音楽放談 pt.2

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ステップアップは劇的に ―The Faint

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Radioheadはいつまでも賞賛されている。

音楽性の高さと革新性、そして変化を繰り替えずその姿勢に、志の高さも賞賛の対象となっている。

アーティストからの支持も高く、もちろんマスコミも絶賛。

リスナーからすれば、好き嫌いのはっきり別れるタイプであるが。

私は彼等をどちらかと言えば好きだし、借りたものもあるが一通りアルバムも聴いている。

好きな曲もあるし、今一な曲もある、という、それほど大きな存在ではない。

だけど、「OK Computer」はすごいと思いながら聴いたな。

ちなみに大学の頃の先輩は「勝手にしてくれ」という評価であった。

ま、はっきり言って暗いし、ネガティヴだし、あんなものを真剣に聞き入っている奴があればさすがに少しは心配になる。

知ったふうな口をきいて、みたいな気持ちもわからんではない。

主張の強い歌詞を書くので、そこら辺りは仕方ないとは思うけど。


彼等は恐らく現在とデビュー当時では、音楽的にはかなり印象が異なると思う。

かつては3ピースギターロックバンドとして認知されていたし、実際「Bends」あたりはその最高峰的な扱いになっているきらいがある。

今の音楽性に近づきつつあるのは「OK Computer」以降であろう。

世界観的には「Kid A」以降が顕著か。

各誌で、世界で2000年代の最重要アルバムに推される作品であるが、個人的にも一番好きな作品でもある。

私が如何に病んだ精神を持っているかがバレてしまう。

ここ最近の2作は、かなりポップに寄っているし、特に「In Rainbow」あたりは極めてコンパクトであるし、"Bodysnatcher"なんかはまれに見るポップソングである。

次を作り始めているというが、果たしてどんな作品になるのか、やっぱり変化が茶飯事だとそのあたりに焦点がいってしまうのは世の常か。


これだけ書いておいて、今日書こうと思っているのは彼等ではない。

個人的には最大級の賛辞を贈っても良いと思っているが、世の中的にはそれほどでもない、というバンドである。

その名もThe Fain。

4~5年前くらい全盛期を迎えたポストパンリバイバルブームとやらの火付け役の一人にして、そのブームの最大の功労者の一人であり、それ故に被害者ともいえるバンドである。

Depech Modeとか、Nine Inch Nails辺りの影響をかなり感じる楽曲を得意としている。

いわゆるニューウェイヴ的なリズムがありながら、そこを現代的な引き算の美学でもってうまくまとめた、非常にハイセンスなバンドである。

シンセを用いたダンサブルなロックという形態が、完全に消費され尽くしてしまった為、元々オリジナリティ(といってもリバイバルですから過去の参照点があるわけですが)が、すっかり色褪せてしまったかのように。

しかし、彼等の本当の魅力というのは、そのアレンジや曲そのものの構造、やけに冷めたような内省的な詞の世界観、そして圧倒的なライヴパフォーマンスであり、決してブームごときでがたつくようなやわなバンドではない。

世間があまりに浮気なだけである。

実際、昨年の彼等の来日公演は最高に良いライヴであった。

個人的にはベストライヴの一つにもなっている。


そんな彼等の音楽と言えば、既に触れたようにシンセを用いたダンス的要素の強いものである。

ギターの入れ方やれなんやれに何かとセンスを感じさせるすばらしい才能な訳であるが、デビュー当時はかなり印象の違う楽曲をやっていた。

いわゆる普通の音楽ではないにしろ、ややエモ入った感じで、曲もダンサブルというよりはともすればしっとりというか。

まあ、ぶっちゃけぱっとしないともいえる。

決して悪くない。

だけど、パンチがないと言うかね。

当時はシンセなんて使ってないし、割と普通のロックバンドという感じで、この音楽のままであったら私は彼等を知る事はなかっただろうと思う。


「Media」と名付けられたこのアルバムは、既に輸入盤ですら入手困難となっている。

amazonあたりならまだ買えるかもしれないけど、注文してから手元に来るまで結構かかったのである。

世の中にどれだけ流通しているかも定かではない。

ここに聴ける音楽というのは、ある意味Cursive辺りと感覚は近いのかもしれない。

あの辺りの連中は非常に親交も深いしね。

Bright Eyesのコナーが、かつてFaintメンバーとバンドをやっていた、という話を聴いたときにはいささか不思議に思えたが、このアルバムを聴くと少し合点が行く思いがする。


ぶっちゃけ私はこのアルバムを初めて聴いた時、なんてぱっとしないんだ、と思い、2回くらい聴いてそれきり聴く事はなかった。

当時は私の中でFaint熱が半端ではなかったので、その期待値ゆえの反動ともいえる。

すでに2nd以降は聴いた事あったので、ここでここまで変わるとはつゆとも思わなかった。

ヴォーカルの唄い方もかなり印象が違って、かなり感情的というか、湿っぽい唄い方をしていたので、その違いにもかなりびっくりしたし、なにより自分の中のFaint像を欠片も感じさせなかったのである。

曲に寄ってはかすかに片鱗が見えなくもない、程度であった。


しかし、最近改めて聴いてみると、存外悪くないのである。

もちろん大好きという事はないにしても、これはこれでありなアルバムだと思う。

今のライヴでは決してやらないであろう楽曲ばかりなのも面白い。

あえてこの楽曲群を、今のFaint流にアレンジしてみるのはかなり面白い企画になると思うが、まあやらないだろうね。

是非聴いてみたいけど、全く別の曲になるだろう事は想像つく。

まあ、実現しないだろうから想像は越えないだろうけどね。


彼等が一挙に注目を集めるようになったのは、2nd以降、シンセを導入して以降である。

「Blank Wave Arcade」では、今の彼等らしさを感じる事が出来、こっちがデビューアルバムだったらどれほど衝撃であったか。

続く「Danse Macabre」で世界的な評価を獲得し、他のバンドとのシンクロニシティ的にリバイバルに火がつく。

その後はブームの憂き目に遭って、彼等なりの努力の末「Wet From Birth」を制作、パンキッシュな色の強い楽曲が新基軸として一定の評価はされたものの、ぱっとしないなどと言われてしまって。

めちゃくちゃ良いアルバム、良い曲だと思うけどね。

"Pananoiattack"なんて最高傑作の一つだと思うよ。

そして最新作「Faciination」では、逆に好きな、得意な曲を作りました、という貫禄すら感じさせるもので、雑誌は一応取り上げる程度であった。

非常に完成度の高いアルバムでは遭ったが、刺激的ではなかったのも事実かもしれない。


冒頭のRadioheadが、あのキャリアで今なお変化を体現しているというのは、実際すごい事である。

世間的にも、とにかく変化すること、それも劇的な変化を繰り返す事をよしとする傾向が見受けられる。

それはわからないでもないし、自分とてその傾向は時にある。

彼等の場合、極初期においてその変化をもたらした訳であるが、それ以降はそれほど大きく変化したわけではない。

その1回の変化が彼等のキャリアにとっても世間の評価においてもあまりに劇的であったため、その後のキャリアもちょっと大変になったのだろうけど。

でも、変わらないから悪かといえば、もちろんそんなことはないのである。

その人にはその人の持ち味があり、強みがあり、それをより研ぎすます事が何故悪いのか。

出来上がったものが良いものなら、それに尽きるように思う。

彼等はもっと評価されても良いバンドである。