今年は各所でライブイベントが再開され、サマソニも2年ぶりかな、の開催となるので私もいく予定だ。
幸か不幸か先週コロナには罹ったので、とりあえずまだしばらくは大丈夫だろうか、と油断はしないように気をつけよう。
で、この2年間でライブエンタメ業界は大打撃を受けたのだけど、他方で新たに配信ライブという武器を手に入れた期間でもあった。
中にはそれにより以前よりも収益があがるようになったところもあるというから、それが進化というものだろう。
私も以前は配信で金払うなんて・・・とか思っていたけど、今は全部ではないにしろ、いけなかったライブなどは配信チケットを買って聴いている。
直近では現地にも行ったPredawnのライブは配信チケットも買った。
まあ、半分は産休に入るということなので、ご祝儀みたいなものだ。
さて、こうしてライブを配信するということが根付いた一方で、より映像作品にまで昇華させようという動きがいくつかのバンドであって、大きなところではサカナクションだろう。
ライブ性もいれながら非常にアーティスティックな表現をやってのけたのは、彼らくらいの規模のバンドだからこそというのはあるにせよ、やるに至った背景にはバンドだけでなく、その裏方で働くスタッフのためというから泣けるではないか。
私は熱心に聴いているバンドではないけど、そういう価値観はいいなと思う。
山口さんも早く元気になるといいですね。
で、インディーなので残念ながらその影響範囲は限られてしまったものの、この2年で2枚のライブ映像作品をリリースしたのがアナログフィッシュだ。
最初は恒例の10/10の魚の日のためにリリースされた『Townmeeting By The Sea』という作品。
江ノ島にあるオッパーラという海に面した、というかほぼその中にあるクラブで行われた。
夕方頃に始まり、徐々に日が暮れている景色も美しく、またちょうどバンドとしてもちょっとR&B的な風味も取り入れた曲を中心にしたアルバムをリリースしていたので、曲調ともあって非常に素晴らしい作品になっている。
ちょうどこんな夏の時期に聴きたいライブ作品である。
そして次は冬場にリリースされた『By The Lake』という作品、こちらは彼らの故郷である長野県の湖畔に面したキャンプ場で撮影された作品で、目下の最新アルバムの曲を盛り込んだ作品だ。
こちらも開放感だったり景観だったりがよくって、ぜひこの現場でライブ見たかったなと思わせる物だった。
いずれもキチンと音としてマスタリングもして、DVD作品としてリリースされているので、ライブバンドとしての面目躍如といったところか。
私はまず何より彼らの曲が好きなんだけど、それをこうして様々な景観の中で演奏されるとまた響きが違うんだな、なんていうのも素敵な発見だった。
ちなみにこの映像作品については、スガシカオさんもラジオで少し触れられたんだけど、もっといろんな人に届いてほしいなと素直に思ったものだ。
彼らは元々メジャーデビューもしたバンドだけど、今は独立して自主レーベルで活動中のインディーズである。
元々とにかくいい音楽が作りたい、という純音楽家的な色の強いバンドだったので、これは必然だったのかもしれない。
大変なこともたくさんあるだろうけど、ファンクラブも立ち上げて、そこで定期的に配信もやったり、プレゼント企画をやったり、過去のライブ映像を配信したりと、マイペースながらファンにとっては嬉しい活動となっている。
私も投げ銭などで攻めて少しでも彼らの活動の資金にしてもらえればなんて思っているが、ある意味でいい関係性になっているんじゃないだろうか。
そして、自分達で活動の舵も以ているためか、以前よりも幅が広がったように思う。
マスタリングなどの作業は今は佐々木健太郎さんがやっている作品が増えている。
で、今のところ最新の作品は久しぶりとなるライブCD『Live Bootleg Vol.1』という作品で、京都のはりはりという会場でのライブ音源を収録して、マスタリングしたものだ。
このライブは毎年恒例となっている2月の企画ライブ、Kyoto To Tokyoの最終公演のもので、当時配信もされたので私もそれを見た。
本当は東京公演のチケットを取っていたのに、直前になってどうしてもいけなくなってしまったのだ。
そんな苦い思いでもありながらだけど、映像作品だけでなく持ち歩ける音源作品もほしかたので、これは非常に嬉しかったね。
ライブ盤というと、大体は当日のものを収録したほぼまんまをリリースするケースが多いが、こちらは音源をキチンとマスタリングしており、また今の彼らの活動スタンスを示すような音になっており、とても素晴らしい。
彼らの曲は、特に2010年以降は社会的なメッセージ性も強い曲が多く、その鋭さが多くの支持を集める結果にもなったものの、人によっては敬遠する要因にもなっていただろう。
しかし、ここ最近の3作はより純粋なポップソングが多く、その上で彼らの強みである社会性だったり個人から社会に広がる文脈だったりを盛り込んでおり、とても表現のレベルが上がっている。
特に最新のスタジオ盤である『SNS』は、リリース当時プロモーションも積極的だったけど、まあとにかく楽曲がとてつもなく素晴らしい。
思わず全曲について何か言いたくなってしまうくらいで、いわゆる社会派的な感じは一聴してないけど、考えながら聴いていくとすごく広がりも出てくる。
このバンドは、健太郎さんと下岡さんという2人のソングライターがいるんだけど、ここ数年でここまで2人の曲が拮抗しているのは久しぶりだ。
もちろんずっといい曲は書いているけど、それぞれの曲のコントラストも見事で、そのバランスもアルバム全体の構成も本当に素晴らしい。
そんなアルバムの曲を軸にしたライブで、セットリストも新譜中心、タイミングによっては社会的なメッセージの強い曲を中心に組むこともあるけど、このツアーではとにかく素直に楽しい曲を中心にしているので、初フィッシュの人にもおすすめしたい作品である。
で、前振りが長くなってしまったけど、私はこのアルバムをよく会社帰りの道すがら聴いていて、ちょうど家につくちょっと手前くらいでアルバムが終わりを迎える。
仕事終わりなので大体疲れているし、特に最近はストレスフルな出来事も多いんだけど、そんな気分もこのアルバムを聴いていると吹っ飛ばしてくれるし、なんならライブアルバムを聴いて、最後の曲のところで毎回寂しい気持ちになってしまうような体験は初めてである。
いやぁ、やっぱライブ観てぇな!とか、やっぱこのライブ良かったよな!とかいって終わることがライブ盤では多いけど、このアルバムは、ああ終わっちゃう・・・という気持ちになる。
まあセットリストの問題もあるけど、もっと根源的に疲れ切って会社を出たのに、なんだか気持ちだけは持ち上がっていて、幸せな気持ちにさせてくれるのよ。
だからその僅か1時間程度にもかかわらず名残惜しい時間になってしまう。
曲が好きすぎるからというのはあるけど、大袈裟じゃなく救われる感覚ってこういうのなんだなと思うわけである。
このバンドは聞いたことないぞ・・・という人がいたら、まずはこのアルバムから聞いてみてほしいなと本当に思う。
曲はポップで聴きやすく、まったりとしたAOR的な曲もあれば、ロックな曲もあり、ひたすら夢見心地なドリーミーな歌詞もあれば、じんわりと染み込んでくる日常に根差した歌詞もあり、曲も詞も聞き所しかない。
好みはあるかもしれないけど、私は本当に彼らの表現が好きなんですよ。
良かったら聞いてみてほしいですね。
この“うつくしいほし”は、とある恋人同士のある日常を描写しただけといえばそれだけの歌詞なんだけど、サビでは視点が急に俯瞰になって、その目線の移動をイメージしながら聞いているとなんか涙出てくるんですよ。
ちなみに特にギターはJoy Divisionだ。
ライブで得られる体験と、音源で聴く体験は必ずしもイコールではない。
だからこそ、それぞれの魅力を感じながら聴くのが音楽体験というものだ。
いやでも、もっと経済的に潤ってほしいなって本当に思うんですよ。
それで、引き続き素晴らしい音楽を作って聞かせてほしいなって思う。
一緒に年を取ってくれるバンドがいることが、とても幸せだなと感じる。