音楽放談 pt.2

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笑う陰には... ―Dead Kennedys

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私は結構ブラックユーモアが好きである。

あるいは皮肉とかね。

思いっきり笑えるんだけど意味を知ると笑えない、とか、逆におかしいけど笑いをこらえざるを得ないような状況とかね。

皮肉って言うのも、面白くてよいね。

得てしてプッと吹き出す程度ではあるが、皮肉って言うのは通じる相手に言うもよし、通じない相手に言うもよし。

知性の試される遊びである。

自分は気分が悪いとやたら毒づいてしまう癖があるが、しばしば皮肉っぽくものを言う。

そのため、あんまりひどいと本当に周囲がひいちゃってしまったな、と思う事もままある。

それじゃあ駄目なんだが、やはりユーモアってのは難しいよね。


80年代というのは、アメリカの音楽シーンにおいてはきわめて重要な時期であると思う。

いわゆるヘアメタルが横行し、クソッタレたバンドや聴くに耐えない下らない歌ばかりじゃないか、という人も多かろうが、一方そうした非現実的な音楽があったために反作用的に90年代のオルタナティヴは大きな力を得たと言えるだろう。

そんな80年代の幕開けに、アメリカでもラモーンズに代表されるようなパンクがじわじわと広がりをみせていた頃であろう。

いわゆるハードコアと呼ばれる、攻撃的で激しい音楽をやる人々も、次第に拳を突き上げ、声を上げるようになる。

社会とロックはやはり切っても切れない関係にあるのだろう。

もっとも殊日本においては、闘争の手段としての音楽よりも、よりパーソナルな自己表現とそれによる社会とのコネクトというのが音楽の発展の基礎にあったように思う。

そういった意味で今に至るも高度に社会的なバンドはきわめて少ない。

政府もよくやっていたのかもしれないけど。

まあそれはともかく、そうしたアメリカのハードコアシーンを代表するバンドの一つがDead Kennedysであろう。

過激と言うには申し分ないバンド名である。

また、原題は直訳すると「腐った野菜のための新鮮な果実」という具合なんだけど、邦題がまた過激なものがつけられている。

バンド名にちなんで「暗殺」である。

ジャケットの写真も伴って何て秀逸なタイトルだろうと本当に感激する。

この頃のレコード会社に人って本当にセンスあるよ。

それに比べて最近のは本当にひどいもんな。

まあいいや。


で、このバンド、過激なのはもちろん名前だけではない。

1曲目のタイトルは"Kill The Poor(貧乏人を殺せ)"。

なんてことをいうのか。

昨今の日本にあってはこんな曲即発禁だろう。

また、"Let's Lynch The Landlord"、"I Kill Children"、"Holiday I Cambodia"など物騒な言葉が並んでいる。

不謹慎だ、こんな馬鹿どもさっっさとだまらせろ、と即座に言うようなやつは馬鹿である。

そういうやつほど社会にとっては害悪そのものである。

これらはまあ過激すぎる面はあるにせよ、その背景にあるテーマはきわめてシビアで重要である。


例えば"Kill The Poor"は一部の特権階級に対する痛烈な批判的意味合いを持った曲である。

爆弾一発で貧乏人をぶっ殺して、浮いた社会保障費でパーティでもしようぜ、という歌詞は、もちろん攻撃対象は政治家である。

善人ぶってたいそうな御託を並べてはてめぇの利益しか頭にないクソやろう共に対する強烈な皮肉である。

彼らの曲はこうしてすべての歌詞が非常に社会的で、辛辣で、それでいて絶妙な視点から描かれており、しかし表面的にはきわめて不謹慎であるという、要するにブラックユーモア全開なのである。

ある意味ではそうして表面的にしかとらえられない偽善者をあぶり出すようなものになっていると言えるかもしれない。

System Of A Downなんかもかなりユーモラスにシビアな問題を取り上げ、少しでも多くの人間の意識を刺激する事を目的としているように、彼らもそうしてあえてはやし立てるような態度をとているのかもしれない。

実際、このバンドの核でヴォーカルのジョン・ビアフラという人は様々な社会活動に打って出ているし、同様のハードコア系のバンドをフックアップすべくレーベルも確か経営しているはずである。

たしかアメリカではかなり有名な上、現在活動しているアーティストでも彼をリスペクトに挙げるものをしばしば見かける。


このバンドの面白いところは、こうして過激で強烈な歌詞を書く割には、曲は比較的ポップで、時にふざけているのかと思えるようなものもある。

また、ヴォーカルの歌い方もきわめて特徴的で、Talking HeadsのDavid Byrnがもっとブチ切れた、とでも言えばよいだろうか、そういう歌い方をするため、英語のわからない日本人にはぱっと聴いた分にはそんな事歌っているとは思えないような曲である。

でも、ギターの音色は割と不穏さもあるため、やっぱりかなり意識的にこういう音を作っているんじゃないかな、と思う。


まだ1枚しか聴いた事ないのだが、これはぜひ聴いてみる価値のあるアルバムと思う。

昨今政治不信や社会不安などが増大する中で、それでも日本人は声を出さない。

派遣切り、なんていう呼称で契約切れ前にきられた連中がこぞって「僕たちの暮らしをどうするつもりだ、責任とれ」なんて訳の分からん事を言っているが、こうして我が身に不幸が降り掛からない限り、まあ無理して変えようとは思わないよね。

変わった途端自分の暮らしがまずくなる可能性もあるんだから。

安定とは常に不安定の不安をはらんでいるわけであるからね。

それでも、今後日本社会をすこしでもよくするためには、政治介入しているどっかの宗教団体や、あるいはそれを許しているどっかの政党をなんとかするためにも、もっとがんばらないとね。

ま、社会なんて言う得体の知れないもののためにわざわざ遊ぶ時間を裂こうなんて言う奇特な人間は極まれで、やっぱり自分のある程度の幸福が保証されている(かに見える)間はそこに甘んじるのが、人情ってやつだろう。

それは、仕方ないけどね。