音楽放談 pt.2

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20年目の初期衝動 ―Ash

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最近個人的なことで変化というものを意識させられる場面が多い。

今年の5月に祖母が他界して、そこで10何年ぶりに居合わせた親戚衆の変化や、彼らにも子供がいたり、自分の親もすっかり年を取っているからそれより上のおじさん方もすっかり爺さんになって静かなものだ。

また友人の結婚の報せもまたちょこちょこ出始めている。

あまり友人の数が多くないので、そうはいってもたが知れているが、大学時代からの友人で今も割とよく親交のあるものも今年入籍して、来年挙式ということで、その発表には非常に驚いたね。

あまり女っ気のある奴でもないし、考えてみればそんな話をする機会もなかなかなかったから、余計にびっくりした。

言われてすぐはなかなか状況がわからないくらいだったけど、素直にうれしい報せだったよね。

でも、一方ですこしさびしい思いもするのも確かで、さすがに自分の身の振り方というのも考えさせられたよね。

それこそ高校の時の友人の場合、もちろんよかったねという思いはあるし、呼ばれれば基本的に結婚式も参列させてもらっているのだけど、遠くにいる分1年に1回会うかどうかみたいな感じだからなんか客観的に受け止めている自分がいるのだよね。

だけど、普段から顔を合わせていて、いうなれば日常の中での大きな変化に感じられて、余計に感じ方は変わるのかもしれない。

私も今年とうとう30になってしまい、彼女もいない身となればそろそろそういうことも考えないとな、と思うわけである。


さて、そんな前置きをしておいて書くのは今年新譜を出したASHである。

高校生でデビューした彼らもすっかり30半ばになっており、良い年になっている。

といってもキャリアで言えばそれこそOASISとかとも大差ないくらいだから相当なものだし、同時期にデビューした連中の中ではまだまだ若いのである。

メンバーの追加・脱退や、アルバムというコンセプトではない形態のチャレンジなど、彼らなりの音楽的な変遷は経つつも、曲は相変わらず素晴らしく、まだまだ現役である。

アルバムとしては前作『Twilight Of The Innocence』以来と捉えるのが正解だろう。

『A to Z』はシングルコレクションだからね。

前作はストリングスの導入など、これまでの純粋なバンドの音から一歩進んでプロダクションにもかなり凝ったものだったので、彼らの変化を感じさせるアルバムでもあったように思う。

ちょうどそのひとつ前の『Meltdown』でCharlotteが脱退しており、それまでのツインギターの曲から新しい方向性を模索するタイミングだったのだろう。

その後シングル連続リリースという企画を経ての今作であるわけだが、一聴した感想は1st、2ndのようなアルバムだということ。

ジャケットも漫画チックなデザインで、彼らの初期衝動的なものとなっている。

1曲目の”Kokoon”から明らかなのだけど、ドタドタしたドラムに始まり、Timのヴォーカルも録り方のせいか初期を彷彿とさせるものである。

全体に3ピースバンドのシンプルさとそれゆえの勢いと、一方でこれまでのキャリアをきちんと昇華しているため、それだけでは終わっていない。

ロディアスな曲も素晴らしく、楽曲を聞けば彼ららしさもしっかりと感じられる。

このアルバムを聴くと、いい意味でこのバンドは変わらないなと思わせてくれる。


彼らの曲はロックとしか形容ができない。

作曲はTimがデビュー以来一貫してほとんど行っており、曲の数で言ったら相当な数になるはずだし、中には似た印象の曲もある。

でも、この曲は今一だなと感じるものは非常に少ない。

それこそ件の企画シングルもそうだし、今回のアルバムも捨て曲なんてないだろうというできばえである。

ある意味では少し地味な印象がしないではないが、クオリティという意味ではまだこんな曲掛けるんだ、という驚きしかない。

ソロ作も挟んだうえでこれだけソングライティング能力を維持し続けているのはなかなかないだろう。

バンドとしては確実に演奏力もライブ演出もレベルが上がっているから、着実に成長しているということになるだろう。

いやほんと、彼らの音楽はそういう意味で安心させてくれるものがある。


今年フジロックに来るけど、ぜひとも単独もやってほしいよね。

単独も既に数年前になるので、また彼らのライブも見たいよね。