音楽には世代性みたいなものがある。
たとえば、最近は80年代や90年代のコンピレーションものがはやっており、CDの売り上げ的にはそういう企画ものが強い力を発揮していると聞く。
CDというメディア自体に対する愛着も、売り上げには一手担っているかもしれないが。
それらを購入しているのは30代後半から50代くらいなんじゃなかろうか。
要は思い出の流行歌である。
その時代時代を彩る流行歌があり、それらがはやった当時に青春だったり、あるいは一番恋愛なんかに夢中だったりした思い出がよみがえるらしい。
ちなみに、自分は世間的には一番いい時期だといわれる時期には精神的に引きこもっていたので、正直暗い思い出のほうがウエイトが大きいかもしれない。
思い出すたびに、憂鬱な気分に襲われるような。
ま、そんな話はどうでもいい。
世代感というものは、ロックにおいては永遠のモチーフ足りうるテーマである。
最近でも、というよりは最近特にそうしたことに意識的なアーティストが増えている。
世界を楽観視していられないことには、もうすでに世界の大半の人は知っている。
知らないのはエゴと余計な油で太った政治家と社長くらいのものだ。
そうした危機感だったりを、自分たちなりに詞にし、自分たちなりの世界観を表現して何かを訴えたい、というのが若いバンドのモチベーションである。
もちろんとにかく楽しけりゃいい、なんて雰囲気しか感じない場合だってないわけじゃないが、その裏には結構切実な思いがあったりして、それを無視するような人間は、やはり政治家になるべきではない。
で、今年は活きのいい、かつ質のいい新人アーティストが非常にたくさん出ていて本当に面白い。
各誌でも本命視されているCajun Dance Partyはじめ、Vampire Weekend、These New Puritan、Foals、MGMT、Late of the Pier、などなど、実に多彩かつエキセントリックで素敵である。
Hadouken!も、そんなバンドのひとつであろう。
ハドーケン、どう考えてもふざけているとしか思えないし、昨年でたシングルではぶっちゃけただの馬鹿バンドにしか思われていなかった。
しかし、今年でたあるにより、評価は一変した。
アルバム通してみたときに、その歌詞には確かに世代認識というものが現れており、それは外にはない、彼らの大きな武器であった。
まあ、正直にいうと、自分なんかは少し直撃するには遅すぎた感は否めない。
多分、10代で聴いていたらもっと違う印象だっただろう。
あるいは、自分がうまく学校のレールに乗れなかったら。
そう言う意味で、彼らの音楽が本当に響く層というのはかなり偏りがあるだろう。
理解は出来る。
気持ちも、なんとなくわかる。
でも、実感はできない。
それが自分の感想である。
彼らの音楽は、はっきりいて問答無用である。
とにかくアッパーで、激しくて、速くて、勢い任せだけどどこか不安定な、そんな印象である。
ライヴで、クラブで聴けばこれほど楽しい音楽もないだろう。
音に身をゆだね、わーーーっとなっていれば間違いなく楽しいし。
でも、ちょっと寂しくなる瞬間もあったりね。
サマソニで来た時に見たんだけど、ライヴとしてはそこまで完成度はないんだけど、みんな楽しそうに踊っていたよ。
彼らはインタヴューにおいて、「大人が嫌うような音楽を作りたかった」と発言している。
それは成功しているであろう。
これを聴いてワーッとなれる奴は、まだ大人になりきれてないんだと思う。
これをうるさい、と思えるときが、大人になったときかもしれない。
今年の新人レース(という表現はあまりよろしくないが)では、多分そこまで上位には来ない気がする。
音楽自体はそれほど目新しいわけでもないから、そうすると外のバンドには勝てないだろう。
しかし、彼らの詞に関しては、おそらく多くの若者にとってはアンセム足りうる説得力を持っているであろう。
印象的なフレーズに、"Welcome to our world. We are the Wasted Youth, and we're the Future too."というのがある。
この言葉を受け入れられるかどうかで、このバンドに対する認識は違うと思う。