音楽放談 pt.2

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小休止212「言葉のリズムはいわゆる”音楽”には限らない」

今回は全然音楽に関係ない話で、最近みたドラマの話だ。

 

 

最近のドラマは漫画原作が増えており、それは映画でも同じだ。

 

商業的な観点から、一定原作のファンがいる方がある程度の採算が見込みやすいというのが一因としてあるようだが、ほとんどの場合滑っている。

 

それこそ女子高生ターゲットの学園ものなら設定が漫画とそんなに変わらない感じでできるだろうけど、漫画は漫画なりにぶっ飛んでいるところがあるから漫画だし、漫画だからこその面白さを実写でやろうとすると寒くなってしまうのもありがちだ。

 

小説も同じで、かつて町田康の小説を実写にしたのが2作あるが、その一つ『けものがれ、俺らの猿と』は永瀬正敏主演、KJや松重豊さんら何気に豪華なキャストにサントラも日本のインディーバンドをふんだんに使ったカルト映画となった。

 

そもそも映像化自体が困難としか思えないアヴァンギャルドな世界だったのだが、ある意味でその映像化はうまくいっていたと思う。

 

今でも私はたまに見る。

 

もう一つは『パンク侍、切られて候』だが、こちらもキャストは豪華。

 

綾野剛主演で北川景子さんもヒロインで出演、さらに染谷くんや永瀬正敏も声で出演、町田康カメオ出演、広告もバチバチに打ちまくってかなり金をかけていたのだけど、当然のように映画はおおごけ。

 

公開初日にも関わらず空席バンバンだったものだ。

 

映画自体もはっきりいって意味不明で、そもそもあの町田康の書体は書体だから面白いのであって、それをまんま台本にしてしまったらただくどくどしくなるし、いわゆるギャグも滑っていた。

 

頑張りは認めるがうまくまとめきれなかったとしか思えなかった。

 

 

それはさておき、私はこの波の作者、沙村広明が好きで、彼の代表作である『無限の住人』から読むようになったのだが、その絵柄や独特の間、根っこには落語的なノリがあるのかもしれないが、それがとても面白く、また諸行無常な世界観もとても好きなのですね。

 

彼は荒唐無稽なギャグ的なものと、任侠映画的なノリのハードボイルド的なもの、そしてエログロ全開のSMものと、いくつかの特徴があるのだけど、無限の住人はそれらが非常にバランスよくミックスされたまさに代表作と呼ぶに相応しい作品だ。

 

そんな中でこの『波よ聞いてくれ』は、ギャグ色の強い作品で、あるやさぐれた女性がひょんなことからラジオパーソナリティになって、名物ラジオ番組を作っていく、と言うのが基本的なプロットなのだが、漫画自体はストーリーがラジオをめぐるあれこれとは違うテーマ性も持っており、それについては原作者の言葉で語られている。

 

既にアニメ化はされていたが、正直そちらは微妙だった。

 

原作を頑張って表現しようとしていることは伝わってきたが、それだから逆に漫画でいいじゃんという感じになってしまった。

 

アクションものであれば、動きがアニメの最大限に生かされるので面白くなりやすいが、そもそもラジオがモチーフの漫画なので、一番の見せ所はその喋りだ。

 

それをどれだけテンポ良くできるかになるから、アニメでも生かされそうなところはあるけど、ちょっと物足りなかったんだよな。

 

そこへきてドラマだ。

 

テーマ的にもモチーフ的にもドラマはハマりやすいだろうなとは思うし、反面あのテンポ感をどれだけ出せるかの勝負になる。

 

何より主人公含めて濃いキャラクタばかり出ているので、そこをどれだけ出せるかがポイントである。

 

そんなドラマのキャスティングが発表された時、正直不安であったね。

最近ドラマをほとんど見ないので、北村一輝さん以外正直わからない。

 

しかし、主人公が小芝風花さんと知った時にはハテナしかなかった。

 

最寄駅にデカデカと化粧品の広告で見ていたので当然存在は知っていたけど、どう考えてもミナレさんと対極のイメージである。

 

なぜだ・・・?

 

そしてライバル的存在のまどかさん役が平野綾さんとな。

 

この人がどうこうと言うよりも、キャラクタビジュアル的に作者の好みの切れ長の目の女性なので、イメージがだいぶ違った。

 

まんまだったらまさにりょうさんとか、ドンピシャのイメージだ。

 

あるいは安藤さくらさんとかでもよかったのではないか。

 

こちらもアイドル声優さん的なイメージだったので、クールなこの役がはまるのかと。

 

北村一輝さんが演じるのもこのドラマのキーマン、麻藤さんだ。

 

こちらはビジュアル的にはマッチするが、声がもう少し渋みのある方がマッチしていたので。

 

まあ、一番驚いたのは店長役の西村だが、さてどんなもんやと。

 

 

結論、非常にいいですね、思った以上に楽しく見ている。

 

まず小芝風花さん演じるミナレが思った以上にミナレさんだった。

 

声の質もパキッとして通るし、早口で捲し立てる澱みのない台詞回しも、やさぐれた表情や仕草、基本ふざけた態度も何も非常によく表現している。

 

素晴らしい。

 

またまどかさん役の平野綾さんも、声優さんやっていただけあって声色が見事。

 

ちょっとクールできつ目の性格で、遠回しに嫌味っぽいことを言ってのけるキャラだが、第3話のやり取りは非常にいいね。

 

公園での飲みながらの言い合い?のシーンはとてもいい。

 

会話のテンポも小気味いいし、二人とも声がしっかりと通るので何を喋っているかはっきり聞き取れる。

 

ビジュアル的に可愛らしい感じなので、メイクで目元なんか特にそうした感じを出そうとしているんだけど、声とこちらも節回しがとてもいいね。

 

ただ、どうしても髪型が女性っぽい感じが強くてフェミニンになってしまうので、少しさっぱり目にしてくれる方がもっとキャラクタとマッチしたんじゃないかなと思ったな。

 

でもいいですよ。

 

麻藤さん役の北村さん、久蓮木さん、また瑞穂役の女優さんもいい感じに可愛らしい感じで、思った以上に全体的にいい感じだ。

 

店長はいわゆるおねぇ系のセリフだが、さすがコントで名演をかましているので西村も無理な感じがない。

 

そもそも難しいキャラだけに、原作イメージとはだいぶ違うけど、却っていいのかもしれない。

 

あとは、中原くんはもうちょっとヤンキー感のある俳優さんの方がキャラクタにマッチしそうなのに。

 

一本木で男気があるけど、ちょっと抜けているというイメージなので、この俳優さんだとちょっと柔らかすぎる。

 

あとはマキエさんだな。

 

綺麗な人だし、切れ長の目も寄せているところはあると思うけど、こちらはもう少し原作に寄せたキャスティングでも良かったのではないかと思ったな。

 

まあ、個人的な好みの問題なんだけど。

 

 

あとはカメラワークや演出など、演者以外の頑張りがかなり出ているように思う。

 

まず台詞回しが大事になる中で、しっかり音声を曇りなく拾うことも重要だろうが、それがしっかりしている。

 

聞き取りづらいところがないんだよな。

 

わちゃわちゃならないし。

 

話している時のカット割りとか切り替えとか、そういうのもテンポ感やドライブ感を出している。

 

セリフと合わせて全体のリズムを産んでいて、やはり見てて小気味いいのだ。

 

ドラマ自体久しぶりに見たので、割と最近はこう言うものかもしれないけど、漫画原作にありがちな画面に擬音を出しちゃうとか変なエフェクトを使うとか、そういうのじゃなくて映像でちゃんとテンポ感を出しているのがなんか心意気を感じるよね。

 

音楽でも、やはり歌ものはその歌が中心にあるように感じてしまうけど、その歌にはメロディがあり、音としてはリズムやテンポがあって、さまざまな楽器の絡み合いがあって一つの音楽になっていて、それら全てが混然となって音楽になっていく。

 

形は違えど、ドラマも演劇という芸術な訳だから、いろんなことが合わさって面白い世界を表現できるわけである。

 

 

と、まだ3話しか見ていないし、どうやら全8話らしいので、おそらく宗教団体のところとかは描かないだろうし、まだ決着していない震災関連にもいかないだろう。

 

せっかくなら素人パーソナリティが暴れまくっていくような設定だけを活かして、ドラマオリジナルなシナリオを展開してもらえればと思う。

 

それができると思うし、ミナレさんを過剰にヒーローにさえしなければ原作の空気感もしっかり保てるだろう。

 

 

ちなみに、『無限の住人』は2度のアニメ化に、キムタク主演で実写映画化もされているが、いずれもいまいちを通り越してクソ作品だった。

 

原作者も好意的なコメントをしていたが、どちらかといえば、好きにしてくれと言うタイプなんだろう。

 

この漫画のここがいいんだよね、の部分が全部抜け落ちて形だけを借りたからクソだったんだが、このドラマはちゃんと芯にそれがある。

 

小芝風花さんも原作をしっかり読んでキャラクタを掴んで行った、と話していたし、ビジュアル的には全然原作イメージではない平野綾さんがあんだけいい味出せるのは、元々声優さんと言うこともあって原作を読み込んで〜と言うのが染み付いているからだろう。

 

原作のエッセンスを持ったままドラマなりのキャラクタが出来上がっているのは、一重に演者さんの力量だろう。

 

とりあえず、テレビでは見ていないけど最後まで見るだろうなというドラマである。

 

思っている以上によかった。