音楽放談 pt.2

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悪意と狂気と欲望と ―Ministry

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アメリカ人の中でもアメリカという国に批判的な人は結構いるようである。

それは政治に対してなのか、国民性に対してか、あるいはその文化に対してか。

まあ、それらを含めたアメリカという総体か。

私はアメリカ人ではないので解りませんが。


そんアメリカをある側面で象徴しているような音楽は、しばしば現れる。

時に全世界に影響を及ぼすほどの強烈な個性と普遍性を同時に備えたものであったりもする。

冷静になって、一歩引いて考えたら「アカンやん」という類の音楽であっても、時代性が伴って受け入れられるから、必然性と偶然性は紙一重であろう。

Nine Inch Nailsなんてまさにそんな音楽である。

彼らを一躍世界の寵児に押し上げたアルバムといえば、いわずと知れた20世紀のインダストリアル・メタル/ノイズの金字塔「Downword Spiral」である。

機械的で破壊的でノイジーで歪な音楽に、世界に対する嫌悪感、そして自分に向かう憎悪と、これだけ要素を並べただけでも十分病気な音楽であることは間違いない。

しかし、その時代には世界の多数がその病気性に共感し、ラジオからは「I wanna Fuck you like an animal」という強烈な唄が流れた。

まさに時代を象徴するアルバムであると共に、その独自の音楽性圧倒的なプロダクションは、時代を経てもなお刺激的で、聴くたびに発見があるようなすさまじい音楽である。

しらふではなかなか聞けないかもしれないけど。

まあ、NINについてはまた追々改めて書くとして、今日はそのNINに絶大な影響を与えたバンドのひとつであり、インダストリアル・メタルという手法を確立させたバンド、Ministryについてである。


先ごろその活動を休止(解散ではないはずだが)したこのバンドは、アル・ジュールゼンセンという一人の男によるバンドであるといえるであろう。

全盛期にはポール・パーカーという相棒が居たが、昨年のツアー写真には既に居なかったので、どこかの時点でやめてしまったのであろう。

私はそこまでこのバンドを追いかけているわけではないので、バイオ的な要素は省いてしまおう。

最初に聴いた彼らのアルバムは、かの有名な「詩篇69」という奴。

原題はギリシア文字表記されており読めないのであるが、彼らの一番メジャーな代表作といえばこのアルバムであるようだ。

しかし、ファンの間ではそれ以前の「Twitch」もしくは「Land of Rape and Honey」を挙げる者が多い。

前者はまだ聴けていないが、後者は聴いて、なるほどと思った。


何かのレビューにも書いてあったが、この音楽は工業地帯の無機質で、油臭くて、やたらゴツゴツした印象の音である。

1曲目のイントロがかなりかっこいいんだけど、ドラムから始まって歪んだ雄たけびと共にギターやその他の楽器も入ってくるのであるが、その悪意に満ちたような音は凶悪で、ノイジーで、でもかっこいい。

彼らの音楽にはヴォーカルがはいっているのであるが、どれもなにを言っているのかは判然としない。

もともと容易に聞き取れるほどの英語力はないが、それでも極僅かな断片しか聴こえなさすぎである。

ちなみに日本盤には聞き取れないという理由で歌詞も対訳も記載されていない。

そう言う部分も含めて、非常にいやらしい音楽である。


しばしばKilling Jokeも引き合いに出されるが、彼らの音楽は確かに凶暴であるが、別に憩い重視ということはないし、むしろそれゆえに迫力を帯びている。

ポップなんてクソ食らえ、とでもいいたげな空気が音にも満ちている。

だから、嫌いなひとははっきり嫌いだと思うはずである。

そこには聴く側に対する何かしらの感情は一切感じられないし。

でも、曲そのものは結構ポップで聴きやすいものも多いため、個人的な評価は高い。

それに、なんのかんの言っても、やはりこれは聴いてみる価値のあるアルバムだと思う。

Killing Jokeが一昨年くらいに新譜を出して、昨年はフジにも出演し、、今年は単独で2日間やり現役感を発揮したわけであるが、彼らは初期のインダストリアルの萌芽のような音楽性では既になく、むしろへヴィロック的な色合いが圧倒的に強いわけであるが、彼らが今でも彼らであるが所以は、いわゆる単純なメタルではないあたりである。

非常にミニマリスティックなビートの反復であったり、実は遅いBPMであったり、そんじょそこらのバンドなんかとはやはり一味違うのである。

ミニストリーについては一時代のものしか聴いたことないからよくわからないが、一応いくつかインダストリアル系の括られるバンドを聴いた中では一番ポップだし、オリジナリティを感じた。

これぞインダストリアルでありながら、誰も真似できないような音楽であろう。


ちなみにひどいアルバムタイトルであるが、直訳すれば「蜂蜜とレイプの国」となる。

それはまさにアメリカを指しており、非常に言いえて妙なタイトルであると思う。

まあ、解釈は各自に任せるとして、なんだかむしゃくしゃするわ、とか、毒づいてみたくなったときに聴く音楽としてはもってこいであろう。

とにかく聴いてね!!と、全力でお勧めするつもりはサラサラないが、ポップ性を感じない、共感を求めない感覚を味わいたい人は、一度聴いてみるがよかろう。

後は個人の趣味の問題ですから。