キリスト教的価値観に対する批判的な態度を表明する人は少なくない。
神が個人の都合により安売りされすぎた結果であろう。
それか、やっぱり何もしてくれないからか。
しかし、別に神は実在ではないから、そもそも何かを望むこと自体が間違っているのかもしれない。
私は神なんて信じてないけど、一方で信じているような気もする。
信じてないのは人が作った神である。
でも、神ってなんだろうと、いう話になるとまた全然違う話になってしまうのでやめておこう。
キリスト教に批判的、といって出てくるのはやはりこの人、Marilyn Mansonである。
去年新作を出したが、個人的には今一。
期待するものと違うということかしら。
自作に期待しているんだけど、まだ出る気配はない。
今はツアー中であろうか。
そういえば、元リンプ、現Black Light Burnのウェス、またNine Inch Nailsに帯同していたジョーディ(ツィギー)らとともに回っているんだろう。
でも、やはりライヴでは過去の曲によるリストになるだろう。
実際昔の曲はかなりかっこいいし、大好きでしたよ。
歌詞に関しても、キリスト教的価値観に対する批判的なモノであるが、別にキリスト教に限らず、いわゆる社会の常識や通念としてまかり通っているクソッたれた価値観に対する批判にも重なるし。
まあ、表現が過激だからしょっちゅう揉めてたし、スケープゴートにも仕立てられ一時は活動休止にまで追い込まれたけどね。
それだけ過敏に反応するということは、痛いところ突かれてるって事だろう。
見せたくない部分を暴かれるのは気持ちよくないからね。
そうした彼の活動を手ごろに振り返られるのはベスト版である。
個人的には総じてベスト盤はあまり好きじゃないし、大体の場合はファン用のコレクターアイテムという認識である。
今までいいと思ったベストはLuna SeaとMoon Childの奴だけである。
潔さも含めてね。
で、マンソンのベストは、未発表曲、あるいはアルバム未収録曲も含めて、過去のキャリアから万遍なく拾われており、またシングルに限らずセレクトされており、きちんとした意図というか、そう言うものが出ていて価値がある。
好きな曲はほぼすべて入っているしね。
私が一番好きなアルバムは、4thにあたる「Holly Wood」であるが、曲についてもやはりこのアルバム収録の"The Fight Song"、"Disposable Teen"である。
世の中の流行とか、そういうものに対する批判的な内容はすごく10代当時の自分の精神に響いたのである(自分にはそう感じられたのである)。
また、冒頭の「信じてないのは人が作った神である」というのは、"Disposable Teen"の一節から拝借したもの。
なんか今一信用できない神の正体が、そのときわかった気がしたのだ。
こうやって改めて歌詞を見ていくと、非常に分析的で、漠然としたものの裏側にある胡散臭いものについて非常に的確に指摘されているようで、見た目的なインパクトの裏にこういったインテリジェンスが見えるのも好きな理由であった。
もともとジャーナリストであったというのは伊達ではない。
今あげた2曲以外にも、耳を傾けるべき曲は色々ある。
マンソンは結構カバーもしているんだけど、彼らの代表曲のひとつ"Sweet Dream"や、ベスト用の新曲"Personal Jesus"なんかは、人の曲だけど、彼のスタンスに非常にフィットする内容である。
あるいは"Linch Box"のモチーフも面白い。
と、まあ歌詞を読むだけでも非常に面白いし、楽曲それ自体も非常にポップで、いわゆるメタルメタルしてないので、聴きやすいし、かなりノれる。
たまにカラオケでも歌うほどに。
で、すでに書いたが、私は概してベストアルバムは買っても聴かない。
すでにアルバムを持っていれば、そのアルバムの流れの中で聴きたいし、そのほうが面白いと思うからである。
しかし、このマンソンのベストに関しては、結構よく聴いている。
アルバムとしても非常にきちんと整理されているし。
ベストの嫌いな理由として、ひとつにヒット曲をただ並べただけで、ずっとハイなままでOKみたいな感じがあり、それが聴いていて疲れるの。
ま、ベストってそう言う聴き方するものじゃないんだと思うけど、自分はそう言う聴き方をするから、馴染まないんだよね。
でも、このベストはそう言うことがなく、非常に並びやバランスがいいので、うまいことパッケージされているのである。
そう言う意味でも、Marilyn Mansonというアーティストの哲学が見えて、いいよね、と思うのである。
ところで、このベスト盤には初回版として全PVを収録したDVD付のものがあるのであるが、この中に収録されているある曲のPVは、日本版とドイツ版にしか収録されていないらしいのである。
「Golden Age o Grotesque(綴り合ってるか?)」に収録されている"(s)AINT"という曲の奴。
絶対にオンエアの許可が下りずお蔵入りになるから、という理由で自費制作されたといういわくつきである。
みると、まあ、無理だよね、という内容である。
歌詞の内容自体も「俺は聖者(Saint)ではなく否定の塊(否定を意味するAint)だから」といったもので、それをっ体言するかのようにどぎたない内容である。
興味のある人は一度は見ておくといいかもよ。
そんなPV集も含めて、非常にいい仕上がりのベスト版である。
早く、批評眼鋭い指摘豊かな世界を見せて欲しいね。