最近地上波テレビでササキオサムさんをちょいちょい見るようになった。
千鳥のカラオケ番組で、とにかく音程を合わせればいいという趣旨のようだが、うまさ云々ではなく徹底的に合わせにだけいく姿勢は、ひょっとしたら落ちぶれたと見る人もいたかも知れないが、彼のファンであれば逆に面白く観ただろう。
普段の彼のライブのキャラを知っていれば、ただの愛嬌でしかないからだ。
世間的なヒット曲はMoon Child時代の”Escape”になるわけだが、割とみんなイントロを聴けば思い出すと言うのはなかなかすごいことである。
今聴いても余裕でかっこいい曲だからね。
とはいえ、彼は今でも現役バリバリで音楽活動をしており、新しい音楽も作っている。
なんならMoon Childとしてのキャリアなんてほんの数年で、既にそれ以降のキャリアの方がはるかに長い。
その間にもバンドをやったりユニットやったり、ずっとコンスタントに活動しているんだよね。
そしていい曲を書き続けている。
そんな彼のキャリアの中でも、Moon Childの次のバンドであるSCRIPTの名曲をぜひ紹介したい。
ムンチャのベース、わりっちとともに組んでおり、初期にはギターの秋山さんも参加していた。
変わらぬメロディーメイカーぶりと、ちょっとダサいがやけに刺さる歌詞はずっと健在だ。
クールじゃないがイカしたロックをぜひ聴いてみてほしい。
SCRIPTについて
改めてだが、メンバーはG/ VoのササキオサムさんとBのわりっちこと渡邊 崇尉さんだ。
結成は1999年なので、ムンチャ終了後程なくして組んでいる計算だ。
ドラマーの樫山さんとの軋轢が大きかったらしいので、ある意味では必然の展開だったのかもしれない。
ちなみに当時のオサムさんはこんな感じ。
イケメンじゃないか。
そしてこちらがわりっち。
ちなみに彼も作曲できるので、実はAAAとかZONEのメンバーのソロとか、わりと方々で楽曲提供もしている。
元ムンチャのメンバーの中で最も近況の不明な存在でもある。
彼は一番のオサムファンだったというのは、界隈では有名な話らしい。
2012年に活動休止となっているので、なんだかんだ10年以上活動しており、アルバムも9枚リリースしている。
オサムさんの創作力はすごいなと思うところである。
1st アルバム『Gentleman's Lib』(2000年)
1stアルバムは2000年にリリース、10曲中3曲はわりっちが曲を描いている。
ムンチャの頃はインスト曲が数曲発表されているくらいだったが、コンスタントに曲を書いているから、Wソングライター状態だ。
彼らはジェントルマンズ・ロックを標榜しており、ちょっとカッコつけた風情がよかったね。
彼らの代表曲の一つが”トーキングヘッド”という曲で、こちらは王様のブランチにも使われていたとか。
テレビ番組にも出ていたんですね、リアルタイムでは知らなかった。
言葉詰め込みまくりなのは引き続き健在だ。
ちなみにこのアルバムはオサムさんのキャリアで見ても随一に実験的だ。
ちょっとCorneliusの"Star Fruits〜"みたいな曲もある。
2nd 『Script Is Here』(2001年)
私が初めて彼らの存在を認知したのはこの2ndアルバムだった。
今でもなぜかよく覚えているんだけど、家の近所の書店で雑誌を立ち読みしている時に店内でラジオが流れていて、聞き覚えのある声だなと思って耳を済ましていたら、ラジオDjが「元Moon Childの〜」と紹介したことで、おお!となったのだ。
当時はまだネットもそんなに普及していないし、私は携帯も持っていなかったし、音楽雑誌も限られた人気アーティストしか扱っていなかった。
まして私自身そんなに熱心に音楽を聞きはじめる手前くらいの時期だったのですね。
そこから近所のTSUTAYAでCDを見つけて、はじめて買ったのがこのアルバムだった。
Moon Chldよりもよりカラッとしたような印象で、とても陽気な音楽でびっくりしたものだ。
オサム爽やかだ、若いな。
MCは意味不明だが。
3rd アルバム『Body Language』(2001年)
なんと同年中に新譜を出している。
よりソリッドで、彼らのアルバムの中でも随一にロック色の強い硬派な印象のアルバムだ。
1曲目から色気満載で、メロディも去ることながら色気のある曲をかけるのはやはり彼の才能だ。
イントロでは少し打ち込みも入れて、ギターのリフと共に実にかっこいい。
ヒットメイカーの才能は溢れている。
先のライブ映像と見比べてほしいが、イメージも違いすぎるのが素敵なところだ。
オサムさんの曲ばかり紹介しているが、わりっちもいい曲を書いていて、より優しいタッチの曲が多い印象だ。
言葉の乗せ方やチョイスも違うから、こう言うところがバンドとしての個性にもなるから面白いところである。
4thアルバム『SCRIPT domestic industry I Fantastic or Drastic 』(2003年)
この頃勢いに乗っていたのだろう、今度は1年間で3枚アルバムを出すと発表、Domestic Industryシリーズ第1弾である。
ラフな手触りの曲も多いが、それにしてもよくもまあこんなにいろんな曲をかけるものだと思うよね。
シングルカットされた曲がいかにもらしくていいのだけど、あえてこの曲を。
こちらはムンチャの『My Little Red Book』収録の”ストロベリーアイスクリームソーダ”の続編的な曲として位置づけられている。
ファンならなんとなく感じるところがあるだろう。
青臭い青春ソングのようだけど、主人公は大人になっている。
大人になっていつの間にか諦めることとか、割り切ることを覚えるわけだけど、そんなものに争おうとするような曲で、なんか折に触れて頭に流れ出す。
この曲に限らずだけど、SCRIPTの曲ってちゃんと主人公が大人なので、一番聴いていた大学生当時よりも今の方が刺さるなと最近改めて思うのだ。
余談だが、このアルバムを聴いていると、当時住んでいた家の風景や夏の暑さ、そしてやってたゲーム(侍道)をやたらと思い出す。
5th アルバム『SCRIPT domestic industry II Ultimate or Incomplete 』(2003年)
シリーズ第2弾、赤いジャケットのこのアルバムは3部作では一番好きかもしれない。
しっとりとしたバラード”Singles”でスタートするが、ちょっと夕暮れの風景をよく感じる。
この曲は、ライブなどでは以前から演奏されていたそうで、満を持しての収録となったようだ。
タイトルは独り身という意味の方だろう。
90年代的な歌謡曲満載だ。
オサムさんの色気たっぷりの美声も存分に堪能できる1曲だ。
そのほかにわりっち作曲の”Swich”という曲もかっこいいので要チェックだ。
6th アルバム『SCRIPT domestic industry III Nature or Man-made』(2003年)
そして3部作ラストは黄色いジャケットのこちら。
3枚合わせて28曲だ、すごいな。
リリースされたのも年末近く、クリスマスソングも収録されているので、どうしても冬のイメージが出てきてしまうのだけど、締めくくりを飾るにはふさわしいかもしれない。
こちらはアップデートされた”Joy Of Life”とでも言いたくなるような打ち込み主体の皮肉ソング、かの曲ほど疲れていないし、ちょっと開き直っている感じがいい。
ある種類型的な社会人像だったり、なんとなくフリーランスに憧れる人に対して軽く牽制するような歌詞もあり面白い。
二番煎じとか真似っことか言われることもよくあるけど、そんなものは当たり前だろと。
結局その人からアウトプットされたものはその人自身でもあるから、全部ひっくるめて全部肯定しちゃおうぜ、というスタンスがなんかいいよね。
メッセージとしては今も通じると思うけど。
ちなみに、「きっとみんな鑑定士いなきゃ、わかんないよ高級果実酒の価値」という一説が皮肉めいているけど、批判がしたいわけではなくて、結局好きか嫌いかでいいじゃんというのがいいのよね。
最後はしっとりした曲で締めくくられるのもお後がよろしいようで、という感じだ。
ぜひこの3枚は時系列に季節ごとに聴いてみるとなんか楽しいので、そんな聞き方もおすすめである。
7th アルバム『10strokes』(2006年)
流石にたくさん作ったので、ここで少しリリースの間が開くのだけど、次に出たこのアルバムが、個人的には最高傑作だと思っている。
このアルバムはタイトル通り10曲収録しているが、ジャケットのように5曲ずつとなっている。
これまでもわりっちも曲を書いているけど、正直やはりオサム曲の方がいい曲が多かったなというところだったが、このアルバムの曲は流石にどれも素晴らしい。
それがこのユニットならでは感が出ていて、全体としてもいい感じになっているんだろうなと思っている。
こうして聴くと、イントロのかっこいい曲多いな。
硬質なギターリフがかっこいい1曲目だ。
オサムヴォーカルも流麗で流れるような繋ぎが見事だ。
カラオケで歌うと早口だし音程も上下動が激しいので、かなり難しい。
アルバム全体としては曲のバランスもよく、こうしたアグレッシブな曲もある一方で、ミディな曲も素晴らしい。
特にわりっち作曲の”SECRET PLACE”という曲はとてもいいですね。
残念ながらYoutubeに音源がなかったが。
またこれまたオサムの皮肉シリーズで、最近改めてみに積まされるのがこの曲だ。
社会の中で良しとされるあれこれの中で、自分の存在意義に自問自答するような曲なんだけど、この曲の歌詞はずっと頭の中に折に触れて響いてくる。
「僕の両手は何を作るためにあるのだろう」という墺脳は、多分ずっと消えないんだろうなと思うが。
ともあれ、曲のテンションも歌詞も、アルバムとしてのバランスも、非常に素晴らしいアルバムである。
8th アルバム『THE NEWEST VISTA』(2008年)
続くアルバムは12曲入りのフルレングス、楽曲自体は充実度が伝わってくるものの、正直個人的にはあまりハマらなかったアルバムだった。
曲は変わらずいいし、ポップでかっこいいのだけど、前作が良すぎたのでその反動かもしれない。
改めて聴けばなんだいい曲じゃないかと思うところも当然あるけど、やっぱりパンチが弱い。
まあ、単に私に刺さるものが少なかっただけなんだけどね。
9th アルバム『SKYROCKETS』(2010年)
そして、彼らのラストアルバムとなった9枚目のアルバム。
のっけから非常に勢いのある楽曲でスタートし、なによりシングルカットされた”Free Fall”がこれでもかとポップを詰め込んでいる。
歌詞もポジティブで、絶妙にちょっとダサい言葉のチョイスも最高だ。
かっこいいこと言っているんだけど、ちょっとクスリとしてしまうところがオサム節だ。
何よりメロディが強すぎる。
そして、耳馴染みはいいけど歌うと難しい。
ラストを飾るにふさわしい充実ぶりではあるが、一方でまた曲の割合はオサムが大半を占めるように。
ひょっとしたら、解散の理由の一つはそこに活動の意義を見出せなくなったのかもしれないなと思いつつ。
ともあれ、その後休止ライブを行い、現在はオサムさんのソロのライブでたまに演奏されるくらいしか聞ける機会はない状態だ。
番外編
ちなみに、彼らはタイアップ曲もいくつかやっていて、その中でも有名なのがこちらだろう。
あのテニスの王子様の作者がどうやら重度のオサムファンらしく、タイアップ曲を展開している。
その後まさかの作者自身も確か歌手デビューしていた気がするが、あえて調べずにおこう。
ムンチャの頃から、実はタイアップは結構あって、都度違うタイプの曲を書いていたオサム、そのカメレオンぶりは健在というわけだ。
さして音楽を熱心に聴く人でもなければ、所詮一発屋だと思っているかもしれないが、いい曲書いているし、バリバリ現役で活動している。
たまにレコ発で近くの店舗でインストアイベントをやってくれるので、その都度足を運んでは写真を撮ってもらったり、サインもらったりして私もニヤニヤしている。
過去の曲も色褪せずかっこいいけど、最近の曲もいい曲たくさんあるので、テレビで知って面白かった人はぜひサブスクでもいいから聴いてみてほしいですね。
なぞのヘッドボイスで爆笑をさらっていたが、本当の歌声は色気たっぷりでめちゃイケボなので、ぜひ本領を味わってほしいところだ。