音楽放談 pt.2

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胡蝶の夢の中 ーレピッシュ

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最近は90年代が熱い。

それこそ先日のジュリアナ東京なんて奴が復活してみたり、筋少が復活したり、ジュンスカが復活したり、Xが復活したり。

そうして90年代に一世を風靡したバンドが次から次へと再結成してゆく。

どうも青春をもう一度的な空気が強く、奇妙に90年代的な空気を感じさせるのは面白いことである。

こんなところにもある種の世代性みたいなものが見えてくる気がする。


そんなバンドたちと同じ時代を生きつつ、解散とかなくやっているバンドはもちろんいる。

レピッシュはそんなバンドのひとつである。

スカとパンクを混ぜたような音楽は、陽気でいながらその背後に毒をしのばせているようなところがあり、結構刺激的である。

いわゆるファンク的なリズムもあったりして、雨後のたけのこのごとく現れたあまたのバンドの中でもかなり良質なんじゃないかと思う。

で、今回載せるのは彼らの2ndで、私が初めて聴いた彼らのアルバムである。

それはちょうど高校2年生くらいの頃であったと思う。

いっておくけど、もちろんリアルタイムではないからね。

当時漫画が大好きで中古書店に入り浸ってたんだけど、ちょうど音楽もメインストリーム、いわゆる流行モノから少しずつ違うものを嗜好するようになった頃、安値で売られているそれを見つけて買ったのである。

観るとサインらしきものもついていたけど。

なぜに興味を持ったかといえば、当時自分の暗い青春を少しでも救ってくれた大槻ケンヂのエッセーにしばしば出てきたから。

単純だよね。


実際聴いてみると、やけにはまってしまい、他のアルバムも金の許す限り買いあさった。

ちなみにどれも500円しない奴ばっか。

一時期ずっとレピッシュを聞いていた。

もちろん周りには聴いているどころか知っている奴さえいなかったけどね。

兄貴も馬鹿にしてたよ。

ヴィジュアル系大好き人間だからね。

でも、当時の自分にはすごくリアルに感じられたんだと思う。

単にきれいな言葉で理想の愛を歌うだけの歌よりも、少しナンセンスで決してかっこいい言葉ではないけど、なんか闇雲に叫んでいる感じがしたんだよ。


レピッシュの楽曲は、先にも述べたように結構能天気なものが多い。

しかし、詞を見ると非常に深いものがあったりする。

このアルバムで特に好きな曲は、"爆裂レインコート"、”胡蝶の夢”である。

前者はなんか気だるい感じと孤独感を感じさせる曲で、精神的に引きこもっていたときに聴いて、少し泣きそうになったことがある。

今聞くとそこまでならないけど、やはりそんな気分にさせられる。

本質はそんな簡単に変わらない。


そしてもう1曲”胡蝶の夢”は、猫に顔を取られてしまうというナンセンスな内容ではあるが、そこにある皮肉というか、そう言うものが今の自分の価値観にも影響していると思う。

猫に顔を取られたので、仮面をつけて町へ猫を追いかけに行く、というのだが、その辺の書き方は結構ストレートだったりして、わかりやすくてよかったの。

なんていうか、着飾ることへの抵抗感見たいなものが自分にはあって、どうもかっこつけようとするとバカバカしく思えてしまうのである。

そうしたところで別に本質が変わるわけではないし、その装飾が落ちてしまったときに残されるのが惨めな姿だけであったら、それこそ意味ないしね。

なんて話がずれたけど、結構影響されていると、今省みて思う。


他の曲にしても、子供じみているけど、そうした純粋なしてんから色々なものを批判しようとしている感じがいいのである。

あくまで曲はポップで陽気だしね。

あんまり一般的なファンは少ないかもしれないけど、その筋からはやはり評価は高く、結構アーティストリスペクトも高いと聞く。

実際曲もよく出来たものが多いし、そんじょそこらの生っちょろいだけの音楽よりもはるかにレベルは高いと思う。


で、悲しいことが最近ありまして。

レピッシュはもともと5人組みのバンドであったのだが、たしか2000年前後にメンバーが二人脱退しているのである。

一人はドラマー、もう一人はキーボードで、作詞/作曲に多分に関わっていた人。

この人は上田現というのであるが、元ちとせの”わだつみの木"を作った人である。

この人の歌詞は非常に独特で、変わったものが多い。

先の2曲も彼の作詞である。

作詞はヴォーカルのマグミもしているのであるが、マグミの歌詞は比較的チャカすような批判性があるのに対して、現ちゃんの歌詞はもう少し哀愁があるというか、一聴してわかりにくい感じはあるが、その分考えさせられるものが多い。

わだつみの木も、初めて聴いたときは変な歌詞だな、と誰もが思ったことであろう。

しかし、その奇妙さに引かれて多くの人の聴くところとなった。

もちろん元ちとせの歌唱力もあってだけど、やっぱりあの楽曲の奇妙さはかなり大きな要因である。

でも、あの曲が上田現作と聞いた瞬間、やけに納得したのをよく覚えている。


そんな上田現は、今年ガンで死んでしまった。

まだ40代前半で、制作中の作品もあった中での死であった。

ここのところレピッシュとはすこし離れてはいたが、このニュースを聞いたときは本当にびっくりしたし、にわかには信じられなかった。

たしかその前年だかのRising Sun Rock Festivalレピッシュとともに参加していたので、そんな状況とは思いもしなかったし、そのままレピッシュに復帰するのかしら、なんてのんきに思っていたのであった。

つい先月くらいに、彼の生前残した音源を、関係者がまとめたアルバムとともに、追悼の意も込めたトリビュート盤が出た。

面置きしてるCD屋も結構あったっぽいので、見たことある人は結構いるはずである。

ほとんどの人にとっては何だこれ?程度の認識であろうが、さすがにう~んとうなちゃったよ。

まだ買ってないけど、近々買おうかしら、と思っている。

彼のソロ名義の作品は聞いたことがないけど、やはりレピッシュの彼の歌詞を見ると、その独特の世界観には惹かれるものがある。


このごろは言葉に対してあまりにも鈍感であるように感じられる。

わかりやすい、ありふれた表現でしか理解できない奴や、言葉の裏を読み取れないどころか読み取ろうともしない奴も。

そのくせ詞がどうのとのたまっているやつ、 大嫌いだね。

彼の言葉には、人に考えさせる力がある。

一回は聴いとけ、と思う。