音楽には時間性がある。
春に聞きたい曲もあるし、冬に聴きたい曲もある。
あるいは朝に聴きたい曲もあれば、、夜に聴きたい曲もある。
その曲の持っている空気と、季節や時間がもたらす空気とが一致することが重要なんだと思う。
夏にはギラギラと騒がしい感じが恋しくなるし、冬にはやはり静かな音楽に耳を傾けたくなるものである。
最近私は穏やかな音楽が好きで、特に会社帰りなどはどうしてもそういう曲を聴きたくなる。
もう日も暮れて、気だるい空気の漂う帰りの電車の中で、せめてものエスケープを音楽はもたらしてくれる。
で、昨年買ったんだけど、今も尚聴いているのが、カナダのバンドStarsの「In our Bed Room, After the War」というアルバムである。
知らない人のほうが遥に多いであろうこのバンド、自分だってついこの間まで知らなかったからね。
ではなぜ知るにいたったか、といえば、やっぱりBSSを通してだったりする。
ドンだけ好きだよ、て話であるが、大好きなんだから仕方ない。
で、Kevinがソロを出したとき、もちろん買ったんだけど、なんか特典としてArts & Craftsのコンピレーション?のCDをもらったのである。
Arts & Craftsというのは、Kevinが運営するレーベルで、カナダではおそらく一番有名なオルタナティヴなレーベルであろう。
所属はBroken Social Scene、Feist、Dears、Stills、最近ではLos Campesinos!当たりもそうである。
カナダの良心といわれるように、非常に良質なバンドが所属していることでも評価が高い。
Starsもそのひとつで、今年の3月にはBSSとのカップリングで来日している。
ほとんどがBSSファンであったであろうあの会場で、苦戦しながらもかなり善戦、最後にはみんな拍手を送っていました。
すごくがんばっていて、いいライヴだったよ。
1日目に行ったのであるが、多分2日目もよかったんだと思う。
行けばよかったと今では悔やんでいる。
話を戻すと、そのコンピレーションCDの中に彼らの曲も1曲入っていた。
"Night Start Here"という曲であるが、繊細ながらロックなギターがかっこよく、これはぜひ聴いてみたいと思ったのである。
で、ちょうど彼らも新譜を出したばっかりだったので、それを買ったのである。
このバンドの書く曲は非常にポップで、きれいなものが多い。
本当にきらきらと輝くような、きれいな曲を書くんだよ。
男女のツインヴォーカルも、すごく生きている。
囁くように歌う男性パートと、非常に女性的な可愛らしい声の女性パートも、曲の美しさを際立たせている。
派手さはないけど、ゆったりとして聴けるいい音楽である。
冒頭の曲も、先の"Night Start Here"というタイトルで、全体的に冬の情景が似合う風情がある。
というのも、このアルバムのコンセプト自体が、夜明けに向かっていくようなところにあるから、必然そうなるのであろうと思う。
"Take Me to the Riot"のような、非常にアッパーな曲もあれば、"My Favorite Book"のような、女性ヴォーカルを前面に出したやわらかい曲もある。
また、"Personal"のような少しさびしい感じの曲もあり、タイトル曲のような壮大な曲もある。
非常に物語性というか文学性というか、の強い展開も魅力である。
このStarsは、来年の1月に今度は単独での来日が決まっている。
土曜日の、たしかクアトロあたりだと思ったが、果たしてチケットは履けるであろうか、と勝手に心配している。
先にも書いたが、日本では知名度がかなり低いバンドである。
でも、すごくきれいないい曲を隠し、ライヴも真摯な姿勢の伝わるいいライヴである。
これを機にぜひ一度、手にとって聴いてみてほしいバンドのひとつである。
それと、個人的にはCanningのソロツアーも含めた来日になると、もっとよかったな。
ま、とりあえず自分は、行くんだろうな。