音楽放談 pt.2

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音の隙間で踊る音 ―Vampire Weekend

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年の瀬も近づけば、そろそろ今年のベストアルバムは何だろうか、という話が各方面で持ち上がる。

結構雑誌ごとに違うから、色々な雑誌の方向性なんかも反映されるため、毎年興味深く見ている。

昨年はやはりというか、年末に滑り込んできたRadioheadが掻っ攫っていった。

次点にはWhite StripesやArcde Fireが日本では人気であった。

世界的にはLCD Soudsystemがかなりの評価を集めていたが。

今年はかなり平均点は高いが、一方で突出したものがあったかというと、少し印象に薄い。

単に私が聴いてないだけだとは思うけど。


で、そうした中の1部門とも言うべきが、新人賞であろう。

すなわち今年デビュー組の中のベストである。

今年は例年になく良質な新人バンドがデビューした。

確かに過去を参照してはいるが、どれもオリジナリティがあり新鮮で、しかしポップで聴きやすく、でもすぐには飽きない魅力のある音楽で、いい年であったよ。

ロックとは言うものの、もはやロックのカテゴリには収まりきらないよう複雑な音楽性のもが多数で、ますますカテゴリ化が無意味な世の中になってきた。


そんな中で、個人的に今年のベストはVampire Weekendである。

邦盤では「吸血鬼大集合」なんていう馬鹿丸出しのタイトルをつけられてしまっているため、人によっては色物のように捕らえてしまっているかもしれないが、そんな理由で聴かないのは圧倒的にもったいない。

NHKの子供の歌にも使われそうな牧歌的な空気すらある陽気さと、どの曲も耳に残るメロディもあり、批判性に
富んだ歌詞もある(といっても、全部きちんと読んだわけじゃないけど)。

本当に隙間抜群のスッカスカな音ながら、抑えるところは抑えているのでノリノリである


このバンドをはじめてみたのはPVでであった。

非常にコミカルで、ともすれば安っぽいつくりであるが、とても楽しいビデオである。

ぱっと見た瞬間はOK GOとかかと思ったんだけど、いままで彼らの曲はいいと思ったことはなかったし、そもそも曲の雰囲気も違う気がするな、とおもったらやっぱり違った。

観ると見覚えないけど、雑誌をめくったらすぐ出てきたのですぐわかった。

こりゃいいのう、というわけで早速買いに走る。

でも、ちょうどあと1日待てば日本盤が出る、というタイミングであったのだが、我慢できなくて洋盤を買ったのであった。

ボートラがつく分、やっぱり1日待てばよかったと少し後悔したが、件の邦題があまりにもひどいのでプラスマイナスゼロといったところか。


それはともかく、久しぶりにわくわくしながら盤おまわしたのであるが、いやぁ、よかったよ。

こういうテイストは大好きである。

1曲目"Mansard Roof"の、キーボードの音からすでにおお!とおもった。

その後のドラムやギターなんかの音も混じってなおスカスカながらこのノリは何かしら。

2曲目はまた違った雰囲気の"Oxford Comma"は、正直はじめは普通かな、とか思ったんだけど、曲の展開の如くじわじわときた。

で、3曲目は件のPVの曲"A-PUNK"である。

のっけからノリノリで、ライヴでもやはり一番の爆発力を持っているね。


雑誌なんかでもTalking Headsなんかからの影響が指摘されるが、自分はヘッズはまだ2枚しか聞いたことないのでそこまでわかんないんだけど、歌い方とかヴォーカルのリズムは確かにそうかな、と思う(違うかな)。

割とアフロファンク的な要素もふんだんに感じられ、いわゆるロック的な文脈ではないだろう。

そう言う部分はやっぱりヘッズかなと思う。

かの有名な「Remain in Light」で、デイビット・バーンの自身のアルバムに対する発言の中に「これはもはやロックではない」というのがあったが、彼らのアルバムもそういう側面があるだろう。

これを聴いてロックや!!と思うのは、おそらくロックに対する解釈が相当高度であろうと思う。


閑話休題、アルバムはそうしたアフリカンなノリを持ちつつ、ポップでようきな世界を展開していく。

駄目な曲がなく、どれもそれぞれに違った部分があり、それぞれで比較するということはナンセンスなので、聴いていて飽きない。

まあ特に好きなのはもちろんあるけどね。

アルバムの構成としても、"I Stand Correctred"、"Walcott"から"The Kids Don't Stand a Chance"へのラストの流れもすごくいい。

心地よい余韻を残してフェイドアウトしてゆくプロダクション?も実に効果的。


また、彼らの音楽にはそこはかとなくインテリジェンスが漂っているのもいいね。

別に変なエリート意識とかではなくて、いわゆるわかってるねぇ、て奴。

まあ感性の赴くままに作られた音楽は、それはそれでもちろんいいんだけど、一方でそこには限界があると思う。

彼らの音楽は確かに破天荒な勢いはないため、ロックをロック的にしか捕らえられない人は多分好きになれないだろうと思う。

でも、個人的にはいつまでも革ジャン着てウエ~とかやってるのがロックだと思ってることほどロックじゃないこともないと思うけどんね、まあいいや。


ともかく、相変わらず貧相なヴォキャブラリーではあるが、今年一番自分を魅了した新人は彼らにである。

サマソニでのライヴもよかったし。

何故か客入りはスッカスカだったけど、もったいないなあと思いつつ悠々と観れたのでよしとしよう。

今度は単独での公演に期待である。


それにしても、やはり邦題はありえない。

どう考えてもアーティストの音楽を貶めているし、そもそもどういう意図でつけられたのかもよくわからない。

最近また邦題をつけられるものが増えてはいて、どれもかなりひどいセンスないものばっかだが、その中でも最低の最低ランクである。

彼らの音楽とは裏腹に、インテリジェンスの欠片もないね。

売れ線のものなら別にどうでもいいけど、キチンとしている人にこういう扱いは最悪だね。

どこのレコード会社かはしらんけどさ。