今チャートを席巻しているものは、果たして音楽と呼べる価値のあるものかどうか定かでもないような類いのもので、そもそも音楽という目的で出されたものではない商業製品ばかりである。
しかし、世の子供達が最初に触れる音楽はその類いのものであるのは仕方のないことである。
それ自体は悪くないと思うし、いきなり尖ったものばかり聴いているとそれはそれで問題である。
ただ、それが全ての価値だと思い込んでしまうとそれは残念なことである。
例えばフジロックのニュースが出たときに、「ほとんど知らない」「マニアックな音楽を聴いて通ぶって云々」というコメントを見るにつけ、実に嘆かわしいと言わざるを得ない。
もちろん音楽の価値なんて要するに好みで分ければ結構で、クラシックが高尚だと思い込んで無理して聴くくらいなら、AKBを本気で良いと思うならそっちを聴いた方が健全である。
しかし、少なくともそれ以外にも色々な音楽があると言う事を知る事は重要だと思うし、それが一般認知がないとしても、それがイコールその音楽の価値ではない。
せめてそれくらいの認識は持っておくべきだし、音楽自体を理解できなくてもそういう考えを持っているのといないのとでは雲泥の差である。
残念ながらその認識すら持っていない人が多いのが事実だろう。
まあ、音楽に限った話ではないが。
話は変わるけど、世間的にはマニアックだと思われている音楽・アーティストであっても、実はTVCMで曲が使われていたり、あるいはドラマに使われていたりと、マスで耳に触れているものが多い。
なので、アーティスト名を言っても知らないが、この曲は?と聴くと聴いた事ある、というのは意外と多いはずである。
それどころか、この曲好き!という人もいるから、それならどうしてもっと興味を持たないのだろうと思う。
『Sensuos』というアルバムに収録されている"Music"という曲は車かなんかのコマーシャルに使われていた。
透き通った曲と、脱力したヴォーカルと、圧倒的なセンスを感じさせるその音楽は、実は世界的評価も圧倒的に高いというのは、恐らく音楽をちゃんと聴いている人であれば常識レベルの話である。
洋楽アーティストにも彼をリスペクトする声は非常に多い。
実は私自身はフリッパーズギターはまともに聴いた事がないのだが、CMなんかでも聴いた事のある曲が実は多いと聴いて、そうなのか!とびっくりした記憶がある。
このアルバムは、曲自体はCorneliusそのものと言ってもいい。
ただ、他にもゆら帝の坂本作の曲もある訳で、歌詞自体も興味深いものも多い。
まだそこまで聴き込めてはいないのだが、まず印象としては「雨の日を楽しくしてくれるアルバム」である。
"レインブーツで踊りましょう"という曲もあるように、この時期にはぴったりだと思う。
基本的にはポップだし、それでいてセンスの良さを感じる。
お洒落、というと語弊があるけど、素直にそう思える音楽である。
1曲目のようにちょっと変わった曲もあるので、この手の音楽を聴いた事のない人には始めは「?」が着くかもしれないが、聴き進めて行けばきっと気に入るはずである。
面白いと思う。
おそらくオリコンチャートには入らないと思うけど、すごく良い音楽だし、一般受けもする音楽だと思う。
こういう音楽をもっと聴いてほしいな、と思う。
まあ、高校生位のときはこんな穏やかな音楽よりも、もっと派手で騒がしい音楽の方が好まれるかもしれないが、こういうフィーリングを味わってほしいなあ、と思う。
歌詞は全編に日本語なので、普段オリコンしか見ない人にも是非聴いてほしい音楽だ。
もっとも、普段オリコンチャートしか見ない人は、こんな自己満足の塊のようなブログにまで音楽を探しには来ないだろうが。
追記:
12月現在、最近もまた聴いているのだけど、最後に収録されている曲”続きを”が非常にすばらしいことに気がついた。
歌詞が良いのである。
件の大震災との関わりの中で聴いていると、示唆的であり、運命的なものすら感じる。
今から起きる、訳の分からぬ現実を、全て受け入れよう
なぜか空、なぜか雲、全てが眩しい
続きを見たい
どんな悲劇が起こったとしても、そこから先も時間は進む。
そこで立ち止まってしまうこともあるが、その先にはまた大きな希望が待っているかもしれない。
だからこそ、続きを見ないと行けない。
続くからこそね。
もっと話題になっても良い曲。
すばらしいので、是非チェックしてね。