最近の若手バンドは音楽的な語彙もさることながら、非常にテクニカルなバンドが多いと評判である。
実際楽曲の複雑さは明らかで、果たしてこれを以下にライヴで表現するのか、というのは興味深いところである。
そういう連中の多くはライヴでの評判ありきなので、ライヴはやっぱりすごいらしいけど。
是非見てみたい、そう思わしむるバンドは結構いる。
Foalsもそんなバンドの一つ。
昨年デビュー組の中もで特にテクニカルな指向の強いバンドでなかろうか。
昔はマスロックだった、というから、まあそうだろうと思う。
非常に構築的で、緻密ながら小難しい印象はなく、非常にポップでキッチュ?な音楽は、いかにも現代的であるかもしれない。
そんな彼らの楽曲で最初に聴いたのが"Balloon"という奴。
PV付きで聴いていたんだけど、イントロのギターのはねるところを聴いた瞬間「買おう」と言ってアルバムを買いました。
やや素っ頓狂なヴォーカルはやはり流行っているのだろうか、というよりも明確に歌を届けようというよりは、ヴォーカルも楽曲をなす音の一部、という解釈のもと穫られているのかもしれない。
歌詞は非常に観念的で、意味のない羅列にもとれるし、きちんとした主張はあるがその解釈は聞き手に委ねているともとれる。
彼らとしてはもちろん後者である。
結構学歴も高いバンドなのですね。
まあセンス一発でできる類いの音楽ではなかろう。
こういうインテリジェンスを帯びたバンドは最近多いんだけど、かつてのオアシスに代表されるいわゆる労働者階級的な人からはしばしば批判されてかわいそうではある。
まあでも、そんなことは実際問題大した問題ではなかろう。
いやまあ、すごく大した問題なんだけどね。
彼らのアルバムのプロデュースはかのデイヴィッド・シーテック。
例えばホーンの使い方などに彼の影響かしら、という部分が随所に見られる訳であるが、それは実は彼とはそれほど関係なく当初からあったアイデアであったとかいう話もあるから、元々非常に確立されたバンドなんだろうね。
で、フロントマンはヤニス・フィリッパケスという、日本人にはあまり馴染みのない響きである。
彼は実はマイノリティのコミュニティで育ったらしく、割と複雑な事情を持ているのだとか。
日本人にとっては、人種問題ほど縁遠いものはないんじゃないかと思うが、外国では本当に複雑に社会の中に絡み合っているのである。
人種とかっていうのは、いわばアイデンティティの基礎をなし得る問題でもあるし、そういう意味で表現にも非常に強く影響するのであろう。
日本では社会的なバンドがあまりいないし、いても大きな支持を集めないのは、やっぱり社会的な構造の違いだろうね。
そういう意味では幸せな国なんだろうけど、それにしても生温い歌が流行し過ぎでもある。
まあそれは良いとして、彼らの音楽を真剣に聴くようになったのは、彼のインタビューを読んでからである。
そのインタビューでは、彼の価値観であったりアイデンティティの根幹をなすようなものについてであったのだが、その中で彼のもつ価値観であったり、世の中に対するあり方であったり、そういうものに唸らされたよ。
ものすごく世界と真剣に向き合って、考えている。
人種問題も含めた自分のあり方なども含めて、こういう奴の音は聴かねばいかん、と思ったのですね。
甘えた考えはいっさいないし、自分で道を切り開く術を探しているようなその態度はすばらしいですよ。
さて、そんな彼らの楽曲についてもちゃんと触れておかないとね。
まず先にも挙げた"Balloon"は言わずもがな、基本的に彼らの曲はポップで、はねているので踊りだしたくなるような楽しい曲がいっぱいである。
PVも撮られているんだけど、ふざけたような内容でコミカルである。
結構意味不明だしね。
"Cussius"や"The French Open""Tron"などが特に好きですが、どの楽曲もポリリズムとかそういうのがいいね。
全体的に非常に明るいんだけど、一方ですこし陰を感じさせる部分もあって、そういうところも個人的に非常につぼであった。
初めて聴いたときの印象は、その構築的な音楽性とアルバムの流れなどが、非常にBattlesっぽいと感じたね。
その中でヴォーカルの声やメロディラインなどがBlock Partyっぽいかな、と思ったね。
そのちょうど間の子というのが一番しっくりくるんだよね。
実はBlock Partyってあんまりピンとこなかったんだけど。
で、ボーナストラックはシングルでアルバムの前に出されていたものらしいんだけど、こちらもまた非常に良い。
シングルだけあって、彼らのポップな部分を存分に味分ける曲である。
特に”Hummer”という曲は、PVと併せてみると非常に不思議な曲である。
ヤニスが体操着(しかも短パン)で変な踊りを踊ったりしている。
意味は、よくわからない。
彼らは早ければ今年新譜を出すそうだ。
最近の新人は本当にクリエイティヴィティにあふれているようだ。
うれしいけどね。
そのツアーの一環で是非また来日もしてほしいね。