先日個人的には久しぶりのPredawnのライブだった。
コロナ禍にあって、ずっと配信を定期的にやってくれていたので、そういったところではナウな音楽は聴けていたけど、最近は関西が拠点らしく、関東でのライブは少なかった。
前作からはだいぶ空いていたがこの間で特にリリースはなかったが、やはりライブは聴きたいしね。
で、このほど4月に新譜のリリースが決まったそうな。
先行してシングルがリリースされているが、いずれも嬉しい知らせである。
そんなわけで、ざっとこれまでのキャリアを勝手に振り返ろう。
日本では女性アーティストはどうしてもアイドル的な扱いばかりされているので、彼女はそうしたスタンスでは全くない。
トヨタのCMでタイアップ曲などもあったが、そもそもプロモーションもほとんどしていないのであまり浸透しなかったのが口惜しくてたまらない。
もっと聴いてくれ!
こんな荒んだ世の中だからこそ、こんな音楽に心癒やされるのですよ。
Predawnはソロプロジェクト
Predawnは清水美和子さんという人の音楽プロジェクト名義である。
作詞作曲はもちろん全て彼女で、アレンジや収録、ライブではサポートなどを入れてやっている。
調べると、実は30代半ばと年齢が近い。
見た目には非常に可愛らしく、しゃべると何を言っているかわからないくらい天然である。
しかし大学時代には哲学を専攻していたためか、言葉のチョイスが絶妙にとんがっており、ひねくれた青春時代を過ごしたんだろうことがそこはかとなく推察される、気がする。
ホホホと、微笑ましく見えてしまうが、これが歌うとびっくりする。
澄んだ綺麗なウィスパー系のボーカルで、アコギ一本でのライブもよくやっているが、とにかく歌もギターもめちゃ上手い。
声質的に私の好きなタイプで、Feistなんかとも通じると思っている。
WikipediaにはUKロックの云々と書かれているが、彼女自身影響源によく挙げているのがSparklehourseやジョニ・ミッチェルで、歌詞はともかく音的にはBright EyesなどUSのオルタナ系のアーティストの方が近しいものを感じる。
ずっとインディーズでやってきており、1作目はEPであった。
1st EP 『手の中の鳥』(2010)
こちらは7曲入り20分と小品的なパッケージながら、今もライブの定番となる代表曲"Suddenly"はじめ、既に彼女の音楽性はある程度出来上がっている。
アコースティックの柔らかい曲に、澄んだしなやかな声が実に心地いい。
彼女の曲は英語詞が大半で、内容は少し寂しいものが多い印象だ。
喪失感だったり、ある種の諦念のようなものだろうか。
歌詞カードには載っていないが、対訳は今は公式サイトに掲載されているので、併せて参照いただきたい。
https://www.predawnmusic.com/lyrics/lyrics01.html
曲としてはずっと聴けるポップさがあるので、晴れた穏やかな日に聴くにはぴったりの音楽である。
以降も一貫してそういうところがあるが、彼女の歌詞は自分の中の世界から見ていて、試作の先には誰かがいるがその人の気持ちだったり、考えだったりが結局わからないからこうだったのかしらと思いを馳せるような、そんな世界観かと思う。
私は人のことはわからないと思っているので、その観点で書かれている歌詞の方が好きなのである。
まあ、その視点で書いているかはわからないが、インタビューなんかも見ながら考えていくのも面白いだろう。
1stフルアルバム『Golden Wheel』(2013)
待望のフルアルバムは真っ白なジャケットが目を惹くものだった。
前作はちょっと影のあるアートワークだったので、その意味でも印象はだいぶ変わるだろう。
フルレングスのアルバムは初となるが、基本的な音楽性はEPと同じだが、さまざまな楽器が使われておりアレンジが非常に多様になっている。
こちらはライブでも定番の曲だが、アコースティックライブの映像があったので。
見ていただいてわかるように、ギターのフレーズが非常に柔らかく音の強弱もあってとてもうまい。
ちなみにこの曲は、昔は電話が嫌いだった、でも今はあなたからの電話をずっと待っている、というような大枠の軸があるのだけど、その過程でどんなことがあったかというところは是非歌詞と併せて聴いてみてほしいところだ。
このアルバムの頃にライブ作品もリリースしており、品川にある教会でのものはDVDにもなっている。
そこではバンドセットを組んでおり、ピアノやストリングスなどのメンバーも従えながら、曲によってはエレキギターも弾いており、非常に聞き応え抜群だ。
またMCも収録されているので、よりどんなアーティストなのかを示すいい作品になっている。
ちなみに、私が聴き始めたのはこのアルバムがリリースしたちょっと後くらいだったのだけど、たまたま行ったイベントで見かけて、それで気になってきくようになった。
当時はライブ活動も活発で、さまざまなオルタナ系のイベントにもよく出ていたので見かける機会も多かったね。
2ndアルバム『Absence』(2016)
続く2ndアルバムも、基本的には前作からの地続きな作風ながら、より密度が増したような印象で、アルバムとしては曲の起伏もより出ていて深化したような作品であった。
このアルバムでの先行シングル的な曲がこの"Universal Mind"だが、歌詞の内容は珍しく情念的というか、圧倒的な喪失感を歌ったような内容である。
文脈的には一方的に振られた失恋したばっかりのような心持ちだろうか。
とはいえ、英語詞なのと、歌声自体は柔らかいので、パッと聴いた感じでは重たくもないのが絶妙なところか。
また、このアルバムでは初の日本語詞の曲も。
日本語であるためか、歌詞の表現はより観念的な印象だ。
ちょうどいい動画がなかったので、ぜひSpotifyなどで聴いてみてほしい。
アルバム全体としては穏やかで心地よいトーンが続くので、季節的にはちょうど今の時期に聴くにもマッチする。
できれば天気のいい静かな日に聴いていると、凄まじく心地いい。
以下はライブでよくサポートしているメンバーも一緒のインタビューだ
2nd EP『Calyx』とシングル“Deadwood”(2019)
目下の最新作はこちらのEPだ。
5曲入りだが初の全曲日本語詞である。
日本語である分言葉の意味もダイレクトに入ってくるが、しかし世界観自体は変わらず感じられるのは面白いところだ。
上品な古品的な作品なので、英語の歌は苦手という人にはこの作品からがおすすめかもしれない。
また同じ頃になんとトヨタのCMにタイアップで"Deadwood"という曲もやっている。
配信以外では音源化されていないので、次回アルバムにでも入れてくれると嬉しいが。
すでにデビュー10年以上を数えており、そこそこキャリアを積みつつある。
10周年タイミングで記念ツアーを行なっており、その際のインタビューもされており、より彼女のキャリアもわかると思うのでお時間があればぜひ。
そのほかもろもろ
ざっと代表曲などを並べただけになってしまったが、とりあえず音源を聴いてほしいなと思うのですよ。
インタビューもプロモーションとして行われることがほとんどなので、本人があんまり動かないと全然露出がないので、最近の状況は本当にSNSとかライブでしかリリースがなくて、それが口惜しくもあるが、インディーでやっているのでいたしかたなしか。
ただ、このコロナになってから定期的にYoutubeで、音声だけだが配信も行なっていて、すでに44回を数えている。
大体1時間程度で、ゆる〜いトークとアコースティックライブの構成だが、自分の曲だけでなくカバーも多くやっているので、彼女がどんな音楽を聴いてきたかもわかるのが面白い。
The Velvet Undergroundなどのコアの代表みたいなのもあれば、なんとアリアナ・グランデの曲もやっている、ギター1本で。
トークパートとの音量差でたまにびっくりするが、ボケットしながら流しているのにちょうどいいので、ラジオがわりにもおすすめだ。
驚いたのは、私が大好きなNine Inch Nailsの"Hurt"もカバーしている。
インダストリアルというかなりゴリゴリな音楽をベースにしたバンドだが、この曲はジョニー・キャッシュもカバーしていることでも有名だ。
そして、今年待望の新作も4月のリリースが発表、先立ってシングルもリリースされている。
久しぶりのツアーも日程が組まれていて、ファンとしては楽しみな限りだ。
ライブをやればそこそこ安定的な集客ができているようなので、すでに固定ファンがしっかりとついているものの、もっといろんな人が聴いてもいいと思ってもらえる音楽だと思うので、ぜひもっと広く聴かれることを願って止まない。
まずはサブスク系でもいいので聴いてみてほしいですね。