今でこそメジャーからどマイナーまで、幅広く偏って聴いてはいるが、小学生くらいの頃は特に好みなんてモノのなく、親が好んで聴いていた音楽なんかを好きになるという、まあありがちなパターンである。
当時は親父が70年代フォーク、母親がB'z(こうして考えると本当に長い事やっているんだね)なんかを好きだ、なんて言っていたけど、実際は別に好きな訳ではなかった。
歌詞の意味もよくわかんなかったしね。
他にも黒夢とかGLAYとか、当時はやってい奴をとりあえず聴いていたのであった。
そんな小学生時代、初めてバンドとして好きになり、新曲を割と追いかけていたバンドがあった。
追いかけていた、といっても小学生で金もないし、そこまで音楽狂でもなかったからテレビで出ていたらアットか言っているだけだったけど。
そのバンドというのが、今はもう解散して懐メロ扱いされているMoon Childというバンドである。
ちょうど土曜日の9時からのドラマが話題になっていた時期で、金田一くんとか、透明人間(香取慎吾のやつ)がやっていて学校でも話題になっていた。
そういった流れの中ではやや異質なドラマがあったのであるが、そのドラマの主題歌であったのが、彼らの唯一のヒット曲"Escape"であった。
既にドラマの内容はほとんど覚えてないが、この曲は知っているという人は結構いるであろう。
なぜなら楽曲のクオリティ自体はかなり上質であったから。
キャッチーなメロディと悩ましげな旋律、そしてセクシーなヴォーカルが非常にかっこ良かった。
今聴いてもそれは色褪せていない。
とはいえ、当時はそこまで考えていた訳ではないし、ただよくわからないが好き、という感じだった。
それが確か5年生くらいであったのだが、それからしばらくはタイアップなんかも結構あったので、彼らの曲を聴く機会自体は、断片的とはいえあったのである。
しかし、今も思い出す中学1年のある日の理科の授業のときである。
近くに座っていた奴からMoon Child解散のニュースを聞いたのだ。
部活やっていたから朝早くでちゃうので、知らなかったのである。
当時はインターネットもほとんど普及してなかったし。
ショックだったな。
当時はCDを買うという事もなかったし、Moon Childについてもほとんど知らんかった。
結局まともに音源を手に入れたのは、中学3年になってからだった気がする。
その頃には音楽の趣味も少しずつ見え始めていたんだけど、確か最初に買ったCDは彼らのベストだった気がする。
CD屋にも行くようになって、何となく見ているときに見つけて、で買ったのである。
シングルばかり集めたもので、悪いはずもなく、どれも大好きでしばらくの間そればかり飽きもせず聴いていた。
で、その後オリジナルアルバムにてを出すのは高校生になってからで、既に全アルバムが中古で500円しないくらいだったので、一気に買いそろえた記憶がある。
たった3枚しか出してないんだけど、どれもよくてね。
業界の中での彼らなりの苦労が反映されているような感じもする3作は、それぞれに色があってよかった。
個人的には最後のアルバムがムードも含めて一番好きだだったけど、1stの瑞々しすぎるくらい甘いラヴソングも彼ららしくていいしね。
その中間的で、一番ストレートなロックチックなアルバムが、"Escape"も収録されている「My Little Red Book」だろいう。
このアルバムの曲は幅も広くて、聴きやすさもあるし人によって自分の好みも探せるような感じだと思う。
すごくさわやかな曲もあれば、艶っぽい曲もあり、また壮大なバラードもありで、またコンセプト性もあるため邦楽の中では珍しい構造であろう。
彼らの曲は、曲自体もかっこいいんだけど、歌詞も独特で面白い。
すこし捻くれた思春期的気持ちを書かせるとかなりいいんだけど、一方で大人びた世界観もすごく表現がうまいしね。
前者的な曲と言えば"ストロベリーアイスクリームソーダ"、”ララバイ”など、後者と言えば”微熱”であろう。
私は結構今でも彼らの曲はカラオケなんかでも歌うんだけど、これらは鉄板だね。
まあ、個人的に一番好きな曲は別のアルバムなんだけど、それはまた別の機会に。
とにもかくにも、今聴いてもさびる事のない魅力が彼らにはある。
先にも少し書いたが、彼らは今や懐メロ的扱いで、一発屋だと思っている奴は多い。
しかし、実際はそうでなく、単純にレコード会社の売り出し方に問題があっただけだろう。
彼らを第2のミスチル、という扱いで売り出そうとしたそうだが、彼らとミスチルでは系統が違いすぎる。
あいにく私はミスチルは今まで対していいと思った記憶はない。
別に悪いなんて全然言わないし、否定もしないけど、ピンとこなかった。
やっぱり視点として、シンクロする部分が違うんだよね。
まあそれはいいとして、結局売れる曲を書かせようとする会社に嫌気がさしたようで、彼らは解散してしまう。
まあ本当の理由ってよく知らないんだけど、歌詞を見れば非常に分かりやすい。
特にB面曲には半ば自嘲的とも言える歌詞があるし、ラストシングルのB面曲も最高に切なくて最高に好きである。
アルバム自体の倦怠感もそれ故だろうね。
環境に恵まれなかったバンドである。
で、彼らのうちソングライターでヴォーカルの佐々木さんと、ベースでたまに作曲もしていた渡辺さんは今はScriptというバンドで活動している。
こちらについては以前少し書いたので、よかったら読んであげてね。
私は彼らの曲もよく歌うんだけど、今までどの曲も「いい曲だね」と好評である、マジで。
Moon Childは、解散して何年も経った2005年にコンプリートベストを出している。
既発のベストにライヴディスクとPV集をつけたモノである。
Luna Seaなんかも出したが、世間的な扱いや認識は全く違う。
それでもでたという事実こそが、彼らの曲のクオリティやアーティストとしてのポテンシャルを物語っているのではなかろうか。
実際一発屋で終わるようなバンドではなかった。
SCRIPTはSCRIPTでいい曲があるから一概にどうとはいえないけど、それでもやはり惜しい事である。
ま、ともかく彼らは聴く価値のバンドであり、昨今の単なる売れ線のなんちゃって音楽とは根本的に違う。
純粋なポップソングを書く、良質なバンドなのである。
ぜひ、聴いてね。