音楽放談 pt.2

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ポケットに穴、政治にも穴 ―Hard-Fi

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最近では、サブプライム問題に始まり、リーマンブラザーズも破綻して、世界的な恐慌状態にはいっている。

不動産業者も今や叩き売りのような状態だし、資源コストの上昇に伴い生産関係はいっせいにリストラ策をとり始め、世界的な超大手企業でさえ差し迫った対策が必要となっている。

そんな中で、ここ数年で急増した派遣社員の連中は最初に首切りの対象となっており、非常に大きな問題と化している。

ちなみに、内の兄貴も某自動車企業の期間工として働いていたのであるが、10月はじめに世間に先んじて首を切られ、今はどうしているか知らない。

幸いにして自宅暮らしであったので、食うにも住むにもとりあえずは困っていないが、世知辛い世の中である。

まあ、身内からすればちゃんと社員になれよ、と思うのであるが、事情があるんだろうと思っている。


それはともかく、こうした情勢の中、内定をもらった大学生はいきなり取り消され就職浪人を余儀なくされているし、失業者も路上にあふれるという不安が非常に大きくなっている。

それに対して政府は手を打とう、などといっているが軽率な頭をしたがイヤイヤしながら外野にもつつかれているため、非常に不安定かつ方向性も定まらず、当てに出来たものではない。

おそらく数年は厳しかろう、なんていわれている様であるが、ついに日本も資本主義の影をガッツリと味わうことになりそうである。

海外に目を向ければ、アメリカ始めイギリスでも格差があるのは当然のような社会だし、日本と違い働きたくてもバイトすらないような状況もザラという話も聞く。

そんな社会においては、音楽の世界でも声を大にして現状を訴えようとするものも多くなる。

そういうストリート系のミュージシャンというと、アメリカでは社会的な弱者の代表格のような黒人の文化から生まれたヒップホップがそうであろう。

いまや黒人が大統領になっているので、そうした数々の闘争も報われるときが来るかもしれない。

また、イギリスにおいては、割とこれだ、というものはないけど、いわゆる労働者階級によるロックはしばしば世間に衝撃を与える。

今やセレブレティの代表格のような存在となったOasisも元は労働者階級のどチンピラである。

その成り上がりっぷりは多くの人の共感を読んだわけであるが、最近ではなんといってもHard-Fiであろう。


ヴォーカルの風貌もリアムそっくりな感じで非常に親近感を持つ彼ら、最近お洒落でかっこいい奴の多い中では一際個性的である。

不細工ではないけど、ぶしょったくて、しかも服のセンスははっきり言って悪い。

でも、彼らの音楽を聴けばそんなことはどうでも良くなってしまう。

彼らの場合音楽的にはClashが引き合いに出されるが、自分は聴いたことないのでよくわからない。

でも、ダブとレゲエとソウルという要素が非常に強いというのは確かである。


ただ、個人的に彼らを好きになった理由は、1曲目"Cash Machine"の歌詞である。

あまりの悲惨さにもはや笑えて来るほど泣ける歌詞である。

金を引き出しに行ったら残金ゼロ、クレジットカードもストップされて、帰りの電車賃もない。

無賃乗車を試みようとするときに限ってちゃんと駅員が居る。

磨り減る毎日。

そんなぎりぎりの生活の中で彼女は妊娠、何とかなるでしょ、なんて彼女は言うけど、俺に人の親なんて無理だよ、今夜夜逃げしちゃお、なんて情けないやらなにやら。

挙句「ポケットに穴が開いてるんだ!!」の叫びである。

日本で「僕寂しいの」「愛は永遠さ」なんて生ぬるいだけの世迷言をのたまう唄がバカバカしく思える切実さ。


一方めちゃくちゃ軽い曲もあったりする。

Hard to Beat"は、「めっちゃ好み、俺と遊ぼうぜ」という唄。

能天気すぎて最高である。

ただ、こうしたバカバカしさの裏にはやはり切実な現実があり、楽しけりゃいいじゃん、なんていう楽観的な姿勢は皆無である。

後のない刹那的な悲壮感が漂っているのである。

でも、だからといってメソメソしくはないし、むしろそんな中でも今をいかに生きるか、みたいな前向きさも感じられ、ぜひ聴いて反省すべきであると思う。


ところで、彼らは現在までに2枚アルバムを出しているのであるが、彼らのアートワークは基本的にすばらしい。

非常にシンプルでありながら、みれば一発で覚えるし、遠くからでもそれと解る。

そして、メッセージを非常に端的に表しているため、反抗としてのアートという側面も併せ持っている。

1stは監視カメラのシルエットとなっており、裏を見ると監視カメラ映像で写されたメンバー写真になっている。

その写真の構図も、いかにも監視カメラ的で、一貫性がある。

まあアルバムタイトル自体も「Stars of CCTV」であるしね。

タイトル曲は「俺たちはCCTV(Closed Circuit TV)のスターだ!!」というサビなんだけど、ストリートの悲惨な生活を送る者に対して政府のやることは治安維持の名の下の国民の統制でしかない、とでも言いたげなのかな、と思う。

ちなみに2ndは文字がバーーンと乗っているだけの、これまたシンプルなデザインなんだけど、その文字がまたね。

改めて載せようと思うけど、興味のある人はチェックしてみてね。

ここ最近ではダントツにいかしたデザインであったと思う。


日本でも何年かの周期でこうした不況の嵐が吹き、そのたびにリストラにあった人たち大声を上げている。

でも、本当は普段からもっと日本人は政治に対して、社会に対して、色々声を上げなければいけないのかな、とは思うね。

何不自由のない内は、その状況が壊れるのがイヤだから何かするのも億劫になるんだろうけど、何かあってから声を上げてももう遅い場合て、少なくないものね。

自分も含め、もっと主体的な姿勢であるべきなんだろうと思うよ。