音楽放談 pt.2

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音楽の本質 ―LITE

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昨日はLITEのワンマンへ。

イベントではちょくちょく見ていたが、ワンマンは久しぶり。

それこそ前作『For All The Innocence』の時以来である。

その時にのライブはDVDにもなったが、それも買ってしまった。

それくらい素晴らしいライブであった。

元々ライブの評価の高いバンドだし、そもそも自分が好きになったきっかけもライブだったから、自ずとテンションは上がるというものだ。

今回は6月頭に出た新譜のリリースツアーのため、新曲も楽しみな訳である。


まずアルバムについてなのだけど、前作はシンセサイザーの効果もあって非常に色彩鮮やかな音像、女性ヴォーカル(といっても歌らしい歌ではないが)やゲストミュージシャンを迎えてのかなり開かれた音楽だった。

彼等らしさはもちろんありつつ、従来のストイックで居合い抜きでもするかのような音楽とは違ったもので、意外にすら思った。

ただ、それはあまりに素晴らしい音楽で、個人的には年間ベストアルバムでしたね。

その後ミニアルバムを挟んでいるのだけど、そこでは本格的なヴォーカル曲もあった。

彼等に取っての新しい挑戦であり、一方で音自体はシンセで詰め込んだものを一度削ぎ落とす方向に向いていたと思う。

そこからのアルバムなので、やはり方向性はより風通しのよいものであった。


アルバムはオープニングSEを鋏んでからのスタートになるが、その曲がまず非常に風通しが良い。

まるで朝のニュース番組で流れ出しても良い位。

ジャケットに表されているような爽やかな透明感がサァッと駆け抜けて行くようである。

音楽的には先行ミニアルバムにも収録の”Bond”のような、ギターの使い方をよりテクニカルに、複雑に、だけど聞き心地は軽快なものになっており、音の密度も抑えめ。

その分バンドとしてのポリリズムがより鮮やかで、バンド的な音になっている。


そんな爽やかな曲の一方で、3曲目は実に変拍子というか、これライブ演奏大変そうだな、という曲"Hunger"。

これまでアグレッシブなリフで畳み掛けるような音楽だったものを、音数を減らして独特の違和感を醸し出す事でちがったアプローチにしているんどあろうか。

これもまたこれまでとは違った感触。

続く4曲目は攻撃的なベースで始り、サビ?の部分ではシンセ音を押し出した曲で、この曲は普通にカッコいい曲だけど、アルバムの中では少し異なって響くかも。


全体を聞いた最初の印象は、かなり曲がここに断片化されている、というものだった。

曲個々も間がかなり置かれたものだし、タイプもがらっと変わったりするからそう思ったのだろう。

しかし、何度も聴くうちにある種の情景を伴って統一感を帯びてくる。

前作の方がアルバムとしてはまとまり方がわかりやすいと思う。

そういう意味で少し難解な部分はあるが、それは聴いているうちにおのずから解消される程度のもので、一度解消されればこれが心地良くて仕方がない。


で、ミニアルバムにも入っている曲でアルバムにも収録されているのが"Bond"である。

この曲はある意味ではこのアルバムの方向性を決定づけている曲なんだと思う。

アルバムリリース直後くらいにライブ映像が配信されたが、それを見ているとこの曲の彼等に取っての意味が見える思いがする。

曲名も一瞬見まがうけど、この曲は今のLITEとしてのバンドサウンドを表現しているし、なによりその映像の中の彼等が実に生き生きしているのが印象的である。

ミニアルバムリリースライブも行ったけど、その時には余り感じなかった、まるでバンドを始めたばかりの瑞々しさみたいなものが迸っていて、改めて良い曲だと感じた。

リリース当初はとちりまくっていたイントロのフレーズもさすがにこなれたものになったが、この曲は殊更楽しそうに音が響いている。


彼等はバンドが今の形になって10周年らしい。

ベースの井澤さんが一番最後に加入したというから、ちょうどそれからという事になる。

今回のライブではその件で長めのMCも挟みつつ、これまでを振り返りながらしゃべる武田さんの言葉はどこか暖かく、本当に嬉しそうでもあった。

バンド自体みんな仲良さそうだしね。 

彼等の音楽は非常にテクニカルだし、それぞれの楽器のフレーズも実に複雑で一筋縄では行かない。

だけど、一方でものすごく強烈なラインを持っているかと言うと、曲ごとにそれは一つの楽器しかもっていなかったりする。

一番は武田さんのギターがメロディを作っているけど、ベースが唸る曲も在るし、シンセが底を持っている場合も在るし、ドラムが曲を構築している場合もある。

でも、結局トータルなバンドサウンドになった時にものすごく強烈な一体感と多幸感と高揚感とカタルシスを生んでいる。

まさにバンドサウンドの気持ち良さがあって、彼等のライブがすごい理由もそこだと思っている。

もちろん曲自体も私の好みであるのは言うに及ばないのだけど、音が重なった瞬間の何とも言えない気持ち良さは、本当に鳥肌ものなのである。


シンセのような電子楽器を取り入れて尚そのバンドサウンドは消える事はなかったし、むしろ増幅されたとさえ感じた。

それまでのストイックなまでの音のぶつかり合いではなく、絡み合う感じがより強くなったよね。

生演奏が増えた分、新譜の曲はそれがよりダイレクトに伝わってきたのは、大きな変化なのかもしれない。

一方で昔の曲も、始めて見た時には本当に居合い抜きみたいなヒリヒリした緊張感を覚えたけど、それとは少し違って今は響いている。

そこに物足りなさを感じるファンもひょっとしたらいるかもしれない。

だけど、これはいい変化だと個人的には感じている。

新譜の曲から感じられた透明感や風通しの良さは、今のバンドの状態を体現しているし、ライブでは変わらない彼等と変わってきた彼等をどちらも感じられた。

10年経って、彼等の中でも一周したと感じている部分は在るだろう。

シンセ導入、ヴォーカル導入と言う大きな変化を持って、たどり着いた今である。

それが悪いはずなんてないんだけどね。


ともあれ、今回のライブは少ししんみりする場面もありつつ、でもやっぱり彼等の曲自体の良さもさることながら、プレイヤーとしてのレベルの高さ、更にはバンドとしてのまとまり、そして何より音楽による表現者としての資質の高さを感じさせてくれる非常に素晴らしいものだった。

インストバンドを未だにただの歌のない音楽としか捉えられない人は多いけど、そうではないということは彼等を聴けば理解できるのではないだろうか。

歌も音楽の構成要素には違いない。

だけど、LITEの音楽にはメロディもあるし、色彩もあるし、緊張感もあるし、喜びも在るし、ある種の悲しみもあるし、ドラマもある。

音楽での表現者としては、彼等のような存在をミュージシャンと呼ぶんじゃなかろうかと本当に思う。

またこれからの活動、音楽にも期待である。

純粋に音楽に感動できるなんて、そうそうない経験だから、だからこそ彼等のライブには大きな価値が在る。

"Hunger"