時間が経てば時代も変わるし社会も変わるし、その理由は人が変わるからであろう。
自分の人生にもいくつかの節目があって、その度に多分幾ばくかの変化をしている自覚がある。
それは意図的に変えてきたこともあれば、気がつけば変わっていたこともあるわけだけど、いずれだとしても昔の知人に会うとしばしばそう言われる。
まあ、そう言われるほどに滅多に会っていないと言うことなんだけど、ともあれそれは別にネガティブなことではないからね。
それに、変わったと言っても本質的には変わらないものもたくさんあって、むしろ本質は何も変わっていないのかもしれず、最近改めてそういうふうに思うようになってきた。
何があったわけではないんだけどね。
特定のアーティストを追いかけていることの面白みの一つに変化を見るという側面があると思う。
特にその表現がその時々の感性や感覚、感情や状況を素直に影響を受けているような人は、その音楽を聞けばなんだかそれらが見えてくるような気がするし、そういったものに共感したり、反感を覚えたり、納得させられたりするのが楽しみなわけだ。
そういうタイプのアーティストの1人がNine Inch Nails=Trent Reznorだと思っているのだけど、最近はすっかり元気に、楽しそうに音楽活動をしているのがファンとしては見ていてうれしい。
もちろん好きになったきっかけの頃のような音楽ではない寂しさはあるけど、むしろあれだけ私生活、音楽キャリアが充実しているのにそうでない頃のように振る舞う方が嘘である。
そういう変化を否定的に捉える人もいるが、もしいつまでもその頃を求めるならずっとその頃のものを聴いていればいいのだ。
で、この頃本当に変わったなと思うバンドが日本にもいて、それがThe Novembersである。
このブログでも過去取り上げているが、私が初めて観たのは数年前のコアなイベントであった。
この時は名前を出しているが音については何も書いていない。
でもどんな感想だったかはよく覚えていて、正直メンヘラ臭強い感じがん〜・・・ていう感じだった。
当時ヴォーカルの小林くんは金髪で客席をたまに睨むようにみるくらい。
ファンはファンでゴス系の服に身を包み、ライブ中も微動だにしない、そんないかにもな感じが当時の私にはどうにもしっくりこなかった(ちなみにPlasticzoomsも同様だ)。
ぶっちゃけちゃんと曲を聴いていなかったんだと思う。
しかし、図らずもそれから何度かライブを見る機会があって、いろんなジャンルのバンドと対バンしているのを見る中で彼らの曲自体はかっこいい曲あるなと気がついた瞬間があった。
それから音源をちょくちょく買って聴くようになり、今では単独へ行くくらい好きなバンドの一つになった。
相変わらずインディーズという佇まいではあるが、その独自の活動や音楽へのスタンスは業界内でも評判がいいらしく、小林くんはベンジーのサポートもやっていたりして、界隈ではすでに名の知れた存在になっている。
私はLillies and RemainsとBo Ningen、そして今ではPlasticzoomsも大好きなのだけど、彼らともしばしば共演しているので結果何か私の中に触れるものを持っていたんだろう。
このバンドの中でも彼らの音楽はかなり大幅な飛躍を遂げており、今年リリースしたアルバムはくるりの岸田さんも言及するほどいろんなジャンルのバンドマンにも聞かれている。
その一つ前のアルバムがトップにあげた『Hallelujya』というもので、このアルバムが一つの決定打になったのは間違いない。
ファンの間でも最高傑作と誉高いわけだが、私もそう思う。
もちろん最新作もこれまでの彼らを感じさせつつ、違うベクトルでめちゃくちゃかっこいいアルバムなんだけど、もし初めて彼らを聴くという人に勧めるなら間違いなく『Hallelujya』である。
まず、収録曲に一切いまいちな曲がない。
メロディアスな曲からノイジーな曲、オルタナ全開なロック曲からパンク曲など、その表情も様々でありながらちゃんとまとまっている。
要所要所に彼らのルーツを感じさせるのも面白く、個人的には一番ラルク色もよく出ていると思っている。
歌メロ、ヴォーカルメロディの影響が大きいのかもしれないね。
このアルバムは歌詞も病んでいる感じではなくどこか前向きさもあるくらいだから、かなり心持ちは変わったのだろうと思う。
実際、ツアードキュメンタリーでの話をする表情もそうだし、彼らの活動自体を見てもオープンな印象がすごく強くなった。
その最高の成果がこのアルバムなんだろうね。
1曲目を飾るタイトルトラック"Hallelujya"のそうそうな救済感はじめ、今やライブでは定番となった"黒い虹"、彼らのラウドサイド全開の"1000年"、The Smith的なムードもある"風"、パンク全開の"!!!!!!!"、ラルク感もある"ただ遠くへ"、シューゲイザーな"あなたを愛したい"、"いこうよ"と、全部挙げたわけじゃないけど、彼らの影響源を素直に出しながらもまごうことなきオリジナルな音楽に落とし込んでいて、全部ハイクオリティ。
今やすっかり黒髪の好青年と化した小林くんのヴィジュアルも相まって、広くロックを聴く人には一度聞いてみてほしい音楽である。
ちなみにライブのファン層もかなり変わってきており、メンヘラ女子がほとんどだったかつてとは違い、男性ファン率も増えてきている。
フェスで盛り上げ隊長みたいなバンドしか聞けないという人でなければ、刺さるところがあるはずである。
こういうポジティブなベクトルで変化していく様はいいし、これからもっと大きな成功を掴んでほしいと切に願う。