetest Perfection"では、ややヘヴィなムードと暗鬱な曲調が一見さんを追っ払うような感じもする。
この曲を聴いていると、ヴォーカルのエモーショナルなようでどこか淡々とした独特の味わいがあるように思う。
"Personal Jesus"を鋏んで"Halo"では更に深みにはまっていくような曲である。
"Personal Jesus"というのは不思議な曲で、ポップなんだけどどこか冷めている感じがして、暗い気分にはならないけど妙に冷静にさせられるのである。
続く"Halo"が激しさのある曲なので、この辺の構造は巧みである。
劇的な展開も伴ってかなり覚醒レベルはあがる。
と、ここでアルバム中もっとも静かな名曲"Waiting For the Night"。
この曲は一番好きだね。
まさに夜の風情。
あったかくはないけど、包み込むような優しさも感じさせるこの曲のフィーリングはたまらない。
このまま死んでもいいんじゃないか、と思うくらい心地よい暗闇に包まれる感じ。
全然不気味でもないし、ひたすら心地よい曲である。
都会の夜の公園で、一人夜空を見上げるような、そんあ気分である。
この曲は名曲だよ。
で、次はこれぞエレポップという"Enjoy the Silence"と言う曲。
タイトルの割には一番明るい調子の曲で、でも能天気さは皆無。
この辺りがこの音楽性一群のポップ性の特徴かもしれないね。
続く"Policy of Truth"も比較的軽い調子で、80年代的エレポップの空気を存分に味わえる曲。
"Blue Dress"は、聴いていると少し切なくなってくるような曲であるが、ムーディで綺麗な曲である。
映画の一場面に使われていてもいいくらいの情景的な曲である。
この曲のアレンジには、特にNINなんかも影響受けていそうなものを感じる。
そしてラストは"Clean"と言う曲。
最後にこいつをもってくるか、と言いたくなるような最もダークな曲である。
多くのエレポップ系のアーティストが陽性なのに対して彼が独特に写るのはここら辺のセンス故かもしれない。
曲が進むにつれてより凝っていくようなアレンジも素敵な1曲である。
ドラムの響きも大好きである。
総じて暗いムードで、終盤に向かうほど深みにはまっていくような音楽は、残念ながら太陽の光が似合う者ではない。
しかし、夜がこれほどハマるアルバムもそうないですよ。
曲はどれもいい曲ばかりで、ジャケットのイメージも相まって傑作というのもなるほどうなずける。
取っ付きやすい曲こそ多いとは言わないし、好みは別れるとは思うけど、静かに耳を傾けるべき音楽である。
ところで、彼らのを聴きながら、Faintなんかもきいていると、そこかしこに彼らの陰を感じるのである。
マンソン然り、NIN然り、スマパン然り、やはり私はどうもこういうゴス的な空気って好きみたい。
でも、最近はやりのマイケミとかみたいなエモ系とは響かないあたりが、みそだね。
好みの別れるジャンルだし、明るい音楽性とは思わないけど、自分と向き合おうというときにはいい音楽である。
私は自分と向き合ってばっか、て言う事かしらね。